36 / 89
30.あり得ない魔術
しおりを挟む
恐ろしいことに、一月単位で私の魔力がみるみる弱まっていった。
それに合わせ体力もあっという間に低下し、少しずつ寝ている日が増えていった。
魔力は体の細胞を活性化させ、魔力を持つ者の生命力となっている。
膨大な魔力を失うことは、命を削ることにも等しく、魔力が多い分その反動も大きかった。
国中の一般医者や魔法医師に診てもらったが、はっきりした原因はわからず疲労だろうと言われた。
「お父様、お忙しいのにお医者様の手配をしてくださって、ありがとうございます…」
体のだるさは日増しに強くなってきており、起き上がるだけでも息があがる。
「ユリアナ、起き上がらなくていい。さあ、私の愛する娘の顔を見せておくれ」
お父様は仕事から帰ると、お母様から今日1日の私の体調を確認してから、すぐに私の部屋に来るのが日課のようになっている。
「お父様、今日診察してくださった魔法医師の先生も、原因はわからないと仰ってました。
なので、魔法師団長に診てもらうよう手続きをしておくと」
お父様はうなずいて、
「ああ、ルイ・エンバリー魔法師団長が明日来てくれるそうだ。
ナイジェルもエンバリー魔法師団長に相談していたようなんだ。我が家に来るのはジュリアンの魔法指導の時以来だな」
(ジュリがルイ先生はすごい魔法師なんだって言ってたわね、ジュリ…)
カイル様から聞いたジュリアンの現状を、お父様に話した。お父様は顔を歪めると、あとは任せておけと言った。
ナイジェルは魔力減少の原因を国立図書館に何度も通い調べたり、遠方に良い医者がいると聞けば診療の依頼に馬を走らせた。
お兄様にも感謝を伝えないとならないわ。
本当は私が回復することが一番なのだけど…
翌日、数口の昼食が終わったところで、部屋をノックする音がする。
「ユリアナ、ルイ師団長が来てくれたよ。今、大丈夫かな?」
眼の下に少しクマを作ったお兄様が、優しく微笑みながら入ってきた。
「ええ大丈夫です、お兄様。今日はルイ師団長にお会い出来るのを楽しみにしていたの。私のためにありがとうございます」
息切れしそうになるが、なんとか言葉を繋げる。
お兄様は私のおでこにそっと唇を付けた。
「ルイ師団長、入ってください」
「失礼するよ」
ゆっくりした動作で入ってきたルイ・エンバリー魔法師団長は、柔らかい表情で私を見つめながら近付いてきた。
「ルイ師団長、今日は来てくださってありがとうございます」
クセのあるグレーの髪は肩まであり、長い前髪の隙間から髪と同じ色の瞳がこちらを見つめている。
寝ている私を不躾に見ているのではなく、私の状態を魔力を使って観察しているようだ。
「ユリアナ様、久しぶりですね。万能薬の時以来だ。ナイジェル様から話しは聞いたよ。
体調は…うん、良くないね、そのまま横になってて」
ルイ師団長はベッドの横にある椅子に座り、そっとユリアナの手を握った。
手を握った瞬間、ルイ魔法師団長の体がピクッと動いた。美しい顔がみるみる強張っていく。
「ナイジェル様、部屋の外で待っててくれませんか」
お兄さまが部屋から出ると、夜着の前を少し開けて見せて欲しいと、確認したいことがあるのだと言う。
そう説明しながらも、ルイ先生の声が震えている。
「わかりました」
アンナにも手伝ってもらい、夜着の胸元のヒモをほどき前を開く。
ルイ先生は私の胸の中央辺りに手をかざすと、目を少しずつ見開いていっているのがわかる。
「……ユリアナ様、今日侯爵は在宅ですか?」
ルイ先生は動揺を隠そうとしているが、取り繕うことができないようだった。口元を手で覆っているがその手は小刻みに震えていた。
私の部屋のソファーに座り、ルイ先生の説明をお父様とお母様、お兄様と一緒に聞いた。
にわかには信じられない話しだった。
話しを聞き終わった父は顔を強張らせ、母は静かに泣き出した。
お兄様が、
「闇魔術なんて今は存在しないはずだ、嘘だろ… 存在しない魔術をどうやって使う事ができるんだ!禁術だぞ…」
いつも穏やかで声を荒げた事のない優しいお兄様が、自らの髪をクシャクシャにし、両手で頭を抱え込んでいる。
ルイ先生も苦しい顔をしながら、
「先ほどお身体を見せていただきましたが、胸の中心と背中の同じ位置に、背中から心臓を貫くように闇魔術の紋章が刻まれていました」
「紋章…!?身体に?」
「うっ…」
お母様が声を押さえきれず、ハンカチを口に押し当てる。
国内ではルイ先生だけが使える唯一の魔法、鑑定魔法でもうっすらとしか浮かび上がらず、紋章の中にある古代文字を解析できれば、解術できるかも知れないという話だった。
ただ古い文献を探して調べてみないことには確実なことは言えず、また、闇魔術について文献がどこまで残っているか、なぜ今この闇魔術を発動できたのか、これから王宮に戻って調べないとわからないということだった。
「なんでだ…なんでユリアナがこんな目に!」
お兄様が涙声で呟き、両手の拳を握りしめる。
お父様も普段では見たことのない険しい顔をしている。
「ルイ師団長、これはいつ呪われたのかわかるのですか?」
お父様は私に闇魔術をかけた犯人を探すつもりだろう。
「おそらくは体調の変化が出てきた少し前でしょう。誕生日あとでしたか?」
今年の私の誕生日、リチャード様に私は不要だと言われた日。
自分の事なのに、どこか他人事のように聞いていた私は口を開く。
「ではルイ師団長、これは闇の禁術で、解術できなければ私は近いうちに女神様のもとへ帰るのですね?」
「……くっ」
堪えていたお兄様も口を押さえた。
「闇魔術はあまりにも危険であるため、今から500年前に闇魔術使いはすべて粛清されました。
禁術とされているため、使用すれば理由を問わず一族全員処刑となります。だから、なぜ今この禁術を使える者がいるのか。これから王宮に戻り陛下にも伝えなくてはなりません。
今後について、陛下のご指示があるまでは他言無用でお願いします」
ルイ先生は慌てた様子で退室すると、お母様はすでに気を失っており、お父様に横抱きにされ部屋を出ていった。
お兄様が私の横に来て座ると、両手で優しく私の頬を包み、労るように見つめてくる。
「ユリアナ、いいか、闇魔術は恐ろしく危険な魔術だから、魔術と解術方法は対となって書物に記載する事が定められていたと聞いたことがある。ルイ師団長もその事はもちろんわかっているはずだ。
いいな、お前は治ったらまた俺と剣術の稽古をして、馬で遠乗りに行くんだ、そして美味しいものをたくさん食べ………」
お兄さまの大きな瞳からハラハラと涙がこぼれ落ち、それ以上は言葉にならなかった。
お母様を部屋で寝かし付けたあと、すぐに私の部屋に戻ってきたお父様が、両腕を広げ大きな体で私とお兄様を包み込みむ。
お父様は目を真っ赤にして、
「私はお前達を命をかけて守り育ててきたつもりだ。それは私の命が続く限りこれからもだ。わかるな、私が生きている限りお前たちを失うことなどあり得ない」
私は声をあげて泣いた。
本当はわかっているのだ。
この禁術を解術する事が、ほぼ不可能であることを。
近い未来に私が女神様のもとへ帰る現実は変えられないことを。
そう思えば、いつまでもお父様にすがり付いて、最後の瞬間まで広い胸の中で守られていたいと思った。
あの後、結局解術方法は見付からず、私の体は日に日に衰弱し、死が訪れるのをただ待つだけの日々を過ごした。
禁術により命が削られていったが、私の命を散らしたのは闇の禁術ではなく、冤罪による処刑だったとは想像すら出来なかった。
それに合わせ体力もあっという間に低下し、少しずつ寝ている日が増えていった。
魔力は体の細胞を活性化させ、魔力を持つ者の生命力となっている。
膨大な魔力を失うことは、命を削ることにも等しく、魔力が多い分その反動も大きかった。
国中の一般医者や魔法医師に診てもらったが、はっきりした原因はわからず疲労だろうと言われた。
「お父様、お忙しいのにお医者様の手配をしてくださって、ありがとうございます…」
体のだるさは日増しに強くなってきており、起き上がるだけでも息があがる。
「ユリアナ、起き上がらなくていい。さあ、私の愛する娘の顔を見せておくれ」
お父様は仕事から帰ると、お母様から今日1日の私の体調を確認してから、すぐに私の部屋に来るのが日課のようになっている。
「お父様、今日診察してくださった魔法医師の先生も、原因はわからないと仰ってました。
なので、魔法師団長に診てもらうよう手続きをしておくと」
お父様はうなずいて、
「ああ、ルイ・エンバリー魔法師団長が明日来てくれるそうだ。
ナイジェルもエンバリー魔法師団長に相談していたようなんだ。我が家に来るのはジュリアンの魔法指導の時以来だな」
(ジュリがルイ先生はすごい魔法師なんだって言ってたわね、ジュリ…)
カイル様から聞いたジュリアンの現状を、お父様に話した。お父様は顔を歪めると、あとは任せておけと言った。
ナイジェルは魔力減少の原因を国立図書館に何度も通い調べたり、遠方に良い医者がいると聞けば診療の依頼に馬を走らせた。
お兄様にも感謝を伝えないとならないわ。
本当は私が回復することが一番なのだけど…
翌日、数口の昼食が終わったところで、部屋をノックする音がする。
「ユリアナ、ルイ師団長が来てくれたよ。今、大丈夫かな?」
眼の下に少しクマを作ったお兄様が、優しく微笑みながら入ってきた。
「ええ大丈夫です、お兄様。今日はルイ師団長にお会い出来るのを楽しみにしていたの。私のためにありがとうございます」
息切れしそうになるが、なんとか言葉を繋げる。
お兄様は私のおでこにそっと唇を付けた。
「ルイ師団長、入ってください」
「失礼するよ」
ゆっくりした動作で入ってきたルイ・エンバリー魔法師団長は、柔らかい表情で私を見つめながら近付いてきた。
「ルイ師団長、今日は来てくださってありがとうございます」
クセのあるグレーの髪は肩まであり、長い前髪の隙間から髪と同じ色の瞳がこちらを見つめている。
寝ている私を不躾に見ているのではなく、私の状態を魔力を使って観察しているようだ。
「ユリアナ様、久しぶりですね。万能薬の時以来だ。ナイジェル様から話しは聞いたよ。
体調は…うん、良くないね、そのまま横になってて」
ルイ師団長はベッドの横にある椅子に座り、そっとユリアナの手を握った。
手を握った瞬間、ルイ魔法師団長の体がピクッと動いた。美しい顔がみるみる強張っていく。
「ナイジェル様、部屋の外で待っててくれませんか」
お兄さまが部屋から出ると、夜着の前を少し開けて見せて欲しいと、確認したいことがあるのだと言う。
そう説明しながらも、ルイ先生の声が震えている。
「わかりました」
アンナにも手伝ってもらい、夜着の胸元のヒモをほどき前を開く。
ルイ先生は私の胸の中央辺りに手をかざすと、目を少しずつ見開いていっているのがわかる。
「……ユリアナ様、今日侯爵は在宅ですか?」
ルイ先生は動揺を隠そうとしているが、取り繕うことができないようだった。口元を手で覆っているがその手は小刻みに震えていた。
私の部屋のソファーに座り、ルイ先生の説明をお父様とお母様、お兄様と一緒に聞いた。
にわかには信じられない話しだった。
話しを聞き終わった父は顔を強張らせ、母は静かに泣き出した。
お兄様が、
「闇魔術なんて今は存在しないはずだ、嘘だろ… 存在しない魔術をどうやって使う事ができるんだ!禁術だぞ…」
いつも穏やかで声を荒げた事のない優しいお兄様が、自らの髪をクシャクシャにし、両手で頭を抱え込んでいる。
ルイ先生も苦しい顔をしながら、
「先ほどお身体を見せていただきましたが、胸の中心と背中の同じ位置に、背中から心臓を貫くように闇魔術の紋章が刻まれていました」
「紋章…!?身体に?」
「うっ…」
お母様が声を押さえきれず、ハンカチを口に押し当てる。
国内ではルイ先生だけが使える唯一の魔法、鑑定魔法でもうっすらとしか浮かび上がらず、紋章の中にある古代文字を解析できれば、解術できるかも知れないという話だった。
ただ古い文献を探して調べてみないことには確実なことは言えず、また、闇魔術について文献がどこまで残っているか、なぜ今この闇魔術を発動できたのか、これから王宮に戻って調べないとわからないということだった。
「なんでだ…なんでユリアナがこんな目に!」
お兄様が涙声で呟き、両手の拳を握りしめる。
お父様も普段では見たことのない険しい顔をしている。
「ルイ師団長、これはいつ呪われたのかわかるのですか?」
お父様は私に闇魔術をかけた犯人を探すつもりだろう。
「おそらくは体調の変化が出てきた少し前でしょう。誕生日あとでしたか?」
今年の私の誕生日、リチャード様に私は不要だと言われた日。
自分の事なのに、どこか他人事のように聞いていた私は口を開く。
「ではルイ師団長、これは闇の禁術で、解術できなければ私は近いうちに女神様のもとへ帰るのですね?」
「……くっ」
堪えていたお兄様も口を押さえた。
「闇魔術はあまりにも危険であるため、今から500年前に闇魔術使いはすべて粛清されました。
禁術とされているため、使用すれば理由を問わず一族全員処刑となります。だから、なぜ今この禁術を使える者がいるのか。これから王宮に戻り陛下にも伝えなくてはなりません。
今後について、陛下のご指示があるまでは他言無用でお願いします」
ルイ先生は慌てた様子で退室すると、お母様はすでに気を失っており、お父様に横抱きにされ部屋を出ていった。
お兄様が私の横に来て座ると、両手で優しく私の頬を包み、労るように見つめてくる。
「ユリアナ、いいか、闇魔術は恐ろしく危険な魔術だから、魔術と解術方法は対となって書物に記載する事が定められていたと聞いたことがある。ルイ師団長もその事はもちろんわかっているはずだ。
いいな、お前は治ったらまた俺と剣術の稽古をして、馬で遠乗りに行くんだ、そして美味しいものをたくさん食べ………」
お兄さまの大きな瞳からハラハラと涙がこぼれ落ち、それ以上は言葉にならなかった。
お母様を部屋で寝かし付けたあと、すぐに私の部屋に戻ってきたお父様が、両腕を広げ大きな体で私とお兄様を包み込みむ。
お父様は目を真っ赤にして、
「私はお前達を命をかけて守り育ててきたつもりだ。それは私の命が続く限りこれからもだ。わかるな、私が生きている限りお前たちを失うことなどあり得ない」
私は声をあげて泣いた。
本当はわかっているのだ。
この禁術を解術する事が、ほぼ不可能であることを。
近い未来に私が女神様のもとへ帰る現実は変えられないことを。
そう思えば、いつまでもお父様にすがり付いて、最後の瞬間まで広い胸の中で守られていたいと思った。
あの後、結局解術方法は見付からず、私の体は日に日に衰弱し、死が訪れるのをただ待つだけの日々を過ごした。
禁術により命が削られていったが、私の命を散らしたのは闇の禁術ではなく、冤罪による処刑だったとは想像すら出来なかった。
114
あなたにおすすめの小説
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです
鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。
理由は――
「王太子妃には華が必要だから」。
新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。
誰もが思った。
傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。
けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。
「戻りません」
彼女は怒らない。
争わない。
復讐もしない。
ただ――王家を支えるのをやめただけ。
流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。
さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。
強いざまあとは、叫ぶことではない。
自らの選択で、自らの立場を削らせること。
そして彼女は最後まで戻らない。
支えない。
奪わない。
――選ばれなかったのではない。
彼女が、選ばなかったのだ。
これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。
山田 バルス
恋愛
結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。
また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。
大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。
かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。
国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。
スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。
ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。
後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結】最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる