貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第二章

騒がしい一日終了

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「できればルッツ様に帰っていただくよう言ってもらえませんか」
「それはできかねます。申し訳ありません」
「そうですか」

 勢いで頷いてくれるかと思ったが、さすがに皇子を無理矢理連れて帰るだけの権限は持ち合わせていないらしい。できるとすれば皇子より身分の高い者だ。

 ロンズを二人で見送り、中で待っていたチョコとともに夕食を食べた。おかずはステーキと野菜の盛り合わせ、炭水化物は白米ではなくパンだった。

 パンは少し硬めだが、味はさっぱりしていて悪くない。濃いおかずに合うよう、こちらは味付けがあまりされていないらしい。

「ステーキ、分厚いですね」

──あと硬い。めちゃくちゃ硬い。これじゃ、子どもは食べられないんじゃないの。コウってこんなに硬かったっけ。

 パンといい、肉といい硬くて顎が疲れてしまう。ただ、もらった立場で文句は言えないので、心の中だけに留めておいた。

「この肉は生肉が特に硬いから薄く切るのが大変だと聞いた。焼くとナイフで切れるくらいには柔らかくなるのだ」

 豪快かつどこか上品に食べるルッツが、口の中を空にしてから言った。

「へえ」

 どうやら焼きすぎではなく、これでも生の状態よりはマシなようだ。サイがいた頃は切った状態で魔法袋に保管されていたため、コウが調理しづらいものとは知らなかった。

「魔物以外の肉は流通していないんですか?」
「そうだな。地方に行けば少しはあるが」

──そうなると、牛や豚を食べたいなら地方に行かなければならないのか。

 近くの王都に一度行っただけでも疲弊したのに、地方はもってのほかだ。牛肉に近い味はコウで事足りるので、リルは肉についてこれ以上冒険しないことにした。

 顎の筋トレが終了し、チョコに魔力を与えていたらルッツがそれを興味深く観察した。

「そのウォルフはリルの魔力が主食のなのか」
「はい。お肉を用意するのが難しいので。それに魔物は魔力さえ摂取していれば問題無いですし」
「ふむ」
「じゃあ、ご飯も終わったことだし、家に帰ってください」

 ご近所さんができたところで馴れ合うつもりはない。ルッツはつまらなそうな顔をしながらも大人しく帰ってくれた。

「あの様子だとすぐには帰らなさそうだよね。とりあえず、しばらくはコウの肉のお礼だと思おう」

 窓から外を覗くと、暗闇の中でルッツが鍛錬をしていた。ため息しか出てこない。そこへ、流れ星が降ってきた。両手を合わせて叫ぶ。

「早く平穏な生活が戻ってきますように!」

 願い事を三回どころか一回言ったところで流れ星は消えてしまったが、リルは良い気分になって風呂場へ向かった。

 湯船に浸かったところで、ふと思った。

「あっ、お風呂に入りたいとか言い出したら嫌だな」

 簡易のテントでは風呂場までは完備されていないだろう。もし鍛錬が終わったルッツがまたうるさくドアを叩いたら困る。

 いつもよりやや早めに上がり、チョコのブラッシングをしてすぐベッドに潜り込んだ。

「チョコ~、念のため結界強めにしといたから。おやすみ」
「ギャオ」

 幸いなことに、その夜ドアを叩く者はいなかった。
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