不埒に溺惑

藤川巴/智江千佳子

文字の大きさ
47 / 52

STEP 14 「誰にも渡したくない」

しおりを挟む
「や、しろさん」
「代わりに俺の彼女役、もらってください」

 言葉の意味が噛み砕けず、慌てているうちに、八城の唇がもう一度私の唇に落ちてくる。私の抵抗を隠すように唇をぱくりと食んで、どうしようもなく優しい目で見つめてくる。瞳はやさしいのに、口元に浮かべている笑みは苦くて、印象がちぐはぐになる。

 自嘲をしているようにも、見えた。

「マジで、人生最初で最後だわ。こんなに口説くのに苦戦してまで、縋りついてんの」
「すがり、ついてる?」
「抱いたら、顔も合わせずに帰るつもりだったとか言われて、泣きながら出ていかれて、家まで追いかけても居ないし、あげく出張帰りにストーカー呼ばわり覚悟で部屋行っても出てきてくれねえし。……まじで頭狂うかと思った」
「おうち、来てくれていた、んですか」
「行くだろ。必死だっつうの」
「ひっし」
「逃がしたくない。明菜が好きだ」

 はっきりと断言して、もう一度私の唇に吸い付いてくる。遠慮なんてすこしもない。八城のセールスはいつもそうだ。考えている隙を、与えてくれない。それなのに、いつも丁寧に条件を提示してくれる。

「約束破って悪い。普通に、結構序盤から惚れてた」

 一度も、思いもしなかった言葉を吐かれて、とうとう混乱で目が泳いだ。

 答えを返す方法が分からない。狼狽えているだけなのに、逃げだそうとしていると思われたのか、八城の手が、私の指先に絡んでくる。すこしも抜け出せない。もう一度見た八城の目は、もっとつよく私を捕らえようとしていた。

「誰にも渡したくない」
「や、しろ、」
「花岡より、絶対尽くす」

 信じられない言葉ばかりが耳元に住み着いている。まるで、ずっと私が好きだったみたいだ。こんな言葉を八城から捧げられる日が来るなんて、一度も思わなかった。

「明菜だけを好きでいるし、ほかの女の子はどうでもいい」
「……絢瀬さんは」

 自分の唇が、こわごわとつぶやいていた。八城は、一度も絢瀬への好意を否定してくれなかった。

 こんなにも熱く囁いてくれているのに、絢瀬のことも好きだと言われたら私のハートはもう、捻じれて真っ二つに割れてしまう。悲痛な表情を浮かべてしまったのか、私を見下ろす八城がすこしだけ苦しそうに眉を顰めて、私の瞼の下に口づけてくれる。あの日の涙を、慰めてくれているかのような、優しい口づけだった。

「ごめん。はじめからもう吹っ切れてた」

 唇が離れた瞬間にあっさりと言葉を返されて、さすがに吃驚してしまった。

「えええ」
「ごめん。あの時は……、はじめに話した日は、もう吹っ切れてるって言うのは絢瀬さんに失礼かと思ってわざわざ言わなかったし、そのあともまあ、……明菜に、絶対に惚れられない相手だから俺にしたって言われてたから、誤魔化してた」

 八城の丁寧な説明で、目が回ってしまう。まさか、まさかそんなことがあるとは思わない。呆然としているうちに、もう一度唇に口づけられる。

 何度も確認するように、欲を引き出すように、口付けられている気がする。本当に、間違いなく誘惑されているのだと分かってしまった。

 八城は、ここで私が断る可能性なんて、見えても居なさそうだ。それくらい、真っ向から私の身体を抱こうとしていることを隠さずにアピールしてきている。

「今は、すきなひといないんですか」
「いやいるって。だから、明菜が好き」

 誘惑をされようと思って聞いたわけではない。それなのに、さらりと口説き文句を囁いてくる八城を前に、疑う言葉を口にする隙もない。八城はあっさりと私の身体を手繰り寄せて、ベッドの端から、シーツの中央に転がしてしまった。

 すぐに押し倒されて、真上から覗き込むカラメルみたいな熱い瞳と視線がぶつかった。八城の瞳は、私の視線の動きさえも絡めとって、八城のものにしてしまいそうなほど熱い。

「これなに? 明菜の態度、結構脈ありだと思ってんだけど。はじめから俺が好きだったと思っていいの? 花岡はもうどうでもいい?」

 私の好意なんて、八城にはばればれだったみたいだ。きっとそうだろう。私は嘘を吐くのが下手だ。自覚があるのに、八城相手に下手な交渉を持ち掛けてしまった。

 交渉が上手な八城なら、すぐに私の好意に気づいていたのかもしれない。

 好きだと言ったら、八城の人生の妨げになる。それだけがおそろしくて、答える前にそっと問いを立てる。

「私の、父に、よろしくって言われたから、じゃないですか」
「ん? 社長?」
「やっぱり知ってましたよね。……この間、娘をよろしくって、言われているのを、聞いてしまって、それで」

 よろしくと言われていた。間違いなく八城だった。思いだすだけで胸にとげが刺さる。悲しくなってじっと睨んでいるのに、八城は、少しの間呆然として、軽く首をかしげている。

 間抜けな体勢から抜け出したくなって八城の身体を押したら、考え込んでいるからか、簡単に拘束から抜け出せた。シーツの上で正座をしたら、八城があぐらをかいて座りなおしたのが見えた。じっと見つめてみれば、「ああ、」と口を開いた八城が簡単に説明してくれた。

「役員面談の時、明菜だけ明らかに業務量が多いし、児島に個人的に攻撃されてるっぽいけどって指摘したんだ。それのこと、めちゃくちゃ感謝されてたらしくて、教えてくれてありがとう、今後もよろしくって……、そんな感じのよろしくなら、されたけど。……その時のことか?」

 一呼吸おいてから、引き続き思い当たる節を探すように真剣に考え込んでいる八城に聞かれて、今度は私が呆然としてしまう。私が正座する場の隣に寄ってきた八城が、ぐっと顔を寄せて私の表情を間近で覗き込んでくる。

「父に、私の残業のことを?」
「そう」

 尋ねてみれば、簡単に答えてもらえるようなことだったのか。八城の丁寧な説明がすとんと腑に落ちて、胸の奥に閊えていたわだかまりが綺麗に消え去っていく。

「明菜?」
「……なんだ、」

 父に脅されて、私が可哀想だからそばに居てくれたわけでは、なかったのか。どうしようもなく安心して、身体の力が抜ける。かくりと前に倒れそうになったところを、危なげなく八城に抱き留められた。

 優しい匂いがする。

 今日も、八城の腕は逞しい。力強いのにどうやってこんなにも優しく柔らかく抱きしめることができるのだろう。八城春海の魅力の秘密は、暴くこともできなさそうだ。

「大丈夫? どうした?」
「……なんか、力抜けちゃって」
「いい意味?」

 ほっと息を吐いて抱き着けば、小さく笑われた。私が答えなくても、いい意味で力が抜けてしまっていることは八城に伝わっているだろう。

「うん、もちろん、です。その、父に私のことを面倒みるように言われて、エッチしてくれたのかと思って」

 口に出すと、かなりひどい妄想だった。思わず、自分自身の思い込みの酷さに笑ってしまう。八城はしばらく黙り込んでから、咎めるように私の腰を抱きしめる腕に力を込めてきた。

「……いやいや。それはやばいだろ」
「やばいです、か」
「いや、まず、そんな出世欲強い男に見えてんの?」
「じゃなくて、」
「ん?」
「優しいから、断れないだろうなって」
「んなわけないだろ。それに親父さん、そんな無茶言う人じゃないと思うんだけど……」
「父のことは……、わかりませんけど」

 わけの分からない交渉を持ち掛けてきた女性が社内で無理をしながら働いていて、実は社長の娘で、社長にも便宜を図るよう言われていたとしたら、情に厚い八城なら、すこしくらい自分のこころを犠牲にしても、ばかばかしい交渉に応じてくれそうな気がしていた。

 でも、それは単に、私があまりにも、人と交わることの意味を知らなさ過ぎただけだ。

 あんなにもすてきなことなら、きっと八城は全く好意を持たない相手なら、初めに言ってくれた通り、好きな人に大事にしてもらうべきだと言って、すっぱりと断ってくれていたと思う。つまり、引き受けると言ってくれた時には、すこしでも私に興味を持ってくれていたということなのだろう。

「ごめんなさい。私も本当は、はじめから、好きです。……すきでした」

 私が好きになった人は、いつも誠実でまっすぐで、優しくて明るいすてきな男性だ。絶対に言ってはいけないと思っていた言葉が唇から零れ落ちる。私の声を聞いた八城が、力の入らない私の肩をしっかりと掴みながら抱き起してくれる。真正面から覗き込まれて、もう一度声がこぼれた。

「大好き、です」

 真剣に伝えたら、八城の目がきゅっと細められる。まるで、眩しいものを見つめている人のような仕草だった。

「眞緒ちゃんは?」

 そっと囁く唇に確認されて、慌てて身体に力を入れる。それでもうまく背筋を伸ばすことができなくて、結局八城に掴まれるまま、崩れた体勢で彼を見上げた。

「それは、うそです……、ごめんなさい」

 頭を下げて、ゆっくりとあげる。その先に座りこんでいる八城が、しばらく瞬きしてから、大きくため息を吐いた。もう一度謝ろうと口を開きかけたところで、優しい腕に抱き直されてしまう。すっぽりと身体を埋めるように抱かれて、耳元に八城の吐息がこぼれた。

「……駆け引きされてたのか」
「かけひき?」
「眞緒ちゃんが好きなのかと思って、めちゃくちゃ焦らされた。そのくせに抱いてほしいとか言うから、よっぽど安全な男だと思われてんだと思って、めちゃくちゃ必死こいた」

 私の知らない八城のことを教えてくれているみたいで、胸がきゅっと甘く痺れる。もうずっと砂糖でいっぱいだ。ハートがときめいて落ち着かない。

「ちがいます。ずっと、あこがれていて……、すきで、だからただ、本当に一度でいいから、抱きしめられたかったんです。それだけでいいと思って」

 それだけで、生きていける気がした。

 今となっては、綺麗な思い出なんかにはなれないくらいに熱くて、持て余していたけれど、それでもやっぱり、あんなにすてきなことだと知っていたら、私はやっぱり八城以外とはできないと思う。真剣に囁けば、ますます腕に力を込められた。

「むり」
「ええ?」
「ダメだろ。一回じゃ足りない」

 背中を爪先でなぞられる。欲を私の身体の中心から引き出すような手つきで肩が震えた。八城に抱かれて、その手つきの意味を理解できるようになってしまったから、だめだ。抗える気がしない。

「たりない、です?」
「もっと気持ちいいの、したくないの」

 誑かされているのだとはっきりわかる声だった。低くて甘い。そして、どこかずるい気がする。やわらかく背中をなぞっていた指先は、簡単に服の下に侵入して、私の肌に触れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。 絶対に離婚届に判なんて押さないからな」 既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。 まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。 紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転! 純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。 離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。 それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。 このままでは紘希の弱点になる。 わかっているけれど……。 瑞木純華 みずきすみか 28 イベントデザイン部係長 姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点 おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち 後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない 恋に関しては夢見がち × 矢崎紘希 やざきひろき 28 営業部課長 一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長 サバサバした爽やかくん 実体は押しが強くて粘着質 秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

課長のケーキは甘い包囲網

花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。            えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。 × 沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。             実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。 大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。 面接官だった彼が上司となった。 しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。 彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。 心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡

恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-

プリオネ
恋愛
 せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。  ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。  恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。

処理中です...