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第三章
結界感知
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少々面倒なことになってしまったが、ここで注目されるよりはいい。受付の女性について行き、受付の後ろにある部屋に入った。
「今、マスターが鑑定しております。ひとまず、身分証をご提示いただけますでしょうか?」
お茶を持ってきてくれた受付の女性に会釈をしていたら、心配していたことが起きた。
「すみません。まだ身分証を持っていなくて。今作ることは可能ですか?」
ごまかさずに尋ねると、女性はにこやかに答えた。
「承知しました。それではお待ちいただいている間に作りましょう」
「お願いします」
女性がいったん部屋から出て、何かの機械を持って戻ってくる。
「名前と性別を教えてください」
「リル、女です」
「お姿を登録します。今は変化魔法等は使用されていないですか?」
「あ、変化しています。戻ります」
言われて思い出したリルが元の姿に戻る。女性が驚いた表情をした。
「あれ、もしかして以前崖崩れの整備をされた方ですか?」
「はい、そうです」
「てっきり身分証お持ちなのかと思っていました」
「あはは、すみません。前回は知り合いの人が手続きしたので」
結局リルが身分証を持っていないことがバレてしまったが、今は受付の女性一人なので素直に答える。女性はそれを咎めることなく身分証の作成を進めてくれた。
出来上がった身分証を受け取る。そこに写真は載っていなかった。
「写真は無いんですね」
「はい。載せておくと、身分証が盗まれた場合その姿に変化してごまかす人が現れるので、お姿はギルド連盟のデータ上だけに登録しておくのです」
「なるほど」
たしかに魔法が使えるこの世界なら、姿を変えることは容易だ。リルだって何回も姿を変えている。もしも身分証の登録時に変化した姿を登録しようとしたら、そこでも何かしらのエラーが出て登録できないようになっているのだろう。
全ての人間に名字があるわけではないらしく、名字を伝えなくても登録できたのは幸いだ。どの場面でも、必要以上の情報は与えたくない。
「お待たせしました」
身分証の作成が終わったところで、ちょうど鑑定を終えたギルドマスターが部屋に入ってきた。五十は過ぎていそうな髭の似合う男性だ。名はエドルと言った。
「こちら、ベリアの魔石で間違いないです。あれを退治するとは驚きました」
「たまたま上手くいったんです」
「いやぁご謙遜を。あれには困っていたので私どもも助かりました」
そう言ってエドルが報酬袋を差し出した。
「今回の報酬です」
「え、こんなに」
前回のクエストの何倍もある。リルとしては別荘作りの流れでしただけで、クエストのつもりは全くなかった。
「どうぞお受け取りください」
これをそのまま受け取っていいものか悩んでいたが、ふとあることを思いついた。
「すみません。この報酬でカル島を買い取ることは可能でしょうか?」
「あそこをですか?」
エドルと受付の女性が顔を見合わせる。リルは緊張した面持ちで続きを待った。
「いちおうオトラ領土ですが、完全に未開の地です。なにせ、今までベリアがいて誰も住み着くことができなかったので。なので、申請をすればすぐ買い取ることはできると思います」
「有難う御座います!」
カル島にすでに別荘を作ったことは黙っておいた。申請代+手数料として報酬の半分をギルドへ提出する。
「申請が通りましたら島の権利書をお渡しします。万が一棄却された場合は返金いたしますので、どちらにせよ一週間後にもう一度お越しください」
「分かりました」
またギルドに来ることが決定したが、必要事項なので致し方ない。申請が通ることを祈りつつギルドを後にする。しっかり変化魔法もかけ直した。
「よし、帰ろうか」
王都での用事は済んだ。今日は朝から移動ばかりで疲れたので、さっさと寝るに限る。すると、民衆がざわつきだした。また王宮軍だろうか。後ろを振り返ると、ルッツが護衛を付けて歩いてくるのが見えた。
「やば」
早足で王都の門を目指す。応援の声が上がっていたので、民衆からは好かれているらしい。
「黙っていたら、たしかに皇子っぽい。元気そうでなによりです」
目が合う前に退散したリルは、門から少し離れたところでチョコを抱えて空を飛んだ。
思いがけない収入も得られた。一週間後にまた行くので、その時に嗜好品も買ってみよう。金とは無縁の場所で生活しているのに、金に余裕ができると嗜好品を欲してしまうのが我ながら現金で面白い。
「そろそろいいかな」
抱っこしていたチョコの魔法を解き、ウォルフに戻す。やはり、こちらの方がしっくりくる。羽を大きく広げたチョコがリルの周りを回って遊びだした。
「そうだよね。チョコもいつもの方がいいよね」
慣れ親しんだ家に戻ったリルたちは草の上に寝転んで休憩をした。小瓶と地図はひとまず部屋の中に置いておいた。
特に急ぐ用事も無い。用事が無いということは良いことだ。そんなことを思いながらうたた寝をしていたら、リルの結界の位置を誰かが通るのを感じた。面倒そうに上半身を起こす。
「誰かが入ってきた……?」
「今、マスターが鑑定しております。ひとまず、身分証をご提示いただけますでしょうか?」
お茶を持ってきてくれた受付の女性に会釈をしていたら、心配していたことが起きた。
「すみません。まだ身分証を持っていなくて。今作ることは可能ですか?」
ごまかさずに尋ねると、女性はにこやかに答えた。
「承知しました。それではお待ちいただいている間に作りましょう」
「お願いします」
女性がいったん部屋から出て、何かの機械を持って戻ってくる。
「名前と性別を教えてください」
「リル、女です」
「お姿を登録します。今は変化魔法等は使用されていないですか?」
「あ、変化しています。戻ります」
言われて思い出したリルが元の姿に戻る。女性が驚いた表情をした。
「あれ、もしかして以前崖崩れの整備をされた方ですか?」
「はい、そうです」
「てっきり身分証お持ちなのかと思っていました」
「あはは、すみません。前回は知り合いの人が手続きしたので」
結局リルが身分証を持っていないことがバレてしまったが、今は受付の女性一人なので素直に答える。女性はそれを咎めることなく身分証の作成を進めてくれた。
出来上がった身分証を受け取る。そこに写真は載っていなかった。
「写真は無いんですね」
「はい。載せておくと、身分証が盗まれた場合その姿に変化してごまかす人が現れるので、お姿はギルド連盟のデータ上だけに登録しておくのです」
「なるほど」
たしかに魔法が使えるこの世界なら、姿を変えることは容易だ。リルだって何回も姿を変えている。もしも身分証の登録時に変化した姿を登録しようとしたら、そこでも何かしらのエラーが出て登録できないようになっているのだろう。
全ての人間に名字があるわけではないらしく、名字を伝えなくても登録できたのは幸いだ。どの場面でも、必要以上の情報は与えたくない。
「お待たせしました」
身分証の作成が終わったところで、ちょうど鑑定を終えたギルドマスターが部屋に入ってきた。五十は過ぎていそうな髭の似合う男性だ。名はエドルと言った。
「こちら、ベリアの魔石で間違いないです。あれを退治するとは驚きました」
「たまたま上手くいったんです」
「いやぁご謙遜を。あれには困っていたので私どもも助かりました」
そう言ってエドルが報酬袋を差し出した。
「今回の報酬です」
「え、こんなに」
前回のクエストの何倍もある。リルとしては別荘作りの流れでしただけで、クエストのつもりは全くなかった。
「どうぞお受け取りください」
これをそのまま受け取っていいものか悩んでいたが、ふとあることを思いついた。
「すみません。この報酬でカル島を買い取ることは可能でしょうか?」
「あそこをですか?」
エドルと受付の女性が顔を見合わせる。リルは緊張した面持ちで続きを待った。
「いちおうオトラ領土ですが、完全に未開の地です。なにせ、今までベリアがいて誰も住み着くことができなかったので。なので、申請をすればすぐ買い取ることはできると思います」
「有難う御座います!」
カル島にすでに別荘を作ったことは黙っておいた。申請代+手数料として報酬の半分をギルドへ提出する。
「申請が通りましたら島の権利書をお渡しします。万が一棄却された場合は返金いたしますので、どちらにせよ一週間後にもう一度お越しください」
「分かりました」
またギルドに来ることが決定したが、必要事項なので致し方ない。申請が通ることを祈りつつギルドを後にする。しっかり変化魔法もかけ直した。
「よし、帰ろうか」
王都での用事は済んだ。今日は朝から移動ばかりで疲れたので、さっさと寝るに限る。すると、民衆がざわつきだした。また王宮軍だろうか。後ろを振り返ると、ルッツが護衛を付けて歩いてくるのが見えた。
「やば」
早足で王都の門を目指す。応援の声が上がっていたので、民衆からは好かれているらしい。
「黙っていたら、たしかに皇子っぽい。元気そうでなによりです」
目が合う前に退散したリルは、門から少し離れたところでチョコを抱えて空を飛んだ。
思いがけない収入も得られた。一週間後にまた行くので、その時に嗜好品も買ってみよう。金とは無縁の場所で生活しているのに、金に余裕ができると嗜好品を欲してしまうのが我ながら現金で面白い。
「そろそろいいかな」
抱っこしていたチョコの魔法を解き、ウォルフに戻す。やはり、こちらの方がしっくりくる。羽を大きく広げたチョコがリルの周りを回って遊びだした。
「そうだよね。チョコもいつもの方がいいよね」
慣れ親しんだ家に戻ったリルたちは草の上に寝転んで休憩をした。小瓶と地図はひとまず部屋の中に置いておいた。
特に急ぐ用事も無い。用事が無いということは良いことだ。そんなことを思いながらうたた寝をしていたら、リルの結界の位置を誰かが通るのを感じた。面倒そうに上半身を起こす。
「誰かが入ってきた……?」
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