幸福からくる世界

林 業

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パーティーは賑やかに

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ハルシオが通いの弟子三人に仕事を割り振る。

一人前と言われてから約十年程。
それから一年も絶たずに二人は旅行に行ってくるねと気楽に行ってしまった。
時々戻ってきては、面白いこと考えたとアイディアを形にしたり、技術を教えてくれては再び旅行に向かう。
「寂しいぃい」
ジャックウィリーに八つ当たりがてらペチペチとカボチャを叩く。
あまり痛くないよう手加減はしている。
とはいえ、多分大げさに痛がるのは芸人根性なだけだと最近理解した。

ルーンティルがお土産に買ってきてくれたお酒を、舐めるように飲みながら告げる。
酒飲みに関してはサジタリスに似たのかあまり強くはない。
早く嫁もらえと言わんばかりに減ったグラスにお酒を注いでくれるジャックウィリー。

ジャックウィリーは庭や家も手入れのために残っている。
とはいえ、用事があれば召喚されていないこともしばしば。
三十近くで何を言っているんだと言われるかもしれないが唐突に寂しくなるのだから致し方がない。

二人の家は仕事場所にしているのでアパートは借りている。
家には帰るが飲みたいときや、寂しいときは此処に泊まる。
ぐあーと口を開くクラーク
「なぁ。わかる?なんか恋しんだよ。寂しいんだよ」
だから結婚すればいいのにと言わんばかりに肩を叩く。
「結婚かぁ。とりあえず新しい仕事場作らなきゃなぁ」
一度、父親が突撃してきたことがあった。
私の息子だ。返せ。
思わず赤の他人だと叫び返した。
その後騒ぎを聞きつけた師父達が撃退してくれた。
あんな世間知らずな父親に自分もなるかと思うと正直嫌でしょうがない。


「リックと遊ぶ?」

こくこくと頷くララ。
「あいつは駄目だよ。嫁さんもらったばっかだもん。今は駄目だ」
くわっと口を開くクラーク。
おつまみを放り込めばやった!と噛み砕く。
ララも強請ってくるので与える。
もっとと甘えるのだが駄目と拒否。
「太るから駄目だって師父に言われただろ」
撫でればゴロゴロと喉を鳴らす。



「精霊を見れるお医者さんはいないんだって言ってたろ」


聞いているのか聞いていないのか喉を鳴らし続ける。
精霊の医者は、この国ではいないという。
もし、魔導具技師になれなければそっちに進むのもありかもしれないと思ったこともあった。
ルーンティルは聞けばおおよその知識を教えてくれる。
思い出してから会いたいなぁと二匹を交互に撫でながら呟く。

ジャックウィリーがここで寝るなと言わんばかりに体を揺らしてくる。
「五分だけだから」
それだけ告げて目を閉じる。



いい臭いに目を開ければルーンティルが新聞を読んでいる。
(師父だ)
ぼんやりと見つめていれば、おはようと微笑んでくる。
「おはようございます」
夢じゃないと気づいて体を起こす。
毛布が落ちるのに気づいて、ジャックウィリーだと慌てて拾う。
「えっと、お戻りですか?」
「うん。今日からこっちでまた数十年から百年ぐらいのんびりしようかなって」
「そうですか」
新しい仕事場見つけようと決める。
「別に僕はここで働こうといいんだけど」
「正直言えば狭いので。四人でもだいぶ手狭ですけど器具が揃っていて、移動となると一から作らないといけないですし、教育関連の本もいっぱいありましたから。でも、師父が戻ってきたなら移動ですね。器具どうしようかな」
「じゃあ、作ろうか?機材」
「いいんですか!」
「代わりに手伝ってね。君の弟子には一人前になったときに一緒に作ってがあげられるように」
「はい」
やったと心の中で小躍り。
久々に教えを受けれると喜ぶ。
「そういえば、他の精霊は?」
「あぁ、クローバと、ゴロン、後、ロバートは、弟子にくっついてますよ。この国で邪なこと考えやるやつはいないと思いますけど念の為」
「あぁ。なるほどねぇ。精霊契約はさせた?」

「いえ。まだですね。会議の時期もわかりませんから」
「じゃあ、来週あたり行われそうだから連れて行ってみる?」
「いいんですか?」
「僕と、君で連れていけば大丈夫だと思うよ。後精霊会議は精霊に聞くといいよ。おおよそで答えてくれるから」
「教えてくれる?」
「飯、出来たぞ。ルシオ食っていくだろ」
サジタリスが朝ご飯を持ってくる。
「先生のご飯だぁ」
美味しそうな朝ご飯を見てからサジタリスへ頷く。
「いただきます」
満面の笑顔で答える。

ご飯を口に運び、美味しいとサジタリスへ向ける。

「あ、そうだ。来月の頭に姉妹ができるよ」
「へ?」
「流石に他国の子だったから国境超えるのに時間かかかるってことで、子どもたちに手伝ってもらっても来月になっちゃうんだけど」
「やったぁあ。脱末っ子。俺もお兄ちゃんだ」
「困ってたら手を貸してあげてね」
「ちなみに魔導具師ですか?」
「うーん。希望は。ただあまり期待はできないかな。別の道を極める可能性が高いかな。正直」
「わかる、んですか?」
「伊達に三十人近く育ててないよ」
苦笑する様子に、それでもと喜ぶ。
「どんな子だろうな」
嬉しそうに笑うハルシオにルーンティルも微笑む。


兄妹は二人いて、獣の特徴を持った子たち
だった。
それはそれで戸惑うのだが別の話。


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