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第二章
コウ肉料理
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「おはよう。今日も眠そうだな」
翌朝、にかっと効果音が聞こえるくらい満面の笑顔でルッツがやってきた。リルはまたしても寝ているところを彼の大声で起こされた。
「あの、起こさないでいただけると助かります」
「しかし、もう朝食の時間だ」
「私は起きたい時に起きる生活をしているので」
せっかく自由な時間を手に入れられたのに、ルッツによって規則正しい生活を強いられることになってしまった。リルが魔法で庭に箱を一つ出してみせる。
「朝食になるようなものを適当にこの中に入れておくので、勝手に取って食べてください」
「おお、ありがとう」
「なので、これからは朝は起こさないでください」
「分かった」
箱には野菜を蒸したものと白米を入れておいた。その間にロンズがやってきて、コウを山ほどくれた。これなら一週間以上持ちそうだ。用が済むとロンズが去っていく。きっと忙しいに違いない。
「おお、コウ肉がこんなに……昼食はコウ肉料理にしましょうね」
「うん。コウは久々だな」
「えッ昨日のってコウじゃなかったんですか」
「あれはギィだ」
てっきりコウだと思っていた。味付けが濃いので気が付かなかった。つまり、硬い肉はギィで、コウはもともとの認識通り柔らかいということだ。
「そうなんですね、安心しました。では、またお昼に」
そう言ってリルがドアを閉める。コウをそっと魔法袋に仕舞い、なむなむと両手を合わせた。
朝食は野菜を少しだけ口にして、二度寝をするためさっさとベッドに潜る。これで邪魔はされない。
たっぷり寝直して昼になり、リルが冷蔵庫から肉を取り出す。サイの元を逃げ出して数週間、ついにコウ肉を手に入れた。生肉なのに見ているだけで涎が出てくる。
「どうしよう。昨日はステーキだったから、今日は焼肉かな。醤油があれば肉じゃが作れるんだけど」
玉ねぎは無いものの、にんじんとジャガイモはある。いつか実家でよく食べた肉じゃがを作ってみたいものだ。
「そもそも、調味料が塩とハーブだけなのが問題だよ。何か他に育てて調味料になるものってないかな」
一人暮らしをしていたのである程度の料理はできるが、調味料は何の材料で作られているのかはさっぱりだ。
「あ、辛いやつ。唐辛子とかならいけるかな? でもなぁ、お父さんそういうの育ててなかった」
思いついた矢先に凹んでしまう。しかし、植物であれば取り寄せることができる。王都に売っているものならルッツを通してロンズに持ってきてもらえる。静かな暮らしが少しうるさくなってしまったが、その分見返りも大きい。
「そういえば、ルッツ様静かだ」
昼時になってもドアを叩かないのですっかり忘れていた。
ドアを開けて確認したら、またしても鍛錬中だった。今は筋トレの時間らしい。
「おお、やっと起きたか」
「お昼にしますか」
「うん。私は鍛錬をしているから、ゆっくり作っていてくれ」
リルと話す間もルッツは鍛錬を止めない。よほどの鍛錬中毒だ。
「ルッツ様、うちには調味料がほとんど無いので、次にロンズさんが来る時にでも調味料持ってきてもらえますか?」
「もちろんだ。リルには世話になっているからな」
豪快な笑顔で返される。これで調味料問題も解決した。調味料がはたしてリルの知っているものかという不安はあるが、無いよりはいいだろう。
「ご飯の量は多い方がいいですか?」
「いや、朝もらったものを食べたから一人前で構わない」
「まさか」
ルッツの言葉に、リルが庭にある箱を開ける。予想通り、箱の中は空っぽだった。何日か持つよう沢山入れておいたのに、短い命であった。
──仕方ない。お肉はロンズさんがくれるし、野菜はいくらでも採れるからまた作り溜めしておこう。
翌朝、にかっと効果音が聞こえるくらい満面の笑顔でルッツがやってきた。リルはまたしても寝ているところを彼の大声で起こされた。
「あの、起こさないでいただけると助かります」
「しかし、もう朝食の時間だ」
「私は起きたい時に起きる生活をしているので」
せっかく自由な時間を手に入れられたのに、ルッツによって規則正しい生活を強いられることになってしまった。リルが魔法で庭に箱を一つ出してみせる。
「朝食になるようなものを適当にこの中に入れておくので、勝手に取って食べてください」
「おお、ありがとう」
「なので、これからは朝は起こさないでください」
「分かった」
箱には野菜を蒸したものと白米を入れておいた。その間にロンズがやってきて、コウを山ほどくれた。これなら一週間以上持ちそうだ。用が済むとロンズが去っていく。きっと忙しいに違いない。
「おお、コウ肉がこんなに……昼食はコウ肉料理にしましょうね」
「うん。コウは久々だな」
「えッ昨日のってコウじゃなかったんですか」
「あれはギィだ」
てっきりコウだと思っていた。味付けが濃いので気が付かなかった。つまり、硬い肉はギィで、コウはもともとの認識通り柔らかいということだ。
「そうなんですね、安心しました。では、またお昼に」
そう言ってリルがドアを閉める。コウをそっと魔法袋に仕舞い、なむなむと両手を合わせた。
朝食は野菜を少しだけ口にして、二度寝をするためさっさとベッドに潜る。これで邪魔はされない。
たっぷり寝直して昼になり、リルが冷蔵庫から肉を取り出す。サイの元を逃げ出して数週間、ついにコウ肉を手に入れた。生肉なのに見ているだけで涎が出てくる。
「どうしよう。昨日はステーキだったから、今日は焼肉かな。醤油があれば肉じゃが作れるんだけど」
玉ねぎは無いものの、にんじんとジャガイモはある。いつか実家でよく食べた肉じゃがを作ってみたいものだ。
「そもそも、調味料が塩とハーブだけなのが問題だよ。何か他に育てて調味料になるものってないかな」
一人暮らしをしていたのである程度の料理はできるが、調味料は何の材料で作られているのかはさっぱりだ。
「あ、辛いやつ。唐辛子とかならいけるかな? でもなぁ、お父さんそういうの育ててなかった」
思いついた矢先に凹んでしまう。しかし、植物であれば取り寄せることができる。王都に売っているものならルッツを通してロンズに持ってきてもらえる。静かな暮らしが少しうるさくなってしまったが、その分見返りも大きい。
「そういえば、ルッツ様静かだ」
昼時になってもドアを叩かないのですっかり忘れていた。
ドアを開けて確認したら、またしても鍛錬中だった。今は筋トレの時間らしい。
「おお、やっと起きたか」
「お昼にしますか」
「うん。私は鍛錬をしているから、ゆっくり作っていてくれ」
リルと話す間もルッツは鍛錬を止めない。よほどの鍛錬中毒だ。
「ルッツ様、うちには調味料がほとんど無いので、次にロンズさんが来る時にでも調味料持ってきてもらえますか?」
「もちろんだ。リルには世話になっているからな」
豪快な笑顔で返される。これで調味料問題も解決した。調味料がはたしてリルの知っているものかという不安はあるが、無いよりはいいだろう。
「ご飯の量は多い方がいいですか?」
「いや、朝もらったものを食べたから一人前で構わない」
「まさか」
ルッツの言葉に、リルが庭にある箱を開ける。予想通り、箱の中は空っぽだった。何日か持つよう沢山入れておいたのに、短い命であった。
──仕方ない。お肉はロンズさんがくれるし、野菜はいくらでも採れるからまた作り溜めしておこう。
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