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第7章 青焔将軍の妻

第58話 夫は嫉妬を隠せない4※

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「あ」
「あ」


 ――デュランダルが器に載っていた菓子を、全部、口の中に流し込むようにして食べてしまっていた……。

 全てを嚥下した後、二人の方へと彼は向きなおった。


「やっぱ甘ぇ……」


 フィオーレが夫の行動に唖然とした後、気を取り直して抗議する。


「な、なんで全部食べちゃったんですか――!?」


 デュランダルはそっぽを向いた。


「ちっ……うるせぇな……腹が減ってたんだよ――ああ、甘ぇ」


 舌を出して文句を言う夫に、フィオーレはぷんぷんと腹を立てる。

「もう、どうしたんですか、こんな子どもみたいなことを――」

「ガキ扱いするなって言ってるだろうが――」


 そんな彼を、睨みつけるようにしてイリョスは見る。


 視線を感じたデュランダルは、おもむろに席を立ちあがると――。


「きゃっ――!」


 ――頬を膨らませていた妻を、横向きにして抱き上げた。


 そうして将軍デュランダルは、片言の敬語でイリョスに告げる。


「妻の祖国からわざわざ脚を運んでもらって、大変感謝して……います。だが、どうやらフィオ――妻の機嫌が悪いようなので、これにて失礼させていただきます。あなた方のご案内は、屋敷の使用人たちに任せていますので――」


 不慣れな言い方をする夫に、妻であるフィオーレも違和感をぬぐえない。


「デュランダル様――? イリョスの案内は私が――」


「フィオはそんなことしなくて良い――寝室に行くぞ――」


「ひえっ――!? まだお日様は高いから、寝るには早いです――あ、あの――」


 フィオーレを抱きかかえたまま、デュランダルは客間から扉へと向かう。


 去り際に、わざとらしく大きな声で彼は言った。


「数日ぶりだ――いつもみたいに、俺を楽しませてくれよ――フィオーレ」


「ふえっ――!? ひ、人前で、そんな――きゃうっ――んんっ――」


 客人たちに見せるように、デュランダルがフィオーレの唇を塞いだ。

 くちゅくちゅと水音がわざと立つように、舌同士を絡ませ合う。


「はふ……あっ……は……んん……」

 そうして唇が離れると、彼は続けた。 


「はあ……口づけただけなのに――もう我慢できそうにねぇな――」


 そうして、夫婦は寝室へと向かっていく――。



※※※



 客間に残されたイリョスは、呆然と二人が出ていった扉を見つめていた。


「デュランダル将軍……子どもの教育に悪い男のようだ……」


 ショックを受けている彼の様子を眺めながら、小さな少女ローザはぽつりと呟いたのだった――。


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