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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
01-4.
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「一審は火炙りだった。だが、……あまりにも、罰が重すぎると」
「ええ。そうでしょうね。きっと、あの子が反対をしてくださったのでしょう?」
アデラインは笑わない。
貴族らしくあれと鍛えられたはずの表情筋が動いてくれない。
「あの子が面会に現れると思っておりましたのよ」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンは頷く。
幼い頃、一度だけ言葉を交わした相手が最後の面会者だと誰も思わないだろう。アデラインがメルヴィンの姿を見て驚いていたのも、彼女が望んでいた相手とは違っていたからなのかもしれない。
「……聖女は、まだ、諦めていないとおっしゃっていた」
メルヴィンはアデラインの死を回避しようと足搔く少女の姿を見た。
その少女の行動を止めなかった。止める権利はメルヴィンにはない。
アデラインの死を望まないのはメルヴィンも同じことだった。しかし、堂々と行動に移すことができる少女のことをメルヴィンは羨ましくも思っていた。
「まあ。あの子らしいこと」
アデラインは床に置いたままになっていた古びた紙を掴む。
それをメルヴィンが取れるような位置に投げた。
「あの子に渡してくださらない?」
アデラインは、牢獄の中で手に入れることができた貴重な紙を手紙として利用した。それは慕っていた家族に向けるものではなく、疎んできたはずの義妹に向けて綴られた短い別れの言葉だった。
義妹ならば、手紙を受け取るだろう。
家族ならば、汚らわしい紙切れだと受け取りを拒否することだろう。
それを牢獄の中で嫌というほどにわからされた。
「……手紙か」
「ええ。あの子に渡そうと思って書いておりましたの。手紙と呼べるような立派なものではございませんが、場所が場所ですもの。しかたがないでしょう?」
アデラインの言葉を聞いているのだろうか。
メルヴィンは鉄格子の境に落ちた紙を拾い、握りしめる。
「これは俺が受け取るわけにはいかないだろうか」
メルヴィンは本気だった。
手紙の内容を見たわけではない。他人宛の手紙を受け取る趣味もない。しかし、メルヴィンはアデラインが残したものを誰にも渡したくはなかった。
その理由にメルヴィンは気づかない。
ただ衝動的に問いかけただけだった。
「ええ。そうでしょうね。きっと、あの子が反対をしてくださったのでしょう?」
アデラインは笑わない。
貴族らしくあれと鍛えられたはずの表情筋が動いてくれない。
「あの子が面会に現れると思っておりましたのよ」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンは頷く。
幼い頃、一度だけ言葉を交わした相手が最後の面会者だと誰も思わないだろう。アデラインがメルヴィンの姿を見て驚いていたのも、彼女が望んでいた相手とは違っていたからなのかもしれない。
「……聖女は、まだ、諦めていないとおっしゃっていた」
メルヴィンはアデラインの死を回避しようと足搔く少女の姿を見た。
その少女の行動を止めなかった。止める権利はメルヴィンにはない。
アデラインの死を望まないのはメルヴィンも同じことだった。しかし、堂々と行動に移すことができる少女のことをメルヴィンは羨ましくも思っていた。
「まあ。あの子らしいこと」
アデラインは床に置いたままになっていた古びた紙を掴む。
それをメルヴィンが取れるような位置に投げた。
「あの子に渡してくださらない?」
アデラインは、牢獄の中で手に入れることができた貴重な紙を手紙として利用した。それは慕っていた家族に向けるものではなく、疎んできたはずの義妹に向けて綴られた短い別れの言葉だった。
義妹ならば、手紙を受け取るだろう。
家族ならば、汚らわしい紙切れだと受け取りを拒否することだろう。
それを牢獄の中で嫌というほどにわからされた。
「……手紙か」
「ええ。あの子に渡そうと思って書いておりましたの。手紙と呼べるような立派なものではございませんが、場所が場所ですもの。しかたがないでしょう?」
アデラインの言葉を聞いているのだろうか。
メルヴィンは鉄格子の境に落ちた紙を拾い、握りしめる。
「これは俺が受け取るわけにはいかないだろうか」
メルヴィンは本気だった。
手紙の内容を見たわけではない。他人宛の手紙を受け取る趣味もない。しかし、メルヴィンはアデラインが残したものを誰にも渡したくはなかった。
その理由にメルヴィンは気づかない。
ただ衝動的に問いかけただけだった。
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