〈完結〉ある日予告も無しに赤紙が届いたんですが

江戸川ばた散歩

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 生き残る? 
 無理だろう、まず。
 でも俺の気持ちの何処かに、ほんの少し、ほんのほんの少しでも、そんな思いがある。
 俺は奴と心中する気は無い。
 信じてる。
 俺達は何とかして、生き残るんだ。
 生き残って、それから存分にセックスするんだ。
 何となく情けない目的の様な気もするが、まあいい。
 望みがあるのは良いことだ。
 鼻息荒く、俺は武器の山へと突進した。
 佐久田も俺が想像できる程度の武器はそれなりに取り扱える様だ。
 さすが幼なじみ。傾向はよく知ってらっしゃる。
 何かれ物色していた奴はやがてぽん、と手を叩くと、何やら小さなものを呼び出した。

「高村、これつけて」

 投げてよこしたのは、プラスチックのケースに入った、オレンジ色のウレタン。

「耳栓」

 にやり、と佐久田は笑った。
 ああそうか。
 さっきの爆音。
 確かにあれはひどかった。
 大丈夫、奴も未来に希望を持っている。

「よーし、やってやろうぜ!」

 くいくい、と耳栓をねじり込むと、俺は転がっている手榴弾を手当たり次第に投げ出した。
 佐久田ときたら、最初からバズーカ砲を手にしている。
 敵には回したくない奴だ!
 そして俺達の「どんぱち」が始まった。

 いつの間にか俺達の装備にゴーグルと衝撃防止の関節パッドが増えていた。
 周囲には無闇に煙が立って、遠く何処かで燃えている所もある。
 時には破片らしきものが飛んできてかすり傷を作ってくれる。
 つまり。
 確実に俺達は「何処か」を破壊しているのだ。
 そう思うと何故かわくわくしてきた。
 今は、ぴったりと背中を合わせて俺達は同じマシンガンをぶっ放している。
 奴の背から振動が伝わる。
 弾倉を変えている様子は無いのに、延々撃てる辺り、実に都合の良い武器だ。
 振動の間に間に奴は俺に問いかける。

「なあ高村、『俺たちに明日はない』って映画知ってるか?」
「知らない。どんなの?」
「今度DVD借りてきてやる。……見ような」

 おう、と俺は答えた。

 それからどれくらい経っただろう。 

「あああああもう! やめて下さい~!」

 斜め上から情けない声が響き渡った。
 と同時に、煙と埃が立ちこめる空間にぽーん、と穴が空き、そこに在るのとは違う種類の光がさっと差し込んだ。
 穴を越えて、ひょい、と誰かが飛び降りた。
 俺達は思わず口をぽかんと開けた。
 煙の向こうに居たのは―― 金髪男。
 慌てて俺は手にしていたマシンガンを向けた。
 すると相手は両手を挙げて、首を大きく横に振った。

「あ~ やめてやめて。ああでも良かった良かった。こっちもまだ生きてましたねー。ホントに良かった良かった、これでワタシの責任問題も少し軽くなりますよ」
「……あんたは……」

 佐久田はさっと俺の横に移動する。

「いやいやいや、ワタシはアナタ方を脅した者とは別です」
「別だって? 顔同じじゃないか! この色男が!」

 トーン高く、俺は問いつめる。
 あれだけ延々と電波ジャックでズームアップを繰り返されたのだ。
 見間違える訳が無い。
 すると男は再び両手をひらひらと振る。

「いやっははは、これはですね、アナタ方と同じ種族の姿をしていた方が、話しかける時に適していると判断致しましたので便宜上我々の種族が使っているパタンの一つですよ。ワタシの本体は違いますよ。こんな不細工じゃない。初めまして。**空間管理局の*****と申します」
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