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飛び立つ時

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***『フェアリーマート・ギョクロ』前***
すでに馬車などの準備が整っており、ギョクロンとダリアの他に昨日、案内してくれたメイド服の女性やハイビビスくらいの年の知らぬ男女が待っていた。

「ただいま。お祖父様」
「ただいま~。この子達の冒険者登録も先に終わらせてきたわ」
「おはようございます。カメリアのおじいちゃん」

女性陣が口々に挨拶を告げる中、ツキカゲは静かに頭を下げた。
「おかえり。みんな。こちらで冒険に役立ちそうな道具を用意しておいたよ。まずは集まってくれたハイビビスの仲間の皆様に挨拶しておいで」

冒険者らしくなった孫たちの姿にギョクロンは顔を綻ばせ、カメリア達が宿に戻った後、ハイビビスに頼まれて彼女のパーティーメンバーを呼び集めていた。

「皆、来てくれてありがとう。この子が娘のカメリア。その友達のサリサとツキカゲよ。ちょっと妖精の森に苗木をとりに行くから手伝って欲しいのよ。」

「カメリアと申します。これからよろしくお願いします」
「あたいは、えっとサリサと申します。よろしくお願いいたします」
「ツキカゲと申します。よろしくお願い致します」
三人は順番に自己紹介をすると改めて礼をした。

「カメリアさんにサリサさん、ツキカゲさんね。私は『魔術師』のツーよ。よろしくね」

「俺はエイト。『レンジャー』だ。これからよろしく」

「僕はテン。『格闘家』だ。よろしく頼む」

それぞれ握手を交わし、お互いの顔を確認する。皆、中年の男女だが冒険者として長いと分かる落ち着きと目の輝きがあった。この人達が自分の母と旅をしているのがカメリアは不思議だった。

「で、私がカメリアのママで『剣士』のハイビビスね。自己紹介も終わったし、あの人に嗅ぎつけられる前に早速行きましょう。カメリア達は町を出るまで荷台に上がってて」

「うん」
「わかりました」
「はい」

荷台に乗る前にカメリアはダリアの方へ行った。

「ダリア。来てくれてありがとう。ツキカゲのこと、見ていてくれたのね。ありがとう」

「当然の事をしたまででございます。カメリア様と無事に会えて嬉しく思っています」

ダリアは静かに微笑みを浮かべて頭を下げた。強制的に入院された前と変わらない微笑みにカメリアは泣きたくなってしまう。

「カメリア様。ご一緒には行けませんがどうかご無事で……」

「ありがとう。ダリア。必ず帰ってくるわ。もしヘルム様から手紙が来たら返事を書いてほしいの。『ヘルム様との結婚をカメリアは諦めていません。どうか待っていてください』と」

「はい。承知しました。カメリア様のお帰りをお待ちしております」

二人は別れの挨拶を交わし、こうして一行は森に向けて出発した。

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