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第8章 将軍夫婦の結末
第70話 将軍デュランダル・エスト・グランテ3
しおりを挟む「離せ――! 離さぬか、お前たち――!」
エムジーら騎士達の手によって、王太后は捉えられていた。
扉が開く音と共に、デュランダルの副官であるオリヴィエが現れる。
「デュランダル様! 報告いたします! 国王陛下の儀式は中断され――新王シュタール様が誕生されました――!!」
デュランダルはゆっくりと頷いた。
騎士達の間に歓声が響き渡る。
「これで、これまでのエスト・グランテはなくなった……! 新生エスト・グランテ王国の誕生だ……!!!!」
「新王シュタール様、万歳!!!」
王太后は紫色の瞳をかっと見開いた。
「なんだと……!?」
騎士達に身体を抑えられた彼女の元へと、デュランダルは歩を進め、剣先を彼女の顎に添える。
「何が新王だ――! 私は認めない! 国民が認めようとも、この私が認めんぞ――――!」
ぎりぎりと歯をくりしばる彼女を、デュランダルは黙って見つめた。
「本当に……俺はお前みたいな女の……何が怖かったんだろうな……」
彼は過去の自分に想いを馳せる。
まだ当時、王妃だった彼女から受けていた仕打ち。
もう嫌で、近づかれるのも怖くて――。
どこまでも、彼女の影はついてまわってきていた。
「自分の心を守るために、国民を犠牲にしちまって――本当に顔向けできねぇな……」
『どんな過去があったとしても、私は、貴方を嫌いにはなりません。それらの過去があるから、今の貴方がいるんです』
デュランダルの脳裏に、愛する妻の言葉が浮かぶ。
彼はぽつりと呟いた。
「ああ……俺は、フィオーレのおかげで、やっとこの女を乗り越えることが出来る」
そうして、紫色の瞳に力を宿した将軍デュランダル・エスト・グランテが、かつて王太后だった者に告げる。
「お前をどうするのかの裁量は、新国王シュタールから俺に一任されている」
「殺したいなら殺せばいいさ、無様に死ぬぐらいなら、ここで王家の誇りを持ったまま。殺された方がましだ――!」
そんな彼女に向かって、デュランダルが告げる。
「俺はお前を殺さない――」
かつて王太后だった者は眉をひそめた。
デュランダルは冷静に告げる。
「――民たちが受けてきた責め苦を受け続けろ――飢えて死んだ者たちの、奴隷に身を落とされた者たちの、家族を盾に取られ馬車馬のように働かされた者たちの――彼らと同じ苦しみを受けろ――」
『真の王』たる彼は、民を苦しめ続けた女を断罪した――。
「エスト・グランテの民たちに詫び続けろ――無様に生き続けたまま――な――」
「おのれぇ――――――! デュランダル・エスト・グランテ――――――!」
叫ぶ彼女は、そのまま騎士達に連行され、姿を消していった。
デュランダルは剣を戻す。
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