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59.闇魔術の行く方
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闇魔術を掛けられた日は、この日だ。
あの時、地下牢でシャルルアンが言ったのだから。
私は、その時のことをお兄様に詳しく説明した。
あの時お兄様は、国中を調べて私を治そうとしてくれていた。結局は闇魔術だとわかり絶望し、その後私は寝たきりとなり、冤罪で処刑された。
「その時俺はライナルトに会いに行ってたんだな?隣国トルランは魔法大国だ。闇魔術についてもわかるかも知れない」
そう言って、お兄様はすぐにトルラン国へ出発した。
すると、ライナルト殿下から決定的な話を聞き、殿下と一緒に戻って来たのだ。
そしてライナルト殿下から話を聞くと、500年前に粛清された一族の屋敷から、本のようなものを持ち出した男がいた。
その男は字が読めないからよくわからないけど、価値のあるものだと酒場で話していたらしい。
しかし、禁忌の魔法である闇魔術を口にすることさえ憚られるトルランでは、国境に近いその屋敷は、昔から闇魔術の家だと知られていた。
その屋敷での出来事を、面白可笑しく話すその男を、酒場の店主が騎士団に通報した。
そして、カイザル国から留学生として滞在しているライナルトにも報告があった。
自白魔法を使い、その男に持ち出したものを聞いたが、すでに自分の雇い主に渡した後だった。
「ユリアナ嬢、それがゴルドー伯爵家なんだ。ナイジェルから聞いたよ、リチャードがそのゴルドー伯爵令嬢と不貞をはたらいているそうだね… 弟が不義理をして本当に申し訳ない」
ライナルト殿下は、深々と頭を下げた。
「殿下、頭を上げてください。殿下が私に謝ることではありません。私は、リチャード様がそのような方だったと、見極めることも出来ませんし、不貞をやめて欲しいとも言えません」
ライナルト様、謝らせてしまって、そして、巻き込んでしまってごめんなさい。私はアイツらを許す気はありません。
「王家から、婚約解消の話しが出るまでは、私はリチャード様の婚約者ですので、このまま少し様子を見ていたいのです」
あの二人が、何をするかわかっていますし、私は前回の私ではありませんから、ご心配ありません。
「ユリアナ嬢、それではこれからも辛い思いをするのではないか?もしユリアナ嬢が望むなら、私から婚約解消に向けて父上に相談してみるが、どうかな?」
ここでライナルト殿下の口添えで、婚約解消になってしまったら、アイツらを痛い目に合わすことができなくなってしまいます。
「殿下、ありがとうございます。ではその時がきたら、殿下にお願いしたいと思います。それと、殿下にお願いがあります。その闇魔術なのですが、さすがに国民も、私も、聖人とはいえ闇魔術を掛けられては、為す術がありません。なので、殿下の権限で回収していただければと思います」
闇魔術は、掛ける方法と解術を対にしておかなければならない事になっている、そう教えてくれたのはお兄様だ。
「ああ、もちろんだ。こんなことが噂にでも出回ったら、大変なことになる。何のために粛清したのか、王家の責任も追求されることになるからね。
ルイ師団長にも秘密裏に伝えておくよ」
ライナルト殿下は、
「聖人である貴女は我が国にとって最も大切な人だ。貴女が傷付かないよう、いつでも手を差し伸べる準備をしているよ」
と言って帰っていった。
同じ兄弟でも、こうも違うのね…。
でも誕生日の前日にこの話しを聞けたのは朗報だわ。
ライナルト殿下も信用できそうな方だし、私自身を犠牲にするこの方法も、私の体力の消耗が大きくなる前に片付きそうね。
「ユリアナ、ギリギリで間に合って良かったね。でもやめても良いんだよ?あまりにもリスクが大きい気がするよ、お兄様は心配だよ?」
前回、私の人生が大きく変わった誕生日。
今回この誕生日までに、万が一リチャードが改心し、シャルルアンが私に闇魔術を掛けようとしなければ、この方法は避けようと思っていた。
だけど、リチャードは結局シャルルアンとの行為に溺れ、私を蔑ろにしていた。
そして、シャルルアンが闇魔術を手に入れた経緯も知ることが出来た。
あの女は今回も躊躇なく、私に禁忌の魔法を使うだろう。
私は前回、闇魔術によって魔力を奪われ、老婆のように身体が衰弱した恐怖を覚えている。
しかし、今回も闇魔術を掛けられることにしたのだ。
幸い、お兄様のお陰で、ライナルト殿下の協力も得られる事になった。
これは私にとってかなりの安心材料だ。
これで思う存分アイツらに、私の受けた苦しみを返してあげられる。
「お兄様、私はされたことは、きちんとお返ししなければならないと思います。でも明日、万が一あの方たちが、思いとどまってくれたらと、期待もしています」
「そうだね、大丈夫だよユリアナ。明日、何があっても必ず俺が助ける。ユリアナの判断で思うようにやってごらん?そして、明日は家族みんなでお前の誕生日を祝うからね」
お兄様は私を優しく抱き締めてくれた。
そしてその日、リチャードから手紙が届いた。
あの日、あの時の、個室のあるレストランに来るようにと。
あの時、地下牢でシャルルアンが言ったのだから。
私は、その時のことをお兄様に詳しく説明した。
あの時お兄様は、国中を調べて私を治そうとしてくれていた。結局は闇魔術だとわかり絶望し、その後私は寝たきりとなり、冤罪で処刑された。
「その時俺はライナルトに会いに行ってたんだな?隣国トルランは魔法大国だ。闇魔術についてもわかるかも知れない」
そう言って、お兄様はすぐにトルラン国へ出発した。
すると、ライナルト殿下から決定的な話を聞き、殿下と一緒に戻って来たのだ。
そしてライナルト殿下から話を聞くと、500年前に粛清された一族の屋敷から、本のようなものを持ち出した男がいた。
その男は字が読めないからよくわからないけど、価値のあるものだと酒場で話していたらしい。
しかし、禁忌の魔法である闇魔術を口にすることさえ憚られるトルランでは、国境に近いその屋敷は、昔から闇魔術の家だと知られていた。
その屋敷での出来事を、面白可笑しく話すその男を、酒場の店主が騎士団に通報した。
そして、カイザル国から留学生として滞在しているライナルトにも報告があった。
自白魔法を使い、その男に持ち出したものを聞いたが、すでに自分の雇い主に渡した後だった。
「ユリアナ嬢、それがゴルドー伯爵家なんだ。ナイジェルから聞いたよ、リチャードがそのゴルドー伯爵令嬢と不貞をはたらいているそうだね… 弟が不義理をして本当に申し訳ない」
ライナルト殿下は、深々と頭を下げた。
「殿下、頭を上げてください。殿下が私に謝ることではありません。私は、リチャード様がそのような方だったと、見極めることも出来ませんし、不貞をやめて欲しいとも言えません」
ライナルト様、謝らせてしまって、そして、巻き込んでしまってごめんなさい。私はアイツらを許す気はありません。
「王家から、婚約解消の話しが出るまでは、私はリチャード様の婚約者ですので、このまま少し様子を見ていたいのです」
あの二人が、何をするかわかっていますし、私は前回の私ではありませんから、ご心配ありません。
「ユリアナ嬢、それではこれからも辛い思いをするのではないか?もしユリアナ嬢が望むなら、私から婚約解消に向けて父上に相談してみるが、どうかな?」
ここでライナルト殿下の口添えで、婚約解消になってしまったら、アイツらを痛い目に合わすことができなくなってしまいます。
「殿下、ありがとうございます。ではその時がきたら、殿下にお願いしたいと思います。それと、殿下にお願いがあります。その闇魔術なのですが、さすがに国民も、私も、聖人とはいえ闇魔術を掛けられては、為す術がありません。なので、殿下の権限で回収していただければと思います」
闇魔術は、掛ける方法と解術を対にしておかなければならない事になっている、そう教えてくれたのはお兄様だ。
「ああ、もちろんだ。こんなことが噂にでも出回ったら、大変なことになる。何のために粛清したのか、王家の責任も追求されることになるからね。
ルイ師団長にも秘密裏に伝えておくよ」
ライナルト殿下は、
「聖人である貴女は我が国にとって最も大切な人だ。貴女が傷付かないよう、いつでも手を差し伸べる準備をしているよ」
と言って帰っていった。
同じ兄弟でも、こうも違うのね…。
でも誕生日の前日にこの話しを聞けたのは朗報だわ。
ライナルト殿下も信用できそうな方だし、私自身を犠牲にするこの方法も、私の体力の消耗が大きくなる前に片付きそうね。
「ユリアナ、ギリギリで間に合って良かったね。でもやめても良いんだよ?あまりにもリスクが大きい気がするよ、お兄様は心配だよ?」
前回、私の人生が大きく変わった誕生日。
今回この誕生日までに、万が一リチャードが改心し、シャルルアンが私に闇魔術を掛けようとしなければ、この方法は避けようと思っていた。
だけど、リチャードは結局シャルルアンとの行為に溺れ、私を蔑ろにしていた。
そして、シャルルアンが闇魔術を手に入れた経緯も知ることが出来た。
あの女は今回も躊躇なく、私に禁忌の魔法を使うだろう。
私は前回、闇魔術によって魔力を奪われ、老婆のように身体が衰弱した恐怖を覚えている。
しかし、今回も闇魔術を掛けられることにしたのだ。
幸い、お兄様のお陰で、ライナルト殿下の協力も得られる事になった。
これは私にとってかなりの安心材料だ。
これで思う存分アイツらに、私の受けた苦しみを返してあげられる。
「お兄様、私はされたことは、きちんとお返ししなければならないと思います。でも明日、万が一あの方たちが、思いとどまってくれたらと、期待もしています」
「そうだね、大丈夫だよユリアナ。明日、何があっても必ず俺が助ける。ユリアナの判断で思うようにやってごらん?そして、明日は家族みんなでお前の誕生日を祝うからね」
お兄様は私を優しく抱き締めてくれた。
そしてその日、リチャードから手紙が届いた。
あの日、あの時の、個室のあるレストランに来るようにと。
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