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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-5.

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 ……それなのにもかかわらず、婚約者の部屋を用意するものかしら。

 メルヴィンはなにを考えているのだろうか。

 ……変ですわね。

 アデラインはメルヴィンに良く思われていなかったことを知っている。

 男装の秘密が露見した結果、メルヴィンはアデラインに好意を抱いていると告白したものの、それはアディ・エインズワースとして接してきた日々が功を奏しただけである。偶然、初恋の相手がアデラインだったという事実に気づいただけであり、事前に婚約者の好みを把握していたとは考えにくい。

 ……まさか。

 頭を過る可能性に身震いをした。

 ……誕生日に手紙を送ってきていた代理人によるものでしょうか。

 婚約をした後から、誕生日にはアクセサリーと手紙が送られてきていた。その手紙はメルヴィンが書いたものではなく、代筆だとアデラインは気づいていた。

 騎士として働いていたことにより、気づいてしまったのだ。

 メルヴィンの字に寄せるつもりもなかったのだろう。

 明らかに手紙の字とメルヴィンの字は違った。

「……メルヴィン様。扉を閉めてくださる?」

 アデラインは真相を確かめるしかなかった。

 ……我が家に内通者がいるとは思いたくはありませんが。

 アデラインの好みを把握されているのは気持ちが悪かった。

 定期的に交流をしていたのならば、婚約者の好みを把握していることに喜びを抱いたかもしれないが、事情が違いすぎる。

 ……代筆者が誰なのかも気になっていたところですし。

 本音を打ち明けるのには、ちょうどいい時期なのかもしれない。

「わかった」

 メルヴィンはアデラインの意図を理解していない。

 しかし、他人に聞かれたくはない話があるのだろうと察したようだ。扉を閉め、丁寧に鍵までかける。

 ……鍵はかけなくてもかまいませんでしたのに。

 アデラインは心の中で思いつつ、口にはしなかった。

「こちらで話をしようか」

 メルヴィンは歩きながら提案をした。

「そちらは寝室でしょう? 座る場所ならば、この部屋にもありますわ」

 アデラインは制止をかける。

 ……なにを考えていらっしゃるのかしら。

 アデラインにはメルヴィンの考えがわからない。
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