29 / 51
2日目
29
しおりを挟む『ええっと……俺、なんか口走ってた?』
「はい、口が滑りまくっていました、守秘義務とか守るの苦手そうですね?」
『子猫ちゃんの中で、俺がテキトーな人間だっていう認識だってよくわかったよ!』
ヒルダは否定しなかった。
「ええっと、先ほどのブライアン殿が云っていたように、英雄ジークフリード様は、本当の聖女様と恋人同士だったのでしょうか?」
すると、しばらく黙っていた聖剣ジークフリードだったが――
『ええっとね、どうだろう? 似たようなものだったけど……』
「似たようなもの……?」
『まあ、公式には色々言えないことがあるんだよ。聖女と護衛騎士が付き合ってるとかさ、バレたら世界救えないって、王様とかに殺されちゃうじゃんよ! だから、俺たちは別に恋人同士じゃなかったの! まあ、陰でこっそり、呼捨てにしたりはしてたけどね。あっちは、俺のこと好きそうだったけど』
恋人同士じゃなかったそうだけど、こっそり呼び捨てにしていたそうだ。
しかも聖女はジークフリートに恋していたという。
『それに、あの頃のヒルダが聖女の力を失ってたから、俺が聖剣と一緒に封印されるはめになったというか……』
ヒルダは考え込んだ。
恋人同士じゃないけど、聖女の力を失っていた……。
やけにジークフリートはデレデレしている……。
「つまるところ……身体だけの関係で弄んでしまったとか……?」
『……!?』
答えがないのが、答えなような気がした。
(やはり、この聖剣とは迂闊に身体の関係になりたくないな……)
夏だというのに、ヒルダはぶるりと震えた。
「まあ、貴方の過去はどうでも良いんだ。とにかく、世界の平和は守らないといけないから、貴方の鞘にならないままで魔王を探さないといけない」
とにかく時間がない。
すると、ジークフリートが口を開いた。
『君が俺の鞘になってくれてないから、俺の力も完全じゃないから、はっきりしないとこがあるけど。とりあえず、ブライアンだとかいうあいつの言うこと自体は信頼できるけど、あいつ自体は信頼するのは良くない気がする』
「ですが、身分は確かな相手でしたよ?」
『まあ、そもそも村自体も様子がちょっと、ね。ごめんよ、あんまりはっきりしなくてさ』
「……?」
『まあ、仮に魔王の封印が解けていたんだとして、そんなに遠くには行ってないとは思う、あとは力も復活してないと思う、俺たちと同じで』
「そうなのですか!?」
『うん、なんとなく近くにまだいるような気もするかな? たぶん、だけど?』
「でしたら! 善は急げです! 明日までに、さくっと魔王を見つけて我が手で倒して、心残りがないように貴方様を昇天させてみせます!」
『ええっ、そんなに俺と色々したくないの!? しかも、そんな満面の笑みで、『死ね』って言ってこられるとか、生まれて初めてで痺れるよ! 仕方ないから、どうにかして、俺に惚れさせてみせる!』
「心意気は受け取りたいと思います」
そうして、ひとまず魔王の手がかりを探すべく、また坂道を上りはじめたのだった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
393
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる