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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る
01-1.
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「セシル」
名を呼ばれて振り返る。
……誰もいない。
広々としたアクロイド侯爵邸の中庭は季節の花が咲き乱れている。
その中を目的もなく散歩をしているのは、アクロイド侯爵家の三男、セシル・アクロイドだ。
……変なの。
セシルは足を止め、周囲を見渡した。
……お父様たちが帰ってきたのか?
誰かに名を呼ばれた。
侯爵家の三男であるセシルを呼び捨てにできる人物など限られており、その多くはセシルにとって好意的な人たちだった。
セシルは家族から溺愛されて育てられた。
難しいことはわからないままでいい。
セシルらしく育ち、セシルらしく生きているのならばそれでいい。
そうやって育てられた結果、他人に対する警戒心を持たず、我儘を押し通すようになった。
「誰かいるのか?」
セシルは視線を木の上に向ける。
そこには誰もいない。
「お父様? お母様?」
名を呼びそうな両親を呼んでみる。
反応がない。そもそも、多忙を極めている両親が侯爵邸にいることは少なく、溺愛しているセシルを遠目から見ているだけなどできるはずがなかった。
「アラン兄様?」
8歳上の長兄を呼ぶ。
王立学院で学んでいる18歳の長兄は寮生活だ。侯爵邸に戻ってくるのは卒業後になると、以前、会った時に聞かされたことを思い出す。
「ブライアン兄様? エイダ姉様?」
5歳上の次兄と、3歳上の姉を呼んでみたものの、こちらも返事がない。
……みんな、いない。
家族は忙しい。
学院に通っていないブライアンとエイダは、母親に連れられて社交界を兼ねたお茶会に出席をさせられていることだろう。兄姉たちは侯爵家の人間として相応しい礼儀作法を叩き込まれ、社交界に放り込まれている。
名を呼ばれて振り返る。
……誰もいない。
広々としたアクロイド侯爵邸の中庭は季節の花が咲き乱れている。
その中を目的もなく散歩をしているのは、アクロイド侯爵家の三男、セシル・アクロイドだ。
……変なの。
セシルは足を止め、周囲を見渡した。
……お父様たちが帰ってきたのか?
誰かに名を呼ばれた。
侯爵家の三男であるセシルを呼び捨てにできる人物など限られており、その多くはセシルにとって好意的な人たちだった。
セシルは家族から溺愛されて育てられた。
難しいことはわからないままでいい。
セシルらしく育ち、セシルらしく生きているのならばそれでいい。
そうやって育てられた結果、他人に対する警戒心を持たず、我儘を押し通すようになった。
「誰かいるのか?」
セシルは視線を木の上に向ける。
そこには誰もいない。
「お父様? お母様?」
名を呼びそうな両親を呼んでみる。
反応がない。そもそも、多忙を極めている両親が侯爵邸にいることは少なく、溺愛しているセシルを遠目から見ているだけなどできるはずがなかった。
「アラン兄様?」
8歳上の長兄を呼ぶ。
王立学院で学んでいる18歳の長兄は寮生活だ。侯爵邸に戻ってくるのは卒業後になると、以前、会った時に聞かされたことを思い出す。
「ブライアン兄様? エイダ姉様?」
5歳上の次兄と、3歳上の姉を呼んでみたものの、こちらも返事がない。
……みんな、いない。
家族は忙しい。
学院に通っていないブライアンとエイダは、母親に連れられて社交界を兼ねたお茶会に出席をさせられていることだろう。兄姉たちは侯爵家の人間として相応しい礼儀作法を叩き込まれ、社交界に放り込まれている。
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