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79.罪を償う思い
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「ユリアナ様、ナナカと調べたのですが、西の森と南の森にある、神が宿ると言われている巨木があります。どうやら、その巨木に呪いの魔術が掛けられているようなのです」
我が国の東西南北の土地に、神が宿るとされている巨木があった。
北の巨木は、雪深い山奥にあり、それを実際に見たものはいないくらい、人がその雪山に入るには、命がいくつあっても足りない場所だった。
東の巨木は、ほぼ隣国トルランとの国境近くにあった。
そこにはその巨木を信仰し、その巨木を取り囲むように信者たちが立てた見張り小屋があり、うっかり近付けばその信者たちに捕まり、生きては帰れないという噂まであった。
ただ、近付きさえしなければ、その巨木を神として守るだけの信者なので、トルラン国でもカイザル国でも、敢えて干渉することはなかった。
その他の、カイザル国の西と南にある巨木。魔物の発生はどうやらその巨木からのようだった。
「ユリアナ様、あの闇魔術の書に、魔物を発生させる呪いもありました。私はその術者ではありませんが、その解術を試してみたいのです」
過去の闇魔術を受け継ぐ一族が、何故その巨木に呪いを掛けたのか、今になってはその理由を知る術もない。
「でもナナカ?私は貴女が危険な目に遭うのなら、それは反対よ?貴女が何か少しでも傷付くようなことになるのであれば、賛成出来ない」
ナナカはお腹に子を授かっていた。
あと半年もすれば出産なのだ。
「それがユリアナ様、子を授かってから、私の魔力がますます強くなっているのです。この力は、きっと解術に使えます。恐らくこの、お腹にこの子がいるこのタイミングでしか、解術は出来ない気がするのです」
なんてこと… 女神様はいつまでこの子に試練を与えるの…
ナナカの横に座り、ナナカの手を握っているルイ師団長も、眉間にシワを刻み私を見ている。
「レオンハルト国王陛下はなんと?」
私はナナカの決断に頷くことは出来ない。
ルイ師団長が、
「魔物の発生が無くなれば、国民は安心して暮らせるだろうと。しかし、その国民全員のために、ナナカ一人を犠牲にすることは出来ないと仰いました」
良かった、レオンハルト様、ナナカを犠牲にする判断をしないでくれた…。
「私も国王陛下と同じよ?ナナカ、貴女を危険な目に遭わせることは出来ない。もし魔物が湧く危険な状況の中、解術が上手くいけば良いけど、確実に上手くいくとは限らないでしょ?その時、貴女に何かあったら…、私は恐ろしくて考えたくもないわ」
「ユリアナ様、ユリアナ様も魔物の討伐で最前線で闘っておられます。ユリアナ様が授かった力を、国民を、この国を守るために、常にその役割を果たしていらっしゃる。私も、この力を役立てたいのです。
私は本来であれば、このように生きて、子を授かる幸せを与えられるような人間ではないのです」
「「ナナカ…」」
私とルイ師団長が、同時に声を上げた。
「すみません…。せっかくやり直す機会をいただいたこの命を、粗末にするつもりはありません。でも、でも…私の中の罪悪感が消えないのです…。私も、私に与えられた役割を果たしたい。そして、心の底からこの子の誕生を喜んであげたい…。
勝手な私の事情で、ユリアナ様、ルイ様を、悩ませて、戸惑わせて申し訳ありません…」
ナナカは、まだ苦しんでいた。
ルイ師団長と結婚し、二人で魔力について研究を進めていけばいく程、自分のしたことの恐ろしさを実感していた。
周りは皆、私のことを知らない。
私がこの国で最も尊い聖人ユリアナ様と、今、国王陛下となられたレオンハルト様に、恐ろしい呪いを掛けたことを。
私はやっぱり許されてはいけなかった。このようにルイ様に愛されるような人間ではない。
子を授かったとわかった時から、その思いは日に日に強くなっていった。
この子になんて言うの?お母さんは本当は呪いを使った悪い人なの、本当は生きていてはいけない人なの。
あまりにも、このお腹で着実に育っていっているこの子が、哀れに思えた。
きっといつか、私が呪いの魔術を使ったことが知られた時、この子はどうなるの?私と共に粛清されるの…?
そんな時、お腹が大きくなる毎に、魔力がみなぎる感覚がした。
魔物すべてを滅することができるのではと思うくらいの魔力だ。
その事に、いつも私のそばにいてくれるルイ様が気が付いた。
「ナナカ、体調はどうだい?無理をしてはいけないよ?愛するお前に何かあったら、私は生きていけないからね?」
そう言って笑うルイ様の優しい瞳を見たら、もう耐えられなかった。
泣き続け、泣き疲れて眠り、その翌日、ルイ様に打ち明けた。
私は償いをしたい、そうしないと、この子に私がお母さんだと言えない。
なぜか今なら呪いを解術できる気がする。これは間違いなく成功するという確信もある。だから、お願い、私を巨木のある森に連れて行って欲しい。
ルイ様は、出来ないと言った。
巨木に近付けば近付く程、魔物の数も種類も増える。
そんな中にナナカを連れていけない。何かあれば、俺は家族を一度に二人も失う、そんな残酷な状況は、想像だけでも耐えられない。
お願い、わかってくださいと、泣きながら何度もお願いした。でも、ルイ様が理解してくれることは無かった。
それなら、ユリアナ様と国王レオンハルト様を呪った私が、私の都合であって、勝手ではあることを承知でお願いしたいと、そうして、まずは国王陛下にお願いしたが、良いとは言ってくれなかった。
ユリアナ様にも承諾してもらえなかった。
私は、私は、このまま、この子を産むの…?こんな私が産んで良いの…?
それでは私は、ただ生かされただけだ。何も成し遂げることもできず、過去に呪いを使ったのに、ただ生かされただけの女……
「俺が行きますよ。俺が一緒なら大丈夫だ」
ジュリアン様のこの言葉を、私は一生忘れないと思った。
我が国の東西南北の土地に、神が宿るとされている巨木があった。
北の巨木は、雪深い山奥にあり、それを実際に見たものはいないくらい、人がその雪山に入るには、命がいくつあっても足りない場所だった。
東の巨木は、ほぼ隣国トルランとの国境近くにあった。
そこにはその巨木を信仰し、その巨木を取り囲むように信者たちが立てた見張り小屋があり、うっかり近付けばその信者たちに捕まり、生きては帰れないという噂まであった。
ただ、近付きさえしなければ、その巨木を神として守るだけの信者なので、トルラン国でもカイザル国でも、敢えて干渉することはなかった。
その他の、カイザル国の西と南にある巨木。魔物の発生はどうやらその巨木からのようだった。
「ユリアナ様、あの闇魔術の書に、魔物を発生させる呪いもありました。私はその術者ではありませんが、その解術を試してみたいのです」
過去の闇魔術を受け継ぐ一族が、何故その巨木に呪いを掛けたのか、今になってはその理由を知る術もない。
「でもナナカ?私は貴女が危険な目に遭うのなら、それは反対よ?貴女が何か少しでも傷付くようなことになるのであれば、賛成出来ない」
ナナカはお腹に子を授かっていた。
あと半年もすれば出産なのだ。
「それがユリアナ様、子を授かってから、私の魔力がますます強くなっているのです。この力は、きっと解術に使えます。恐らくこの、お腹にこの子がいるこのタイミングでしか、解術は出来ない気がするのです」
なんてこと… 女神様はいつまでこの子に試練を与えるの…
ナナカの横に座り、ナナカの手を握っているルイ師団長も、眉間にシワを刻み私を見ている。
「レオンハルト国王陛下はなんと?」
私はナナカの決断に頷くことは出来ない。
ルイ師団長が、
「魔物の発生が無くなれば、国民は安心して暮らせるだろうと。しかし、その国民全員のために、ナナカ一人を犠牲にすることは出来ないと仰いました」
良かった、レオンハルト様、ナナカを犠牲にする判断をしないでくれた…。
「私も国王陛下と同じよ?ナナカ、貴女を危険な目に遭わせることは出来ない。もし魔物が湧く危険な状況の中、解術が上手くいけば良いけど、確実に上手くいくとは限らないでしょ?その時、貴女に何かあったら…、私は恐ろしくて考えたくもないわ」
「ユリアナ様、ユリアナ様も魔物の討伐で最前線で闘っておられます。ユリアナ様が授かった力を、国民を、この国を守るために、常にその役割を果たしていらっしゃる。私も、この力を役立てたいのです。
私は本来であれば、このように生きて、子を授かる幸せを与えられるような人間ではないのです」
「「ナナカ…」」
私とルイ師団長が、同時に声を上げた。
「すみません…。せっかくやり直す機会をいただいたこの命を、粗末にするつもりはありません。でも、でも…私の中の罪悪感が消えないのです…。私も、私に与えられた役割を果たしたい。そして、心の底からこの子の誕生を喜んであげたい…。
勝手な私の事情で、ユリアナ様、ルイ様を、悩ませて、戸惑わせて申し訳ありません…」
ナナカは、まだ苦しんでいた。
ルイ師団長と結婚し、二人で魔力について研究を進めていけばいく程、自分のしたことの恐ろしさを実感していた。
周りは皆、私のことを知らない。
私がこの国で最も尊い聖人ユリアナ様と、今、国王陛下となられたレオンハルト様に、恐ろしい呪いを掛けたことを。
私はやっぱり許されてはいけなかった。このようにルイ様に愛されるような人間ではない。
子を授かったとわかった時から、その思いは日に日に強くなっていった。
この子になんて言うの?お母さんは本当は呪いを使った悪い人なの、本当は生きていてはいけない人なの。
あまりにも、このお腹で着実に育っていっているこの子が、哀れに思えた。
きっといつか、私が呪いの魔術を使ったことが知られた時、この子はどうなるの?私と共に粛清されるの…?
そんな時、お腹が大きくなる毎に、魔力がみなぎる感覚がした。
魔物すべてを滅することができるのではと思うくらいの魔力だ。
その事に、いつも私のそばにいてくれるルイ様が気が付いた。
「ナナカ、体調はどうだい?無理をしてはいけないよ?愛するお前に何かあったら、私は生きていけないからね?」
そう言って笑うルイ様の優しい瞳を見たら、もう耐えられなかった。
泣き続け、泣き疲れて眠り、その翌日、ルイ様に打ち明けた。
私は償いをしたい、そうしないと、この子に私がお母さんだと言えない。
なぜか今なら呪いを解術できる気がする。これは間違いなく成功するという確信もある。だから、お願い、私を巨木のある森に連れて行って欲しい。
ルイ様は、出来ないと言った。
巨木に近付けば近付く程、魔物の数も種類も増える。
そんな中にナナカを連れていけない。何かあれば、俺は家族を一度に二人も失う、そんな残酷な状況は、想像だけでも耐えられない。
お願い、わかってくださいと、泣きながら何度もお願いした。でも、ルイ様が理解してくれることは無かった。
それなら、ユリアナ様と国王レオンハルト様を呪った私が、私の都合であって、勝手ではあることを承知でお願いしたいと、そうして、まずは国王陛下にお願いしたが、良いとは言ってくれなかった。
ユリアナ様にも承諾してもらえなかった。
私は、私は、このまま、この子を産むの…?こんな私が産んで良いの…?
それでは私は、ただ生かされただけだ。何も成し遂げることもできず、過去に呪いを使ったのに、ただ生かされただけの女……
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