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第三百五十八話

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私が雌であると知ってあの小さき者は驚いていた様だ。
仕方がない話なのだ。 私以外のリヴァイアサンなどこの世にはもう居ないのだから。

いや、まぁ探せば種族としてのリヴァイアサンは居るのかもしれない。

だとしてもここまで強力で長命な個体は居ないだろう。 居るとするならば謂わばレッサーリヴァイアサン。
そして、私が雌である理由は一つだ。 海の王である私が強力過ぎるが故に子孫を残させまいと様々な種が協力し、番となりうる雄を皆殺しにしたからだ。

幸いにもその攻防の中で私は更に強力な力を得てほぼ不死の様な存在になり果ててしまったわけだが。
お陰様で他者を信用など出来る訳が無い。 蛇の国の頂点である虹蛇やオロチであればまだ昔馴染みが故にそこまで話すのは苦では無いし、話していて楽だ。
しかし、それとて心が開けているわけでは無い。

私にはきっと孤独がこの先も付き纏うのだろうか。

いや、眷属となった者達が可哀想だからその様な事を思うのはやめておこう。

「いかん。 酒と言うものは嫌な事すら思い出す」

「リヴィ様…我々がお傍に居ますから! 元気出して!」

なんと健気な…。 しかし、タツノオトシゴよ…そなたの戦闘力は皆無なのだ。
しいて言うなら癒し要員だぞ?

「ありがとうな。 ところで、あれは何だ?」

「ウミガメって言う子達で、新しくリヴィ様の眷属になりたいらしいの!」

また戦闘力が無さそうな者達が眷属になるのか!?
私は何だと思われているのだ!?
別に海の生き物と話すのは苦じゃないから良いのだが。

「連れておいで。 話を聞こう…」

「は、初めましてカメ…ボクタチはウミガメなのだカメ…」

「見れば分かるが…。 何故眷属に?」

「あのリヴァイアサン様の眷属になればもう住処を奪われなくて済むカメ…」

ん? 住処を奪われる? なんの話だ?

「何が起きているのだ? 詳しく話しなさい」

「く、クラーケンの群れだカメ! あいつらがボクタチの住処を根こそぎ奪ったカメ…」

「ほう。 あの小さき者の話ではクラーケンには似たような姿の小型の種類が居ると聞く。 見た事はあるか?」

「ありますカメ!」

「それは良い事を聞いた! ではまずはクラーケンを大量に狩って小さき者にスルメを沢山作ってもらおうではないか! これでしばらくスルメに困らなくてすむぞ! 小さき者も喜ぶだろう。 礼に酒をくれるのではないか? そうなったら皆で飲んでみようではないか!」

「「「「「「お、おぉ!?」」」」」」

リアクションが薄いな。
盛り上げ方と言うのは全然分からないものだ。
虹蛇の所の奴らの方がこういった類の事は詳しいか…。

さて、嫌な事を忘れる為にも一狩り行くとするか。
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