貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第二章

王都の料理

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 ルッツの体が震える。リルは不安になったが、ルッツの顔が徐々に緩むのが分かった。

「美味しい! 実に美味しい白米だ! どこで購入したものだ?」
「購入したんじゃなくて、身内からもらったものを炊いただけです」
「そうなのか。こんな美味しい白米は初めて食べた。その方にも是非礼を言ってくれ」

 リルは歓喜した。家にある米は実家から取り寄せた玄米で、なんなら父が育てたわけでもなく、その辺で買ってきたものだ。しかし、住んでいた世界のものを手放しで褒められるのはなかなか嬉しいものだった。

──もしかして、この世界のお米って日本のより美味しくないのかも。さすが昔々からお米を作ってきた国だけある。

 あっという間に皿を空にしたルッツに問いかける。

「私は基本的に山から出ないので知らないんですけど、王都のご飯はどういう感じなんですか?」
「白米はある。しかし、このようにモチモチしていない。おかずはそうだな、肉料理が多いぞ」
「なるほど。肉料理の味付けは濃いですか?」

 その質問にルッツは首を傾げた。

「濃い……どうだろう、考えたことがなかった」

 地方は分からないが、王都は料理に細かい文化ではないのかもしれない。もしくは、ルッツがそういうことに疎いかのどちらかだ。

 しかし、シンプルな味付けの料理を褒めてくれたので、舌が鈍感という程でもないようだ。

「素晴らしい料理だった。お礼と言ってはなんだが、ロンズには最高級の肉を持ってきてもらおう」
「最高級じゃなくていいので、なるべく多めにお願いします」
「この家に肉は無いのか?」
「山暮らしなので」

 ルッツが窓から外を眺めて言った。

「たしかに、この山は食用魔物が少ないからな」
「少ないってことは少しはいるってことですよね」
「うむ。たとえば、スライムのゼリーとか」
「スライム食べるの!?」

 思わず大声を出してしまった。いつも見ているスライム家族を思い出す。彼らも誰かに見つかったら食料として捕らえられてしまうのだろうか。

「君は食べないんだな」
「ああ、まあ。食べないところもあると思います」

──知らんけど。

 スライムのゼリーとやらが絶品な可能性はあるが、今のところ試したいとは思わない。

「魔物だったらコウの肉がいいです」
「それなら、コウを持ってこさせる」
「有難う御座います」

 他にも食べられる魔物はいるのだろうが、どうせなら食べ慣れたものがいい。可愛い見た目の魔物の丸焼きでも出されたら卒倒してしまう。

 夕方にはロンズが一度様子を見に来た。ルッツが食べていないことも考えられると、二人分の夕食を持ってきてくれた。コウを持ってきてほしい旨を伝えると、翌朝持参してくれると言った。

「私の分の夕食まですみません」
「いえ、こちらの我儘で貴方の邪魔をしてしまっておりますので、これくらいのことはさせてください」

 ロンズが話の分かる人間でよかった。上司を反面教師としているのだろうか。
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