貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

文字の大きさ
47 / 89
第三章

お土産

しおりを挟む
「そういえば、これお土産です。ちょっとしたものですけど」

 新しい場所での生活の報告をし、帰ることになったところでリルがお土産を渡していないことに気が付いた。

「気を遣わなくていいのに。ありがとう、頂戴するよ……これはなんだい?」

 魔法袋から取り出した数々の品をサイが興味深げに見つめた。

「ええと、こちらは死にかけでもすぐに治る万能薬。こちらは数を増やせる魔法薬、この前綿が欲しいなぁと思っていて、それなら家にあるものを増やせばいいんだと思って開発しました。それからこれがビー玉大の魔法袋で」

「ちょちょちょいと!」

 説明だけでお腹いっぱいになったサイがリルを止める。生暖かい目で見つめながら言った。

「簡単に開発って言うけどねぇ……さすがはリルだ。この才能を、いや、自分自身に生かせているから構わないか。これからも自由に生きなさい」

「はい。有難う御座います」

「というか、さらっと言っていたけど、万能薬だなんて世界中の魔法書を集めたところで作れないものを。私には手に余るよ」

「あはは」

 サイのもとを離れてからも魔法の開発は続けていた。成果を無事届けることができてリルも満足した。サプライズ成功だ。

「ふう。リルといると心臓がいくつあっても足りゃしない」
「いつまでもお元気でいてくださいね」
「まだゆうに五十年は生きるさ」

 サイが言うなら本当に生きられそうだ。リルがチョコと宙に浮き上がる。チョコの首には真新しい首輪が付けられている。サイがチョコに似合うと作ってくれたものだ。防御魔法が掛けられているので、万が一の時もチョコを守ってくれるらしい。サイは気に入らなかったら付けなくていいと言っていたが、チョコの様子を見る限り嬉しそうなのでそのままにしている。

「またいつでもおいで」
「はい、来ます」

 行きとは打って変わって晴れ晴れとした表情でリルは手を振った。サイもリルたちが見えなくなるまで手を振り返してくれた。血は繋がっていなくても、サイは家族だ。また近いうちに遊びに来よう。

 ちなみに、結局部屋に魔法陣は描かなかった。持ち主の魔力に反応する仕組みであるが、元王宮魔法士で優秀なサイであればそれを組み替えて今の山に移動魔法で来てしまう可能性がある。魔法陣自体にも結界を張っているので、念のためという単なる保険だ。サイとは家族だが、毎日様子を見に来られたら正直困る。なんとなく思春期みたいでリルは少しばかり恥ずかしくなった。

「いつか、師匠にも今の家を見てもらおうね。畑がかなり広大になったからきっと驚くよ」

「ガウ」
「うんうん、別荘もね」

 チョコが空中でクルクル回る。それに合わせて首輪に埋め込まれた青色の宝石がキラリと光った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...