貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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番外編

サイ

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「ああ、今日もよく晴れた」

 洗濯物を干しながらサイが空を眺める。風魔法を使えば一瞬で乾くのだが、一人分の少量であるのと、暇つぶしも兼ねて毎日物干し竿に干している。

 数か月前はこの倍洗濯物があった。それを懐かしく思いながら、遠くの山に住んでいるリルたちを思い起こす。

「五年程か。良い日々だった」

 始めは軽い暇つぶしだったのに、いつの間にか日常になり、そして宝物になった。

「もうそろそろ隠居かね」

 リルが来る前はその時点で隠居のつもりだった。五年先延ばしになったが、今度こそゆっくり過ごそうと思う。とは言いつつも年齢的にはまだ元気であるので、平和な時間が時に窮屈に感じこともある。

「リルはあの年で老後みたいな生活を望んでいるが、実に不思議だねぇ。私には余る生活だ」

 十年前まで王宮魔法士として忙しく働いてきた。その後は冒険者の真似事をして、六年前にここに落ち着いた。それでも時折依頼が来ることもあったが、リルを引き取ってからは断るようになった。

 リルに魔法士としての才能があることが分かり王宮へ推薦状を送ったが、本人には迷惑だったらしい。

 庭で日向ぼっこをしていたら、最近見かけなかった魔法鳩が飛んできた。魔法で作られた鳩で、主に手紙を運ぶことに使われる。

 サイが受け取ると魔法鳩が消えた。手紙の中身を読み込むサイの眉がぴくりと動いた。

「あれまぁ、もう隠居の身だというのに。これは忙しくなりそうだ」

 そこには「王宮魔法士試験の試験官について」と書かれていた。どうやら、リルという大物が魔法士にならないことが確定し、新しい魔法士の試験を行うことになったらしい。そこで、元王宮魔法士のサイに白羽の矢が立った。

 もしかしたら、このまま魔法士の育成に携わってほしいと言われるかもしれない。

「その時はその時だ」

 ちょうど暇をしていたところだ。少しなら顔を出したって悪くない。リルもルッツと知り合いらしいので、王宮でばったり会うこともあるだろう。

「あの子の驚く顔が見物だね」

 サイが洗濯物を風魔法で手早く取り込む。王宮に行くべく、洋服棚に入れっぱなしだった王宮魔法士時代の服を取り出した。

「さて、忙しくなってきた。才能のある子はいるのかね、私は厳しいよ」

 こうしてサイの新しい日々が始まった。
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