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第四章
決定
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リルは顔色を悪くさせた。
カラット・ノーバーという名前をリルは知っている。貴族ノーバー家の長男で、つまるところリルの兄である。
こんなところで見かけるとは思わなかった。転生したと自覚してから一度も会うことはなかったので、そのまま一生を終えるものとばかり。あの家に住んでいた頃も数える程度しか顔を合わせていなかった。
まさか、王宮軍に所属していたとは。しかも、五番隊まであるとは言え副隊長とは、おそらく優秀なのだろう。
──カラット兄様は七歳違いだった気がするから、二十二歳くらいかな。
そろそろ、ノーバー家を継ぐ話は出ているだろうか。継ぐとなると、王宮軍は退役するのだろうか。継いだ後も軍に所属するとしたら少々厄介だ。あちらもリルの顔を覚えていない可能性はあるが、名前を知られたらバレてしまうかもしれない。
──ここは知り合わないに越したことない。そもそも、王宮に所属していない私が軍の人と知り合う機会なんてないだろうし。
なんだかフラグのような言い方だと思いつつ、ルッツに適当に相槌を打ちながら王宮を出た。
「今日は本当に感謝する。また改めて礼と、野菜の定期契約について話に伺おう」
「はい。お待ちしています」
笑顔で対応し、ルッツと別れる。王宮を離れた瞬間、リルは真顔で足早に王都を後にした。王都を出てからも変化魔法を解くことなく、山の麓まで向かう。周りに人の気配がしなことを確認してから、勢いよく飛んでチョコの待つ家に帰った。
「チョコ、ただいま!」
「ギャオッ」
畑の周りで飛び回っていたチョコが体当たりしてくる。かなり重いのを知っているので、あらかじめ体を強化してから受け止めた。尻尾を千切れんばかりに振ってくる。たった数時間離れ離れになっただけでここまで嬉しそうに出迎えてくれるのは、家族としてとても嬉しく思う。
「今日は疲れたよ。チョコとゆっくりしたい」
「ガウ」
「一緒に空でお昼寝しよっか」
山の上をふよふよ浮きながら寝転がる。
「ルッツ様が細かいことを気にしない性格でよかった」
先ほどの質問は不用意であったが、全く突っ込まれず安心した。王宮に関係のないリルが急に王宮軍に興味を持ったと思われたら大変だ。もしくは、やはり王宮魔法士になってくれると期待されても可哀想だ。
王宮魔法士の推薦状は正しく取り消され、現在リルは自由の身となっている。そのことに対してルッツは何も言わず、前と変わらない態度で接してくれている。
チョコとのんびりした後、リルは久しぶりにカル島へ行くことにした。コウ肉を手に入れるためだ。
魔法陣の上に立ち、魔力を注入する。一人と一匹の姿は消え、あっという間にカル島に着いた。
「オッケー、移動魔法の調子もバッチリ」
カル島の魔法陣を出て歩き出す。家の前に立ち、リルは不敵な笑いを浮かべた。
「ふっふっふ、正式にこの島は私の土地になったから、表札を堂々と付けられる」
魔法袋から可愛らしくデザインされた表札が取り出される。それを地面に刺し、腰に手を当て家を眺めた。
「うんうん、良い感じ。チョコ~、ほら、ここにチョコの名前も書いたからね。私たちの家ってことだよ」
「ギャオ~ッ」
テンションの上がったチョコが嬉しさのあまり看板に前足を付ける。勢いで、看板に爪痕が付いた。
「ギャ……」
失敗したとばかりにチョコがリルの顔色を窺う。ぶんぶん振られていた尻尾も今は元気を無くしてぺたんと地面にくっついている。リルがしゃがみ、チョコの顔を間近で見つめて言った。
「大切な物を触る時は気を付けようね。でもこれ、チョコの印って感じでいいよ! 迫力が増した、ありがと」
「ギャオッ」
チョコがリルの周りを走る。リルは腹を抱えて笑った。
「はあ、楽しかった。コウを解体して、山の方に持ち帰ろう」
解体の仕方は魔法書に載っていた。魔物の食べ方というページだ。例になっていた魔物はコウではなかったが、冷却魔法で瞬間冷凍し、そのまま解体、冷却魔法袋で保管という形だった。
詳しい解体については、スライスの方法が書かれていたのでそれを参考にする。血が飛ぶと厄介だと思ったが、最初に冷凍するためそれは杞憂に終わった。
「有難く頂戴いたします」
魔法袋に収納する前、リルは手を合わせてコウに礼を言った。
「さて、この島は私たちが自由にしていいことになったから、前回行っていないところを散策しよう」
自分の土地として歩けるのは、周りを気にしなくていいので大変喜ばしいことだ。
思いがけない幸運だったが、また違う別荘を作りたくなったら、カル島のようなクエストを見つけるのも手だろう。
森を散策して家に戻りおやつを食べる。休憩がてら購入した地図を見ることにした。
「しばらくは用事も何も無いから、地図を片手に旅をしてみるのもいいね」
リルはオトラを出たことがない。どうせなら違う国に行ってみるのもいいかもしれない。キースには斜線を引き、その他の国を眺める。
「結構いろんな国があるんだね。海も広い。でも、キースみたいに争いも起きるとすると、地図って定期的に変わるのかな」
不便なことだと思うが、もしも地図が変わっていたとしても気が付けないので、このままこの地図でのんびり旅をすることに決めた。
カラット・ノーバーという名前をリルは知っている。貴族ノーバー家の長男で、つまるところリルの兄である。
こんなところで見かけるとは思わなかった。転生したと自覚してから一度も会うことはなかったので、そのまま一生を終えるものとばかり。あの家に住んでいた頃も数える程度しか顔を合わせていなかった。
まさか、王宮軍に所属していたとは。しかも、五番隊まであるとは言え副隊長とは、おそらく優秀なのだろう。
──カラット兄様は七歳違いだった気がするから、二十二歳くらいかな。
そろそろ、ノーバー家を継ぐ話は出ているだろうか。継ぐとなると、王宮軍は退役するのだろうか。継いだ後も軍に所属するとしたら少々厄介だ。あちらもリルの顔を覚えていない可能性はあるが、名前を知られたらバレてしまうかもしれない。
──ここは知り合わないに越したことない。そもそも、王宮に所属していない私が軍の人と知り合う機会なんてないだろうし。
なんだかフラグのような言い方だと思いつつ、ルッツに適当に相槌を打ちながら王宮を出た。
「今日は本当に感謝する。また改めて礼と、野菜の定期契約について話に伺おう」
「はい。お待ちしています」
笑顔で対応し、ルッツと別れる。王宮を離れた瞬間、リルは真顔で足早に王都を後にした。王都を出てからも変化魔法を解くことなく、山の麓まで向かう。周りに人の気配がしなことを確認してから、勢いよく飛んでチョコの待つ家に帰った。
「チョコ、ただいま!」
「ギャオッ」
畑の周りで飛び回っていたチョコが体当たりしてくる。かなり重いのを知っているので、あらかじめ体を強化してから受け止めた。尻尾を千切れんばかりに振ってくる。たった数時間離れ離れになっただけでここまで嬉しそうに出迎えてくれるのは、家族としてとても嬉しく思う。
「今日は疲れたよ。チョコとゆっくりしたい」
「ガウ」
「一緒に空でお昼寝しよっか」
山の上をふよふよ浮きながら寝転がる。
「ルッツ様が細かいことを気にしない性格でよかった」
先ほどの質問は不用意であったが、全く突っ込まれず安心した。王宮に関係のないリルが急に王宮軍に興味を持ったと思われたら大変だ。もしくは、やはり王宮魔法士になってくれると期待されても可哀想だ。
王宮魔法士の推薦状は正しく取り消され、現在リルは自由の身となっている。そのことに対してルッツは何も言わず、前と変わらない態度で接してくれている。
チョコとのんびりした後、リルは久しぶりにカル島へ行くことにした。コウ肉を手に入れるためだ。
魔法陣の上に立ち、魔力を注入する。一人と一匹の姿は消え、あっという間にカル島に着いた。
「オッケー、移動魔法の調子もバッチリ」
カル島の魔法陣を出て歩き出す。家の前に立ち、リルは不敵な笑いを浮かべた。
「ふっふっふ、正式にこの島は私の土地になったから、表札を堂々と付けられる」
魔法袋から可愛らしくデザインされた表札が取り出される。それを地面に刺し、腰に手を当て家を眺めた。
「うんうん、良い感じ。チョコ~、ほら、ここにチョコの名前も書いたからね。私たちの家ってことだよ」
「ギャオ~ッ」
テンションの上がったチョコが嬉しさのあまり看板に前足を付ける。勢いで、看板に爪痕が付いた。
「ギャ……」
失敗したとばかりにチョコがリルの顔色を窺う。ぶんぶん振られていた尻尾も今は元気を無くしてぺたんと地面にくっついている。リルがしゃがみ、チョコの顔を間近で見つめて言った。
「大切な物を触る時は気を付けようね。でもこれ、チョコの印って感じでいいよ! 迫力が増した、ありがと」
「ギャオッ」
チョコがリルの周りを走る。リルは腹を抱えて笑った。
「はあ、楽しかった。コウを解体して、山の方に持ち帰ろう」
解体の仕方は魔法書に載っていた。魔物の食べ方というページだ。例になっていた魔物はコウではなかったが、冷却魔法で瞬間冷凍し、そのまま解体、冷却魔法袋で保管という形だった。
詳しい解体については、スライスの方法が書かれていたのでそれを参考にする。血が飛ぶと厄介だと思ったが、最初に冷凍するためそれは杞憂に終わった。
「有難く頂戴いたします」
魔法袋に収納する前、リルは手を合わせてコウに礼を言った。
「さて、この島は私たちが自由にしていいことになったから、前回行っていないところを散策しよう」
自分の土地として歩けるのは、周りを気にしなくていいので大変喜ばしいことだ。
思いがけない幸運だったが、また違う別荘を作りたくなったら、カル島のようなクエストを見つけるのも手だろう。
森を散策して家に戻りおやつを食べる。休憩がてら購入した地図を見ることにした。
「しばらくは用事も何も無いから、地図を片手に旅をしてみるのもいいね」
リルはオトラを出たことがない。どうせなら違う国に行ってみるのもいいかもしれない。キースには斜線を引き、その他の国を眺める。
「結構いろんな国があるんだね。海も広い。でも、キースみたいに争いも起きるとすると、地図って定期的に変わるのかな」
不便なことだと思うが、もしも地図が変わっていたとしても気が付けないので、このままこの地図でのんびり旅をすることに決めた。
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