貴方たちの悪意は倍にしてお返しします

翡翠と太陽

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58.高等部進学

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 ついにこの日が来た。
 シャルルアンとリチャードが運命の再会をする日だ。

 この日まで、私は前回と極力同じように過ごした。
 ジュリの件はすぐにでも救わないとならなかったので、前回とはまるで違う流れになってしまったが、今はジュリが無事でいてくれることに喜びしかない。

 しかし、前回の時と比べると、リチャードの態度に少し違和感があった。

 私も極力同じようにと言っても、前回のあのリチャードを昨日のように覚えている。
 
 私を蔑ろにし、学院内のあちこちでシャルルアンと交わっていたこと、私の誕生日に側近に買わせた贈り物で、お父様の機嫌を損ねないよう忠告されたこと、私以外の女シャルルアンを最愛と呼び、私との未来は無いと言ったこと。

 そして、私を冤罪にかけて、家族もジュリも亡き者にした。

 この記憶があるがために、前回のような、リチャードを真にお慕いしているユリアナにはなれなかった。

 エスコートされる時、触れる手に鳥肌が立った。
 見つめられ微笑まれると吐き気がした。
 
 それでも、まだだ。
 今日のこの日、この男がまた同じ事を繰り返せば、私は悪魔になるのだ。

 「おはようユリアナ、今日から高等部だね」

 「おはようございます、リチャード様。今日は私のためにわざわざありがとうございます」

 「わざわざだなんて、当たり前じゃないか、君が不安の無いようにエスコートするのは僕の役目だよ?」

 爽やかな作り笑顔で迎えに来たのは前回と同じだけど、こんな会話したかしら?

 リチャードが王家の馬車で迎えに来たので、ジュリは馬に乗り馬車と並走した。

 「ユリアナ、あの護衛はずっと一緒なのかい?学院の中でも?」

 なぜジュリのことを気にしてるのかしら?前回はいなかったから?

 「はい、リチャード様。私もジュリアンも色々辛い目に遭いましたので、お互いを守る意味もあります」

 あなたの父親もその原因よ?知らないでしょうね?私に興味が無いのだから。

 「ああ、聞いたよ。君は随分と我慢していたんだね。僕に言ってくれたら、対応できたのに、今度何かあったら僕に相談してね?」

 ……?何かしら、前回と違うわ。私の聖人の仕事に興味なんて無かったくせに。

 馬車は学院に到着し、リチャードのエスコートで学院内を案内してもらい、いよいよ教室の前まで来た。

 「あっ、申し訳ありません…私少し気分が…」
 
 来たわね、きっと馬車を降りるところから見てたんだわ。
 前回同様リチャードの胸に縋り付くシャルルアンが現れた。

 そして、やはりリチャードは息を飲み、シャルルアンを見た。
 
 それからは、前回とまったく同じだった。私をおいて、シャルルアンの肩を抱き、医療室へエスコートした。
 王家の護衛騎士が私を見て気まずい表情をしている。
 私は悲しむでもなく、表情には一切感情を乗せず、護衛騎士に軽く会釈をして教室に入った。

 前回と違うのは、私は侯爵家の影を学院に忍ばせていた。
 リチャードの確実な不貞の証拠と、シャルルアンに着せられるであろう冤罪を覆すためだ。

 私の身内や、ジュリやアンナの証言は証拠としては無いものにされる。

 なので学院に来た時は必ず第三者と行動し、その相手の印象に残る行動をした。もちろん自分でも事細かに日記に記録した。
 本当に馬鹿馬鹿しいとしか思えなかったが、前回の悪夢が始まったのだ。

 今は、あの時のように簡単に陥れられる私ではない。
 また私に悪意をぶつけるのであれば、今度は容赦しない。


 昼食の時間となり、一応リチャードが来ないか待ってみたが、やはり来なかった。
 私に付いている王家の護衛を見ると、私とは目を合わすことも出来ないほど困惑した表情で、可哀想なくらいだった。

 そうなのね。出会ったその日から濃密に愛を交わしていたのね。

 そんなことも知らず、リチャードを本気で好きだった私、マヌケなユリアナね…
 
 
 それから、わかったことがあった。
 中等部の時に、私に声を掛けてくれて仲良くなったエマ·ハンス子爵令嬢は、シャルルアンの手の者だった。

 何故か私の行く先に、必ず現れては交わっていたシャルルアンとリチャード。

 私の居場所を教えていたのは、エマだった。

 影を潜入させて良かったが、初めてできた友達だと思っていたので、これは本当にショックだった。

 それでも私は、調べ物がある時や時間がある時は図書館に行ったし、以前と同じように行動した。

 するとやはり、シャルルアンとリチャードは現れた。
 そして案の定、猿のように盛っていた。

 その度に前回と同じように、自分に結界魔法を何重にも掛け、その場から離れた。
 影が驚くような場所から現れ、私をこっそり違う場所に移動させてくれたりもした。
 
 いつも離れて私を見守っているジュリには、私が消えたことを影から伝えてもらっていた。

 このまま、またリチャードからの連絡が途絶えて、誕生日が来るかと思っていたが、なぜか時々手紙や花が届いたりした。

 お茶会に行けなくてすまなかった、孤児院に一緒に行けなくてすまなかったと、花と一緒に謝罪の手紙が届いた。

 まるっきり前回と同じではない展開ではあるが、やはり誕生日が近付くと連絡は途絶えた。

 それなら私のする事は決まった。
 



 




 
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