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72.普通の生活
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私はあの夜会の日からとても体調が良く、なんでもできる気がした。
「ユリアナ、無理はダメだよ?ルイ師団長が言ってただろ?一月くらいは大人しくしてろって」
お兄様はますます過保護になっているような気がするが、今回はお兄様がいなかったら、私はまたあの二人に陥れられていたかもしれない。
前回のお兄様は、トルラン国から帰国直後に、侯爵家に奇襲のように現れた第二騎士団に斬り捨てられた。
でも今は、とても元気でいてくれて、私の心配をしてくれる。
こんな幸せなことはない。
「お兄様、大好きよ!ずっと私の大好きなお兄様でいてくださいね!」
「えっ!?あっ?えっ?ユリアナ?あ、ああ!俺もユリアナが大好きだぞ?」
私がお兄様にギュッと抱き着くと、お兄様も私を優しく抱き締めてくれた。
久しぶりのお兄様の匂いに、少し泣きそうになった。
でもそんな僅かなお兄様との時間も、ジュリがすぐ間に入ってくる。
私をお兄様から引き離す。そして、私の顔をギュッと自分の胸に押し付ける。
「もう!ジュリ!苦しいったら!」
わたしが怒ると、私をじっーと見つめ少し悲しそうな顔をする。
私が言い過ぎたかしら、と思うと同時にニヤッと笑うのだ。
「ジュリアン、そう言えば父上が、お前の婚約者を見繕っていたぞ?希望があれば言っておけよ?」
お兄様はそう言い残して出ていった。
え?ジュリに…婚約者…?
そうよね、そう言えばジュリだってそんな歳だものね。遅いくらいかも知れないわ。ジュリだっていつかは結婚するわよね。
なにかで胸の奥が苦しくなった。
なにかで塞がれたような苦しさ…なんだろう。
ジュリが、
「俺は一生お嬢様のそばにいます。そう誓いました」
といった言葉に、すごく安心した。
私、ジュリが好きなの…?
物心ついた時からずっと一緒にいて、一緒にいることが当たり前だった。
だって、お兄様と何が違うの?
こんなにずっと一緒にいたら、家族と同じよ…?
ジュリが私を見ていた。
いつもの優しい黄金色の瞳を輝かせて。
「ねぇジュリ、私のこと好き?」
ジュリは、驚くくらい顔が真っ赤になった。
その顔を隠そうと、腕や手をせわしなく顔に当てている。
えっ?ジュリが、ジュリが、動揺してる…?こんなに動揺しているジュリは初めて見た。
ジュリは私を横抱きに抱えた。
「ジュリ…!?」
そして、ソファーに座ると、私を横抱きに抱えたまま、いつまでも私を抱き締めて、私の頭に頬ずりをしていた。
これって…何?……わからない!
でも今まで、ジュリのことが、わかったこと無かったわ…
私は、自分の気持ちも、ジュリの気持ちも、まだよくわからなかった。
でも、ずっとジュリとこのままでいたいと思った。
そのまま、聖人の仕事をしながら、平和な日常を過ごした。
健康的で、人々のために、誰にもなんにも邪魔されずに、病人を治し、魔物の討伐、浄化をしていた。
そして、シャルルアンが未開拓の地に行ってから半年が経ち、シャルルアンの教育の成果を見る日になった。
この日は、お父様と私、その護衛に私兵長とジュリ、それとライナルト殿下が護衛騎士を伴って、未開拓の地へ向かった。
「ゴルドー、半年経った。貴様の娘の成果を見せてもらおうか?もちろん教育はしたんだよな?」
「は、はい…、もちろんで、ございます」
ゴルドーは、最後に見た時よりもかなりやつれており、顔には紫色のアザがあった。
「娘をここに連れてきて、挨拶をさせろ」
「わ、わかりました…」
私は、隣の部屋で待機し、扉を少し開けて、シャルルアンが来るのを待った。
シャルルアンが部屋に入った途端、私を見て暴れられては困るのだ。
少しすると、戸の開く音がして、シャルルアンが入って来た。
「ふぉ、フォンベルト、こ、侯爵様に、ご挨拶、申し上げ、上げます。本日は、わ、わたくしのために、このような所まで、足を運んでくれて…?ありがとうございます」
そして、ぎごちなく両手でスカートを摘み、頭だけをペコッと下げた。
魔物のような形相で、喚き散らしていた頃とは違い、所作はめちゃくちゃで言葉もおかしいが、なんとか取り繕ってきたようだ。
半年でこれだけなのかとも思うが、地下牢で汚い言葉を使い、感情を抑えることもできない状態からすれば、成長したとも言える。
さて、私に対しても、同様にできるかしら?
私はまた、華美にならない程度の品の良いドレスを着て、肌も髪も艶々に仕上げて来た。
「ごきげんよう、シャルルアン、ここでの生活はいかがかしら?」
それまで引きつってはいたが、穏やかな表情を浮かべていたシャルルアンが、またもや化け物に戻った。
私の前にジュリが出てきた。
私を見た途端、激しく顔を歪めると、私に飛び掛かろうとする勢いで、
「このクソ女ぁぁーっ!!殺してやるーっ!!」
と叫んだ。
隣に立っていたゴルドーとその夫人が、
「この、…馬鹿がっ!!」
「このバカ娘、…お前のせいでっ!お前のせいでーっ!!」
と、シャルルアンを取り押さえ、夫人はシャルルアンの首を締めていた。
ライナルト殿下が、護衛に指示し、直ぐ様三人を引き離した。
「ゴルドー、残念だよ?半年も猶予をやったのに、この化け物はまだ人間になれないのか?
お前らはどれだけこの化け物を甘やかしたんだ?
この状況になっても、反省もできなければ、謝罪も…… はぁ、無理か、魔物が人にはなれないのと同じだな。ゴルドー、発言を許す」
何か物言いたげなゴルドーに、お父様が発言させる。
「侯爵様、大変申し訳ありません…!あと半年、あと半年、なんとか学ばせます…!そのチャンスをどうかお許しいただきたい、です」
お父様は鼻で笑うと、
「お前は本当になんて愚かな奴なんだ?お前がまず謝るのは、この化け物がたった今殺意を向けた、我が娘にだ」
シャルルアンは、ライナルト殿下の護衛騎士に羽交い締めにされているが、顔は私に向けて睨みつけている。
まぁ無理よね…お父様が言うように、魔物が人にはならないもの。
私はジュリの前に出て、シャルルアンの顔を平手で思い切り叩いた。
「…っ!い、痛いじゃないかっ、このクソ女ぁー!!」
「あまり前でしょ?叩いのだから?当たり前のことを、大声で言わなくてもわかるわ。
お前は自分の親の手が無くなっていることも、両耳が無くなっていることも、なぜかわからないの?
いつまで、こんな愚かなことを続けるの?
言ったわよね、マナーが良くなればここから出られるって。少し我慢すれば…って、言ったじゃない。
そのチャンスを、自分で逃したのよ。いつまで経っても愚かね、呆れるわ」
ジュリが、シャルルアンの頬を叩いた私の手を、自分のハンカチで拭き出した。
「ありがとう、ジュリ。お父様、帰りましょうか?」
「ああ、そうだね、ユリアナ。こんなところにいたら、美しいお前が穢れる」
ライナルト殿下は、間近で見たシャルルアンに目を見開き、珍しいものでも見るかのように観察していた。
そして、リチャードの様子を管理者に聞いて笑っていた。
「アイツは本物の馬鹿だ。一生ここでしか役に立たないな。それも怪しいか…」
そして、リチャードとゴルドー家族が勝手に自死しないよう、ここにコイツらを移した際に付けていた、王家の影を交代させた。
ライナルト殿下の今回の同行は、それが一番の目的だった。
お父様は、また半年後に来ると管理者に伝えて、皆でまた王都に戻った。
あの女には伝えた。
お前は教養がない哀れな女だ、そこを学べばこの地獄から出られる。
その大きなチャンスを理解できない者に、きちんと理解させず、また同じことを繰り返した。
この家族には無理だということは、最初からわかっていた。
あの女は、こうなった状況をすべて私のせいだと思っている。
なのでお父様は、
「ユリアナ、お前はどんな罰か知らないと、アイツらに言うんだよ」
と言った。
そして、
「お前の言う通りに罰を与える準備をするが、お父様も怒っているからね、アイツらの罰を少し足すけど、この罰を考えたのは、お父様だと言うんだ。アイツらが死ぬ時に思い浮かべる顔は、私だ。アハハハ!」
悪人には恐怖の魔王だが、私のことは、命に代えても良いほど大切な娘だと言う通り、アイツらが絶命する時に、私を思い出すのは許せないと言っていた。
私はあの二人を許さない。
死に戻る前の時では、この世界を地獄に変えたのだ。
そして、あの女が、マナーを身につけられるわけがない。
わかっていての、条件だ。
自分のせいでこの状況になったと、後悔しながら家族で地獄に行けばいいのだ。
「ユリアナ、無理はダメだよ?ルイ師団長が言ってただろ?一月くらいは大人しくしてろって」
お兄様はますます過保護になっているような気がするが、今回はお兄様がいなかったら、私はまたあの二人に陥れられていたかもしれない。
前回のお兄様は、トルラン国から帰国直後に、侯爵家に奇襲のように現れた第二騎士団に斬り捨てられた。
でも今は、とても元気でいてくれて、私の心配をしてくれる。
こんな幸せなことはない。
「お兄様、大好きよ!ずっと私の大好きなお兄様でいてくださいね!」
「えっ!?あっ?えっ?ユリアナ?あ、ああ!俺もユリアナが大好きだぞ?」
私がお兄様にギュッと抱き着くと、お兄様も私を優しく抱き締めてくれた。
久しぶりのお兄様の匂いに、少し泣きそうになった。
でもそんな僅かなお兄様との時間も、ジュリがすぐ間に入ってくる。
私をお兄様から引き離す。そして、私の顔をギュッと自分の胸に押し付ける。
「もう!ジュリ!苦しいったら!」
わたしが怒ると、私をじっーと見つめ少し悲しそうな顔をする。
私が言い過ぎたかしら、と思うと同時にニヤッと笑うのだ。
「ジュリアン、そう言えば父上が、お前の婚約者を見繕っていたぞ?希望があれば言っておけよ?」
お兄様はそう言い残して出ていった。
え?ジュリに…婚約者…?
そうよね、そう言えばジュリだってそんな歳だものね。遅いくらいかも知れないわ。ジュリだっていつかは結婚するわよね。
なにかで胸の奥が苦しくなった。
なにかで塞がれたような苦しさ…なんだろう。
ジュリが、
「俺は一生お嬢様のそばにいます。そう誓いました」
といった言葉に、すごく安心した。
私、ジュリが好きなの…?
物心ついた時からずっと一緒にいて、一緒にいることが当たり前だった。
だって、お兄様と何が違うの?
こんなにずっと一緒にいたら、家族と同じよ…?
ジュリが私を見ていた。
いつもの優しい黄金色の瞳を輝かせて。
「ねぇジュリ、私のこと好き?」
ジュリは、驚くくらい顔が真っ赤になった。
その顔を隠そうと、腕や手をせわしなく顔に当てている。
えっ?ジュリが、ジュリが、動揺してる…?こんなに動揺しているジュリは初めて見た。
ジュリは私を横抱きに抱えた。
「ジュリ…!?」
そして、ソファーに座ると、私を横抱きに抱えたまま、いつまでも私を抱き締めて、私の頭に頬ずりをしていた。
これって…何?……わからない!
でも今まで、ジュリのことが、わかったこと無かったわ…
私は、自分の気持ちも、ジュリの気持ちも、まだよくわからなかった。
でも、ずっとジュリとこのままでいたいと思った。
そのまま、聖人の仕事をしながら、平和な日常を過ごした。
健康的で、人々のために、誰にもなんにも邪魔されずに、病人を治し、魔物の討伐、浄化をしていた。
そして、シャルルアンが未開拓の地に行ってから半年が経ち、シャルルアンの教育の成果を見る日になった。
この日は、お父様と私、その護衛に私兵長とジュリ、それとライナルト殿下が護衛騎士を伴って、未開拓の地へ向かった。
「ゴルドー、半年経った。貴様の娘の成果を見せてもらおうか?もちろん教育はしたんだよな?」
「は、はい…、もちろんで、ございます」
ゴルドーは、最後に見た時よりもかなりやつれており、顔には紫色のアザがあった。
「娘をここに連れてきて、挨拶をさせろ」
「わ、わかりました…」
私は、隣の部屋で待機し、扉を少し開けて、シャルルアンが来るのを待った。
シャルルアンが部屋に入った途端、私を見て暴れられては困るのだ。
少しすると、戸の開く音がして、シャルルアンが入って来た。
「ふぉ、フォンベルト、こ、侯爵様に、ご挨拶、申し上げ、上げます。本日は、わ、わたくしのために、このような所まで、足を運んでくれて…?ありがとうございます」
そして、ぎごちなく両手でスカートを摘み、頭だけをペコッと下げた。
魔物のような形相で、喚き散らしていた頃とは違い、所作はめちゃくちゃで言葉もおかしいが、なんとか取り繕ってきたようだ。
半年でこれだけなのかとも思うが、地下牢で汚い言葉を使い、感情を抑えることもできない状態からすれば、成長したとも言える。
さて、私に対しても、同様にできるかしら?
私はまた、華美にならない程度の品の良いドレスを着て、肌も髪も艶々に仕上げて来た。
「ごきげんよう、シャルルアン、ここでの生活はいかがかしら?」
それまで引きつってはいたが、穏やかな表情を浮かべていたシャルルアンが、またもや化け物に戻った。
私の前にジュリが出てきた。
私を見た途端、激しく顔を歪めると、私に飛び掛かろうとする勢いで、
「このクソ女ぁぁーっ!!殺してやるーっ!!」
と叫んだ。
隣に立っていたゴルドーとその夫人が、
「この、…馬鹿がっ!!」
「このバカ娘、…お前のせいでっ!お前のせいでーっ!!」
と、シャルルアンを取り押さえ、夫人はシャルルアンの首を締めていた。
ライナルト殿下が、護衛に指示し、直ぐ様三人を引き離した。
「ゴルドー、残念だよ?半年も猶予をやったのに、この化け物はまだ人間になれないのか?
お前らはどれだけこの化け物を甘やかしたんだ?
この状況になっても、反省もできなければ、謝罪も…… はぁ、無理か、魔物が人にはなれないのと同じだな。ゴルドー、発言を許す」
何か物言いたげなゴルドーに、お父様が発言させる。
「侯爵様、大変申し訳ありません…!あと半年、あと半年、なんとか学ばせます…!そのチャンスをどうかお許しいただきたい、です」
お父様は鼻で笑うと、
「お前は本当になんて愚かな奴なんだ?お前がまず謝るのは、この化け物がたった今殺意を向けた、我が娘にだ」
シャルルアンは、ライナルト殿下の護衛騎士に羽交い締めにされているが、顔は私に向けて睨みつけている。
まぁ無理よね…お父様が言うように、魔物が人にはならないもの。
私はジュリの前に出て、シャルルアンの顔を平手で思い切り叩いた。
「…っ!い、痛いじゃないかっ、このクソ女ぁー!!」
「あまり前でしょ?叩いのだから?当たり前のことを、大声で言わなくてもわかるわ。
お前は自分の親の手が無くなっていることも、両耳が無くなっていることも、なぜかわからないの?
いつまで、こんな愚かなことを続けるの?
言ったわよね、マナーが良くなればここから出られるって。少し我慢すれば…って、言ったじゃない。
そのチャンスを、自分で逃したのよ。いつまで経っても愚かね、呆れるわ」
ジュリが、シャルルアンの頬を叩いた私の手を、自分のハンカチで拭き出した。
「ありがとう、ジュリ。お父様、帰りましょうか?」
「ああ、そうだね、ユリアナ。こんなところにいたら、美しいお前が穢れる」
ライナルト殿下は、間近で見たシャルルアンに目を見開き、珍しいものでも見るかのように観察していた。
そして、リチャードの様子を管理者に聞いて笑っていた。
「アイツは本物の馬鹿だ。一生ここでしか役に立たないな。それも怪しいか…」
そして、リチャードとゴルドー家族が勝手に自死しないよう、ここにコイツらを移した際に付けていた、王家の影を交代させた。
ライナルト殿下の今回の同行は、それが一番の目的だった。
お父様は、また半年後に来ると管理者に伝えて、皆でまた王都に戻った。
あの女には伝えた。
お前は教養がない哀れな女だ、そこを学べばこの地獄から出られる。
その大きなチャンスを理解できない者に、きちんと理解させず、また同じことを繰り返した。
この家族には無理だということは、最初からわかっていた。
あの女は、こうなった状況をすべて私のせいだと思っている。
なのでお父様は、
「ユリアナ、お前はどんな罰か知らないと、アイツらに言うんだよ」
と言った。
そして、
「お前の言う通りに罰を与える準備をするが、お父様も怒っているからね、アイツらの罰を少し足すけど、この罰を考えたのは、お父様だと言うんだ。アイツらが死ぬ時に思い浮かべる顔は、私だ。アハハハ!」
悪人には恐怖の魔王だが、私のことは、命に代えても良いほど大切な娘だと言う通り、アイツらが絶命する時に、私を思い出すのは許せないと言っていた。
私はあの二人を許さない。
死に戻る前の時では、この世界を地獄に変えたのだ。
そして、あの女が、マナーを身につけられるわけがない。
わかっていての、条件だ。
自分のせいでこの状況になったと、後悔しながら家族で地獄に行けばいいのだ。
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