貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第二章

手料理

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 全然気が付かなかった。王宮があることすら知らなかった。無知過ぎて今更ながら恥ずかしくなった。

 思い返してみれば、大きなところだったし、様々な店が並んでいた。きっと他の町はもっと小規模なのだ。もう王都には顔を出さないようにしよう。

──いっそ、違う山に引っ越す? 家ごと移動させれば大丈夫だし。でも、畑は適した土があるか分からない。それに、人が来るたびすぐ引っ越していたらキリが無い。

 リルが自分の運の悪さに落ち込んでいると、皇子がおもむろに剣を抜き、素振りを始めた。

「うわ、いきなりなんですか」
「毎日の鍛錬だ。気にしないでくれ」
「あ、はい」

 急に鍛錬を始めたルッツから離れて家に引きこもる。家には結界を張ったままなので邪魔されることはない。リルはベッドに潜り込んだ。

 陽が一番高くなった頃、またしても外が騒がしくなった。

「リル、リル」
「うわぁ、無視無視」

 こちらは気持ちよく寝ていたというのに、何故毎回大声でアピールしてくるのか。

 相手がどんなに叫ぼうと、リルがドアを開けなければ何もされない。そう思ってベッドの中でごろごろしていたが、あまりのうるささで全く寝られなくなってしまった。

 チョコも室内をうろうろと落ち着かずに歩き回っている。リルは眉間に皺を寄せながらドアを開けた。

「うるさい。自分の家に帰ってください」
「うるさくしてすまない。ちょっと聞きたいのだが、昼食は普段どうしている?」
「昼食って、お腹空いたんですか」
「うむ」

 ルッツが元気いっぱいに頷いた。

「ロンズさんに持ってきてもらったらどうです」
「毎回ではロンズに申し訳ない。私もこの山に準じた食事に慣れたいのだ」

 リルがちらりと畑を見遣る。自分用の畑なので小さなものだが、もう一人増えたところで困る量でもない。

──そうだ。

「いつもは畑で出来た野菜と川で獲れた魚をおかずにしています。一つ提案なんですが、ロンズさんにお肉を持ってきてもらうことは可能ですか? 可能であれば、お肉をもらう代わりに私が料理を作ります」

「本当か! 肉ならいくらでも提供する。すまない、感謝する」
「いえいえ」

 謙虚な態度をとりながら、心の中で思い切りガッツポーズをした。あれだけ手に入らないと嘆いていた肉がついに手に入ることになった。こればかりはルッツが来てくれて感謝だ。

「とりあえず、昼食は私の食材で作りますね」
「うむ、よろしく頼む。私が手伝うことはあるか?」
「じゃあ、野菜を運ぶのを手伝ってください」

 魚は冷蔵庫に一尾しかないが、今回は分け合って食べることにする。その分野菜を多めにすればいい。

 一旦結界を解いてルッツを中に迎え入れる。さっそく昼食の準備に取りかかった。

 ふかしたジャガイモは実家から取り寄せたハーブで味付けし、ブロッコリーは塩味にしてみた。半分にカットした焼き魚と炊いたばかりのご飯をテーブルに出す。ルッツが興味深くそれらを観察した。

「どうぞ。口に合うか分かりませんが」
「ありがとう。いただきます」

 箸を出してみたが、ルッツが当たり前に箸を持てたことに安心する。自身も食べながら、他人に初めて出した手料理の行く末がどうにも気になってちらちら見てしまう。ルッツが白米を口に入れた瞬間、瞳をかっと見開かせた。

「これは……ッ」
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