貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第五章

子ドラゴン

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 草むらを掻き分け、チョコが匂いを嗅ぐところを後ろから覗き込む。そこにはドラゴンがうずくまっていた。

「え……っと……」

 この山には狂暴な魔物は住んでいない。山に数か月いるリルの見識ではそうだったが、今日覆されてしまった。リルがドラゴンを注意深く観察する。

「いや、私が見つけられなかったというより、ここに住んでいないドラゴンがここまで来たのかも」

 ドラゴンがすくっと立ち上がる。そしてリルをじっと見つめてきた。その姿に見覚えがあった。

「もしかして、あそこにいた子?」

 ドラゴンと言えば、北の地方にいたドラゴン親子だ。ドラゴンが珍しいのかその辺に生息しているのか定かではないが、リルはあの地でしかドラゴンを見たことがなかった。しかし、あそこからここまではずいぶん離れている。子ドラゴンがこの山にやってくるとは偶然にも程がある。

「まさかね。でも、結界は人間にしか効かないから、山に入ることはできる……」

 リルとチョコが顔を見合わせる。

「どうしよう。私の魔力を追いかけてついてきちゃったのかも。そしたら、今頃親ドラゴンが心配して……」

 どうにかして帰そうとあれこれ考えていたら、ドラゴンが一鳴きした。すると、上空から親ドラゴンが下りてきた。

「わあお」

 大きな翼が幻想的で気の抜けた声が出てしまう。急な魔力の増加がある場合は魔力感知器が無くても感じ取ることができるが、意図せず現れる時は増減がないので、ドラゴンが近くにいたことに気が付かなかった。

「よかった。お父さん? お母さん? もいたんだね」

 さすがに見ただけで性別は分からない。子ドラゴンに話しかけると、子ドラゴンが親ドラゴンに翼を広げてみせた。

──そういえば、なんでドラゴンたちが来たんだろう。もしかして、私に報復?

 不可抗力とは言えドラゴンを一度倒してしまったことは事実だ。それに怒ったとしても仕方ない。また相手にしなければならないことを覚悟していたら、親ドラゴンがリルを一瞥して飛んでいってしまった。子ドラゴンを置いて。呆気にとられたリルがぽかんと口を開ける。

「え、このドラゴンちゃんは……?」

 子ドラゴンの方を見るが、親ドラゴンを追いかける様子はなく、翼を一度広げただけだった。まるでさよならを言っているようにも見える。

「もしかして、ここで暮らします……ってこと……?」

 チョコに顔を向ける。チョコも首を傾げていた。人間が分からないのだ。ウォルフにはもっと分からないだろう。

 人間とウォルフとドラゴン。奇妙な組み合わせのまま、しばらく立ち尽くすしかなかった。
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