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40.第一騎士団団長ジョーデン①
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俺は子供の頃から体格に恵まれ、頭もそこそこ良かった。剣術を習い始めると、その才能は開花した。
恵まれた体格に、相手の戦力や技を分析する能力、力技だけではない、知力も伴う俺の剣に敵う者はいなかった。
学院の剣術大会で俺に勝てる者がいなかったので、剣術の先生から、王家主催の剣術大会の出場を勧められた。
俺は過去の剣術大会の結果が保管されている王立図書館に行った。
過去に誰がどのような結果で勝ち上がったのか、技や勝つまでの時間、勝った者の所属などを調べた。
その大会の日、まったく負ける気はしなかった。
調べた限り、一人だけもしかしたら勝てないかもしれないと思った人物は、今回不参加だった。魔物の討伐があるらしい。
案の定、俺は優勝した。
学院生が、現役の騎士達を打ち負かしたのだ。
国王陛下から直々に、陛下の護衛を主な役割とする、第一騎士団に入団するよう声をかけられた。第一騎士団は、騎士を目指している者が最も憧れる騎士団だった。
国王陛下の勧誘を断ることなど出来るはずもなく、俺はそのまま第一騎士団の入団手続きをした。
それからは、あっという間だった。
気が付けば団長となり、かなりの人数の部下を従えていた。
そんな時だった。とてつもない魔力とスキルを持った子供が、フォンベルト侯爵家の私兵として存在していることを知った。
魔法師団長が、その子供に魔力操作を指導することになり、陛下の許可を得るためこの話しが表沙汰になった。
所詮魔力があっての強さだ。肉体だけの強さなら俺には敵わないだろう。
今までで俺より強いかもしれないと感じたのは、第二騎士団の前団長ライエムだけだった。
その噂は驚くものだった。
両手に剣を持ち、大型の魔物でも一瞬にして切り裂く素早さと、無駄の無い動きは一般騎士の10人分の働きをしたそうだ。
そのライエムも、ひとり息子のジミールに団長を引き継ぎ退団した後、前聖人ローズマリアに執着し、あとを付け回すなどして厳重注意を受けたり、自身の妻に暴力を奮ったり、晩年は孤独だったようで、亡くなったあと、一月以上経ってから発見されたそうだ。
第二騎士団は魔物討伐のための編成をしており、剣術大会にはほとんど参加しないので、ライエムのその強さを知る者は少なかった。
それに、強いと言っても所詮第二騎士団だ。強いだけの愚か者だ。
第二の教養も品位も無い、第一に入団できない格下の人間なのだ。
俺が第一騎士団に在籍する限り、俺に敵うものはいない。
そう思っていた。
騎士団内でも噂になっていた。
「おい聞いたか?すごい奴がいるらしいぞ。なんでもフォンベルト侯爵のとこの私兵で、まだ子供なのに剣の腕も凄いうえに、魔力がとんでもない量らしい。しかもスキルがあるそうだ」
「あー聞いたぞ!そのスキル、凄いらしいぞ、威嚇だってよ!発動させたら生き物は動けなくなるそうだ」
「本当か、それ?騎士が持っていたら最高のスキルだな。しかし初めて聞いたな、突然変異なのか?」
強い者には特に興味が強くなるのは騎士の習性かもしれない。
騎士ならば、誰もが欲しいであろうスキルを持った子供が注目されるのは当然の話しだ。
なぜかイライラした。
今まで一番強かったのは俺だ、俺以上に強い者はいなかった。
誇り高い第一騎士団団長となり、英雄のような羨望の眼差しで見られていた。
ただ、それから何年経っただろう。
年々少しずつ衰えは自覚していた。
でもまだだ、まだ俺はやれる。
そんな胸の内で葛藤している時に現れた、俺よりも最強かもしれない人間が。
魔力だかスキルだか知らないが、俺は実力で勝ち上がってきた。そんな運良く手に入れた魔法で強いなんて、そんなものは本物の強さじゃない。
そいつに魔力が無ければ、純粋な剣の腕前なら俺の方が絶対に強い。
ただ、俺は気になって仕方なかった。
いつか俺を破りに来るのではないか、大勢の部下の前で、無様に膝を着く日が来るのではないか。
国王陛下に別件で呼ばれた時に提言した。
「陛下、フォンベルト侯爵家のスキルを持った兵の様子を一度確認しておきたいのですが」
「なんだジョーデン、国内最強の騎士が私兵ごときを気にかけるとは」
陛下には、見透かされているようで悔しさが込み上げた。
「いえ、もし私怨のためにその魔力を使われたら、陛下にどのような火の粉が降りかかるか確認しておきたいのです」
「ああ、ルイが言っていたな。なんでも過去にそのスキルで、王家を脅かすまでの者がいて粛清されたと」
やはり危険だ。私の力でも陛下をお守り出来なかったなど、あってはならない。
「わかった、見てきてくれジョーデン。ルイが侯爵家に魔力操作の指導に行っている。それに同行してくれ。イカれた奴なら早めに引き取って、対処しないとならないな」
陛下はニヤリと笑った。
ルイ魔法師団長に話し、フォンベルト侯爵家に行く時に同行すると伝えた。
「ジョーデン騎士団長も気になりますよね、やっぱり。一度は王家に粛清された魔力ですからね。
でも彼、魔力無しでも凄いんですよ。まあ見てもらった方が早いですね」
侯爵邸の鍛練場に入った。
大勢の私兵の中にいたその少年はすぐにわかった。
大人よりもまだ少しだけ背が低いが、動きが普通のそれではなかった。
大柄な私兵5人に囲まれているが、やられる気配がまったく無いどころか、眼光は鋭く、無駄な動きが一切無い。
足の位置もブレが無く、余程鍛えないとあの俊敏さは得られないはずだ。
黒い髪を後ろで縛り、金色の瞳で鋭く獲物を捕らえる。
まるで狼だった。
私兵が次々と倒れていった。
「クソッ!ジュリアンめ!お前また強くなってないか!?畜生っ、悔しい!」
「とうとう5人かよー、お前俺たちより強くなってどうする?」
「はぁー、明日またやるぞジュリアン!次はもう副私兵長も入ってもらおう」
皆で笑っていた。このジュリアンと呼ばれている少年に負けて、悔しいというより、喜んでいるように見えた。
当の本人は汗をかき、息を切らしてはいるが涼しい顔をしていた。
この時点で俺は背中に嫌な汗をかいていた。
初めてだった。人の剣を見て、余裕をなくすことなど、今までただの一度も無かったのに。
不気味とさえ思った。
こんな奴がいたら、この剣術の腕前に魔力も加わったら、俺どころか騎士団全員が瞬殺だろう。
「やあ、君がジュリアン君だね。私は第一騎士団団長のジョーデンだ。君の剣を見せてもらったよ。5人も相手にしてるんだね」
「まだまだです。5人くらいでこんなに時間がかかっていては遅すぎる。もっと鍛えないと」
「ハハハ、あれでまだまだとは、君の理想はどこまでなんだい?」
子供の物言いだったが、笑うしかなかった。あんなこと、うちの騎士団員でも無理だ。
私でも、自分より大きな手練れの騎士5人相手に、あそこまで出来るのか…
「おれ… 私は、大切な侯爵家の旦那様とそのご家族、屋敷の使用人の全員を、私だけで守れる事が目標です」
真剣な瞳だった。
鳥肌が立った。
この少年なら出来るだろうとすぐに理解したから。
恐ろしかった。初めて人に対して恐ろしいという感情を持った。
魔力を使わなくてこれなのだ。
「そうかそれは凄いな。君なら出来るだろう」
握手をしようと手を出すと、少年も手を出して俺の手を握った。
わからない、魔力のせいなのか、ただ単にこの少年の力なのか、握られた手に込められた力に、この少年の覚悟と、誰も我が主人には近寄らせないと忠告された気がした。
駄目だ。
早く、出来うる限り早く、この狼を潰しておかないと。俺の脅えからくる心の声がした。
恵まれた体格に、相手の戦力や技を分析する能力、力技だけではない、知力も伴う俺の剣に敵う者はいなかった。
学院の剣術大会で俺に勝てる者がいなかったので、剣術の先生から、王家主催の剣術大会の出場を勧められた。
俺は過去の剣術大会の結果が保管されている王立図書館に行った。
過去に誰がどのような結果で勝ち上がったのか、技や勝つまでの時間、勝った者の所属などを調べた。
その大会の日、まったく負ける気はしなかった。
調べた限り、一人だけもしかしたら勝てないかもしれないと思った人物は、今回不参加だった。魔物の討伐があるらしい。
案の定、俺は優勝した。
学院生が、現役の騎士達を打ち負かしたのだ。
国王陛下から直々に、陛下の護衛を主な役割とする、第一騎士団に入団するよう声をかけられた。第一騎士団は、騎士を目指している者が最も憧れる騎士団だった。
国王陛下の勧誘を断ることなど出来るはずもなく、俺はそのまま第一騎士団の入団手続きをした。
それからは、あっという間だった。
気が付けば団長となり、かなりの人数の部下を従えていた。
そんな時だった。とてつもない魔力とスキルを持った子供が、フォンベルト侯爵家の私兵として存在していることを知った。
魔法師団長が、その子供に魔力操作を指導することになり、陛下の許可を得るためこの話しが表沙汰になった。
所詮魔力があっての強さだ。肉体だけの強さなら俺には敵わないだろう。
今までで俺より強いかもしれないと感じたのは、第二騎士団の前団長ライエムだけだった。
その噂は驚くものだった。
両手に剣を持ち、大型の魔物でも一瞬にして切り裂く素早さと、無駄の無い動きは一般騎士の10人分の働きをしたそうだ。
そのライエムも、ひとり息子のジミールに団長を引き継ぎ退団した後、前聖人ローズマリアに執着し、あとを付け回すなどして厳重注意を受けたり、自身の妻に暴力を奮ったり、晩年は孤独だったようで、亡くなったあと、一月以上経ってから発見されたそうだ。
第二騎士団は魔物討伐のための編成をしており、剣術大会にはほとんど参加しないので、ライエムのその強さを知る者は少なかった。
それに、強いと言っても所詮第二騎士団だ。強いだけの愚か者だ。
第二の教養も品位も無い、第一に入団できない格下の人間なのだ。
俺が第一騎士団に在籍する限り、俺に敵うものはいない。
そう思っていた。
騎士団内でも噂になっていた。
「おい聞いたか?すごい奴がいるらしいぞ。なんでもフォンベルト侯爵のとこの私兵で、まだ子供なのに剣の腕も凄いうえに、魔力がとんでもない量らしい。しかもスキルがあるそうだ」
「あー聞いたぞ!そのスキル、凄いらしいぞ、威嚇だってよ!発動させたら生き物は動けなくなるそうだ」
「本当か、それ?騎士が持っていたら最高のスキルだな。しかし初めて聞いたな、突然変異なのか?」
強い者には特に興味が強くなるのは騎士の習性かもしれない。
騎士ならば、誰もが欲しいであろうスキルを持った子供が注目されるのは当然の話しだ。
なぜかイライラした。
今まで一番強かったのは俺だ、俺以上に強い者はいなかった。
誇り高い第一騎士団団長となり、英雄のような羨望の眼差しで見られていた。
ただ、それから何年経っただろう。
年々少しずつ衰えは自覚していた。
でもまだだ、まだ俺はやれる。
そんな胸の内で葛藤している時に現れた、俺よりも最強かもしれない人間が。
魔力だかスキルだか知らないが、俺は実力で勝ち上がってきた。そんな運良く手に入れた魔法で強いなんて、そんなものは本物の強さじゃない。
そいつに魔力が無ければ、純粋な剣の腕前なら俺の方が絶対に強い。
ただ、俺は気になって仕方なかった。
いつか俺を破りに来るのではないか、大勢の部下の前で、無様に膝を着く日が来るのではないか。
国王陛下に別件で呼ばれた時に提言した。
「陛下、フォンベルト侯爵家のスキルを持った兵の様子を一度確認しておきたいのですが」
「なんだジョーデン、国内最強の騎士が私兵ごときを気にかけるとは」
陛下には、見透かされているようで悔しさが込み上げた。
「いえ、もし私怨のためにその魔力を使われたら、陛下にどのような火の粉が降りかかるか確認しておきたいのです」
「ああ、ルイが言っていたな。なんでも過去にそのスキルで、王家を脅かすまでの者がいて粛清されたと」
やはり危険だ。私の力でも陛下をお守り出来なかったなど、あってはならない。
「わかった、見てきてくれジョーデン。ルイが侯爵家に魔力操作の指導に行っている。それに同行してくれ。イカれた奴なら早めに引き取って、対処しないとならないな」
陛下はニヤリと笑った。
ルイ魔法師団長に話し、フォンベルト侯爵家に行く時に同行すると伝えた。
「ジョーデン騎士団長も気になりますよね、やっぱり。一度は王家に粛清された魔力ですからね。
でも彼、魔力無しでも凄いんですよ。まあ見てもらった方が早いですね」
侯爵邸の鍛練場に入った。
大勢の私兵の中にいたその少年はすぐにわかった。
大人よりもまだ少しだけ背が低いが、動きが普通のそれではなかった。
大柄な私兵5人に囲まれているが、やられる気配がまったく無いどころか、眼光は鋭く、無駄な動きが一切無い。
足の位置もブレが無く、余程鍛えないとあの俊敏さは得られないはずだ。
黒い髪を後ろで縛り、金色の瞳で鋭く獲物を捕らえる。
まるで狼だった。
私兵が次々と倒れていった。
「クソッ!ジュリアンめ!お前また強くなってないか!?畜生っ、悔しい!」
「とうとう5人かよー、お前俺たちより強くなってどうする?」
「はぁー、明日またやるぞジュリアン!次はもう副私兵長も入ってもらおう」
皆で笑っていた。このジュリアンと呼ばれている少年に負けて、悔しいというより、喜んでいるように見えた。
当の本人は汗をかき、息を切らしてはいるが涼しい顔をしていた。
この時点で俺は背中に嫌な汗をかいていた。
初めてだった。人の剣を見て、余裕をなくすことなど、今までただの一度も無かったのに。
不気味とさえ思った。
こんな奴がいたら、この剣術の腕前に魔力も加わったら、俺どころか騎士団全員が瞬殺だろう。
「やあ、君がジュリアン君だね。私は第一騎士団団長のジョーデンだ。君の剣を見せてもらったよ。5人も相手にしてるんだね」
「まだまだです。5人くらいでこんなに時間がかかっていては遅すぎる。もっと鍛えないと」
「ハハハ、あれでまだまだとは、君の理想はどこまでなんだい?」
子供の物言いだったが、笑うしかなかった。あんなこと、うちの騎士団員でも無理だ。
私でも、自分より大きな手練れの騎士5人相手に、あそこまで出来るのか…
「おれ… 私は、大切な侯爵家の旦那様とそのご家族、屋敷の使用人の全員を、私だけで守れる事が目標です」
真剣な瞳だった。
鳥肌が立った。
この少年なら出来るだろうとすぐに理解したから。
恐ろしかった。初めて人に対して恐ろしいという感情を持った。
魔力を使わなくてこれなのだ。
「そうかそれは凄いな。君なら出来るだろう」
握手をしようと手を出すと、少年も手を出して俺の手を握った。
わからない、魔力のせいなのか、ただ単にこの少年の力なのか、握られた手に込められた力に、この少年の覚悟と、誰も我が主人には近寄らせないと忠告された気がした。
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