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第三章
気になる人
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「では、私はこれで失礼します!」
皇帝皇后との謁見が終了し控室に戻った瞬間、リルが他の面々にお辞儀をした。
「え、まだゆっくりされたらよろしいのに」
「急ぐので」
「急ぐ用も無いだろう」
「ここに長居する用も無いので」
「それなら、せめて送る」
ルッツが一人付いてくる。リルは拒否せず、二人で王宮の門に向かった。
王宮は高く、広い。リルの元の家も広かったが、その何倍あるか分からない。王宮なのだから当然だ。
そういえば、リルの家はどの程度の位に位置しているのだろうか。家出したのが十歳頃だったため、そういったことは今でも知らないし、今後知るつもりもない。
──あ。
また何か引っかかりを覚えた。つい先日もあった。もう少しで思い出せそうなのに、記憶が喉元から出てきてくれない。
「王宮の料理に戻ると、リルの野菜が恋しくなる」
「野菜ならいくらでも出来ますから、お分けすることはできますよ」
「本当か! ありがとう! いくらかかってもいいから、お願いしてもいいだろうか」
野菜の収穫量を増やすのは簡単なので気軽に言ってみたが、数人分を用意して少しだけ料金を頂くという契約を結べば、自分が娯楽を楽しめる程度の金が定期的に入ってくることになる。自分の魔力を使えば物理的原価はゼロなので、ルッツ以上にリルにとって良い条件だ。
「あれ」
そこへ、先日見かけた王宮軍の面々が通りがかった。ルッツに挨拶をし、ルッツもそれを返す。リルは一歩後ろに下がり、会釈をするに留まった。
遠くなっていく背中を見つめる。特に、一番前にいた栗色の髪の毛の男性が気になった。
「あの方たち、先日王都で見かけました」
「三番隊だな。彼らは普段王都やその周りをパトロールしていることが多いんだ」
「へえ」
王宮軍は隊によって担う役割が違う。キース軍との戦いで先陣を切った五番隊は、魔法士を多く配置し、遠方の調査を主に行っている。三番隊は王都周辺を調査しているらしいので、五番隊と反対の役割なのだろう。
王宮軍は立派な立場であるが、その分危険も多い。並大抵の根性では務まらないと思う。リルはここでまた違和感を覚えた。
──そういえば、王宮軍に関わりのある人がいたはず。
ぼんやりとした十歳以前の記憶を掘り起こす。生まれてから十年、あの屋敷をほとんど出たことはなかった。特に、母親が亡くなってからは。
だから、王宮軍など間近で見た経験はないはずだ。それなのにこうまで気になるとすると、一番可能性が高いのは──。
「先ほどの三番隊で栗色の髪の毛の方がいらっしゃいましたが、その方のお名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「栗色の? ああ、彼はたしか」
ルッツが考える数秒さえもどかしい。どんどん心拍数が上がるのを感じた。ついに、ルッツの口が開く。
「そうそう、三番隊副隊長カラット・ノーバーだ。ノーバー家の長男だな」
──カラット兄様だ!
皇帝皇后との謁見が終了し控室に戻った瞬間、リルが他の面々にお辞儀をした。
「え、まだゆっくりされたらよろしいのに」
「急ぐので」
「急ぐ用も無いだろう」
「ここに長居する用も無いので」
「それなら、せめて送る」
ルッツが一人付いてくる。リルは拒否せず、二人で王宮の門に向かった。
王宮は高く、広い。リルの元の家も広かったが、その何倍あるか分からない。王宮なのだから当然だ。
そういえば、リルの家はどの程度の位に位置しているのだろうか。家出したのが十歳頃だったため、そういったことは今でも知らないし、今後知るつもりもない。
──あ。
また何か引っかかりを覚えた。つい先日もあった。もう少しで思い出せそうなのに、記憶が喉元から出てきてくれない。
「王宮の料理に戻ると、リルの野菜が恋しくなる」
「野菜ならいくらでも出来ますから、お分けすることはできますよ」
「本当か! ありがとう! いくらかかってもいいから、お願いしてもいいだろうか」
野菜の収穫量を増やすのは簡単なので気軽に言ってみたが、数人分を用意して少しだけ料金を頂くという契約を結べば、自分が娯楽を楽しめる程度の金が定期的に入ってくることになる。自分の魔力を使えば物理的原価はゼロなので、ルッツ以上にリルにとって良い条件だ。
「あれ」
そこへ、先日見かけた王宮軍の面々が通りがかった。ルッツに挨拶をし、ルッツもそれを返す。リルは一歩後ろに下がり、会釈をするに留まった。
遠くなっていく背中を見つめる。特に、一番前にいた栗色の髪の毛の男性が気になった。
「あの方たち、先日王都で見かけました」
「三番隊だな。彼らは普段王都やその周りをパトロールしていることが多いんだ」
「へえ」
王宮軍は隊によって担う役割が違う。キース軍との戦いで先陣を切った五番隊は、魔法士を多く配置し、遠方の調査を主に行っている。三番隊は王都周辺を調査しているらしいので、五番隊と反対の役割なのだろう。
王宮軍は立派な立場であるが、その分危険も多い。並大抵の根性では務まらないと思う。リルはここでまた違和感を覚えた。
──そういえば、王宮軍に関わりのある人がいたはず。
ぼんやりとした十歳以前の記憶を掘り起こす。生まれてから十年、あの屋敷をほとんど出たことはなかった。特に、母親が亡くなってからは。
だから、王宮軍など間近で見た経験はないはずだ。それなのにこうまで気になるとすると、一番可能性が高いのは──。
「先ほどの三番隊で栗色の髪の毛の方がいらっしゃいましたが、その方のお名前を教えていただいてもよろしいですか?」
「栗色の? ああ、彼はたしか」
ルッツが考える数秒さえもどかしい。どんどん心拍数が上がるのを感じた。ついに、ルッツの口が開く。
「そうそう、三番隊副隊長カラット・ノーバーだ。ノーバー家の長男だな」
──カラット兄様だ!
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