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2日目
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しおりを挟む朝陽が差し込む窓辺を離れ、ヒルダは決意した。
(ひとまず魔王復活については阻止せねばなるまい、それこそ騎士の使命というものだ。とにかく情報を集めなければ……)
着替え終わったヒルダは、謎の部屋の扉に手をかける。
「そういえば、ここはどこなんだ?」
疑問に思いつつも、ドアノブに手をかけて扉を開いた。
ガチャリ。
扉を開けると、そこは――
「え???????」
――大勢の人々だった。
彼らは唐突に絶叫をはじめる。
「聖女様だ!!」
「ついに祭りの最中に聖女様が降臨されたぞ!!」
「聖剣の乙女!!」
「ついに聖剣の乙女が召喚されたのだ!!」
轟のような群衆の喝采が巻き起こる。
ひとまず、周囲を見回す。
円形に人が並んでいる。
目の前の扉がゆらゆらと揺れ動いて消えてしまった。
ヒルダの手にはドアノブだけが残される。
(ど、どういうことなんだ……? 扉が消えた上に、大勢の人々に取り囲まれている)
あまりの状況についていけない。
思わず、ドアノブを締める仕草をすると、パタンと扉が閉まる音と同時に、彼女の目の前にドアが現れた。
今しがたの出来事を脳内で整理しようとした。
もう一度、現れた室内を見回す。
「綺麗な部屋だけど、普通の部屋のはずだ」
だったら、今、目の前で広がった光景は気のせいに違いない。
大きく深呼吸をすると、もう一度決意を新たに扉を開いた。
「また聖女様が戻ってくださったぞ!!」
「良かった、消えてしまったのかと思った!!」
「これで、この村は安泰だ!」
「聖剣の乙女! なんて愛らしい見た目をしているんだ!」
「きっと、恥ずかしがりやさんに違いない!」
パタン。
ヒルダはもう一度勢いよく扉を閉めた。
「今のは何なんだ……?」
すると――
『君を待ち詫びていた、村の皆さ!』
唐突に声が聴こえた。
もちろん……腰から。
「シーツにぐるぐる巻きにしたのに……」
ヒルダはげんなりした声を上げた。
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