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第一章
才能
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「まず、魔法についてだが──」
「あ、そういうの結構です」
「商人からのいらない商品を断るみたいに言うな」
翌日、何故だかやる気のあるサイがさっそく魔法座学を開こうとしたら、リルが手のひらをサイに向けて断った。
「私、魔法士になりたいわけじゃないです」
「全くこの子は」
サイが両手を挙げて降参する。
「とりあえず、今できる魔法は何だい」
問われたリルはおもむろに立ち上がり、両人差し指を空に向けた。右手には炎、左手には水が浮き上がる。
「こりゃ驚いた。詠唱無しでもできるのか」
「師匠だってしてるじゃないですか」
「それは私が高等魔法士だからだ」
言われてみれば、屋敷にいた頃魔法学の授業を何度か受けていたが、教師はいつも詠唱していた。詠唱無しは通常ではないらしい。リルがぼんやり聞き流していると、サイが手のひらから透き通った精霊を出してみせた。
「これは水の精霊だ。攻撃するにはどうする」
「それ、生きているんですか?」
サイは首を振って答えた。
「いいや、私が作り出した幻想だ」
「なるほど。それなら遠慮なく」
右手の人差し指を精霊に向ける。炎が伸びていき、あっという間に精霊は消し飛んだ。
「水には炎です」
「なんとまぁ」
サイは驚きの声を上げた。リルに生活魔法を見せたことはあっても、攻撃する方法を教えたことはなかったからだ。
──少しの勉強では攻撃魔法まで習っていない可能性の方が高い。リルには高等魔法士になる資質が十分にある。いや、もしかしたらそれ以上の。
「リル」
「はい」
「今、一番に望むものはなんだ」
「寝ることです」
いつも通りの答えに苦笑する。サイは続けた。
「よし、私が出す魔法学の課題をやりさえすれば、あとは好きなことをして過ごしてよい。それならやるか?」
「やります」
リルは即答した。
「自由に書き込んでいいから」
「はい」
サイから魔法学の基本が書かれた本を渡される。幸い、この世界の文字を読むことができる。リルは勉強と引き換えに睡眠を手に入れた。
「ではさっそく」
「これこれ」
ベッドに向かうリルをサイが引きとめる。
「勉強はどうした」
「ベッドでしようかと」
「寝る気だろう」
「そんなことありません」
曇りなき眼で見つめるが、サイには全く効かなかった。
「机でやりなさい」
「ちえッ」
渋々椅子に座る。ここで拒否をして寝るよりも、言うことを聞いて自由な時間をもらう方が後々融通が利く。リルは基本書の目次を開いた。
「そういえば文字が読めるんだね。大したもんだ」
「読めない人もいるんですか?」
「学校に行っていない子どもたちもいるから」
本を読みながら他愛も無い話をする。
そういえば、ここに来てからたいした会話をしていなかった。サイも一人でいたリルに気を遣ってか何も聞かなかった。
しかもここは山の中にある。家出以降サイ以外の人と会ったこともない。今初めて、二人以外に人間の存在を意識した。
「魔法を試したいので、外に行ってもいいですか?」
「おや、もう読むのは止めたのかい」
「だいたい分かったので」
指の使い方、詠唱のコツは読んだ。あとは実践をこなしながら学ぶことにした。リルは立ち上がり、本を片手に外へと出ていった。
「あ、そういうの結構です」
「商人からのいらない商品を断るみたいに言うな」
翌日、何故だかやる気のあるサイがさっそく魔法座学を開こうとしたら、リルが手のひらをサイに向けて断った。
「私、魔法士になりたいわけじゃないです」
「全くこの子は」
サイが両手を挙げて降参する。
「とりあえず、今できる魔法は何だい」
問われたリルはおもむろに立ち上がり、両人差し指を空に向けた。右手には炎、左手には水が浮き上がる。
「こりゃ驚いた。詠唱無しでもできるのか」
「師匠だってしてるじゃないですか」
「それは私が高等魔法士だからだ」
言われてみれば、屋敷にいた頃魔法学の授業を何度か受けていたが、教師はいつも詠唱していた。詠唱無しは通常ではないらしい。リルがぼんやり聞き流していると、サイが手のひらから透き通った精霊を出してみせた。
「これは水の精霊だ。攻撃するにはどうする」
「それ、生きているんですか?」
サイは首を振って答えた。
「いいや、私が作り出した幻想だ」
「なるほど。それなら遠慮なく」
右手の人差し指を精霊に向ける。炎が伸びていき、あっという間に精霊は消し飛んだ。
「水には炎です」
「なんとまぁ」
サイは驚きの声を上げた。リルに生活魔法を見せたことはあっても、攻撃する方法を教えたことはなかったからだ。
──少しの勉強では攻撃魔法まで習っていない可能性の方が高い。リルには高等魔法士になる資質が十分にある。いや、もしかしたらそれ以上の。
「リル」
「はい」
「今、一番に望むものはなんだ」
「寝ることです」
いつも通りの答えに苦笑する。サイは続けた。
「よし、私が出す魔法学の課題をやりさえすれば、あとは好きなことをして過ごしてよい。それならやるか?」
「やります」
リルは即答した。
「自由に書き込んでいいから」
「はい」
サイから魔法学の基本が書かれた本を渡される。幸い、この世界の文字を読むことができる。リルは勉強と引き換えに睡眠を手に入れた。
「ではさっそく」
「これこれ」
ベッドに向かうリルをサイが引きとめる。
「勉強はどうした」
「ベッドでしようかと」
「寝る気だろう」
「そんなことありません」
曇りなき眼で見つめるが、サイには全く効かなかった。
「机でやりなさい」
「ちえッ」
渋々椅子に座る。ここで拒否をして寝るよりも、言うことを聞いて自由な時間をもらう方が後々融通が利く。リルは基本書の目次を開いた。
「そういえば文字が読めるんだね。大したもんだ」
「読めない人もいるんですか?」
「学校に行っていない子どもたちもいるから」
本を読みながら他愛も無い話をする。
そういえば、ここに来てからたいした会話をしていなかった。サイも一人でいたリルに気を遣ってか何も聞かなかった。
しかもここは山の中にある。家出以降サイ以外の人と会ったこともない。今初めて、二人以外に人間の存在を意識した。
「魔法を試したいので、外に行ってもいいですか?」
「おや、もう読むのは止めたのかい」
「だいたい分かったので」
指の使い方、詠唱のコツは読んだ。あとは実践をこなしながら学ぶことにした。リルは立ち上がり、本を片手に外へと出ていった。
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