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第十幕 いざ、甲斐へ!
二 いざ、甲斐へ!
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「兼続さんは愛を知っているのですか!?」
「はい。俺は愛を間近で見ておりましたから」
期待を込めて聞いてみると、やっぱり兼続さんは愛を知っていた。
でも、間近で見ていたっていったい……?
兼続さんの表情はとても辛そうで、何故そんな辛そうな顔をするのか今の私にはわからなかった。
その時、幸村が口を開いた。
「私は愛がわからない。だから御館様のお気持ちもわかってあげられない……」
幸村は先程兼続さんがしたように私の手を両手で包み込むと、愛を教えてほしいと私に頼んだ。
そして今度は私と幸村の間に兼続さんが入り、幸村へと視線を向けた。
「幸村に愛など教えてもわからんだろう」
「なんだと!私にもそれくらい……!」
「無理だな、少なくとも女の手を握ったくらいで顔を赤くするやつなどな」
「っ……!」
兼続さんの言葉で幸村へと視線を向けると、顔が赤くなっているのがわかる。
もしかして幸村も秀吉さんと同じで女性とあまり話したことがないのかもしれない。
安土城にいる皆で、兼続さんのように愛を知っている人や、幸村のように愛を知りたいと言ってくれる人はいなかったから、何だか新鮮に感じる。
「大丈夫ですよ!幸村にも愛を知ってもらいますから!」
「美弥……」
「幸村、そろそろ行かねば」
「そうだったな」
そう言い二人は私に一礼すると行ってしまった。
今から何かあるのだろうか?
それにしても、兼続さんの愛を間近で見ていたってという言葉と、幸村の、愛がわからないから信玄さんの気持ちがわかってあげられないって言う言葉の意味がまだわからない。
今日甲斐に来たばかりなのだから、一日で全部をわかろうとするのは無理なことなのだろうけど、安土城の皆の時とはやっぱり何かが違う気がする。
それが何なのかハッキリさせるためにも、今日から私は甲斐で頑張らなきゃいけない。
「甲斐に無事到着だね!」
「刻!」
「やぁ!今回愛を教える相手は難しいよ」
「どういうこと?」
「それは言えないよ。これは君が自分で知らなきゃいけないことだから」
私が自分で知らなければいけないことっていったい……。
4人の武将が言っていた言葉と何か関係があるのかもしれない。
「今武将達が軍義をしている、勿論信長を討つためのね」
幸村と兼続が慌てて部屋を出ていった理由はわかったけど、すでに軍義が進んでいるなら時間がない。
「そんなに心配しなくても大丈夫そうだよ。君がここにいる間は手を出さないさ、命を救った礼とやらをしっかりしてからだとおもうからね」
刻の言葉でほっと胸を撫で下ろすが、まず皆のことを知るにはどうすればいいのかわからずにいた。
愛を知ってもらうと話したとき、信玄さんと謙信さんは愛なんて下らなそうに笑っていた。
まずは幸村のことを知ってみよう。
幸村は愛を知りたいと言ってくれたから、でも、女性とあまり話すことがない幸村はすぐに顔を赤く染めてしまうみたいだし、まずは私に慣れてもらうところから頑張らないといけない。
「そんな難しい顔をすることはないよ!君ならきって大丈夫だから」
何でだろう、刻に大丈夫って言われると、本当にそんな気持ちになる。
人を知るのに時間なんて関係ない、今私にできることは、焦らずにみんなのことをしることなんだよね。
「ありがとう、刻」
刻は微笑むと再び姿を消してしまった。
「美弥、食事をお持ちしました」
襖越しに幸村の声が聞こえ返事をすると、膳を手にした幸村が中へと入ってきた。
「美弥のために、今日は甲斐の料理を作らせました」
「ありがとうございます。とても美味しそうですね!」
私の前に置かれた膳は、安土城での料理と違っていて、これが甲斐の料理なのだと食べるのが楽しみになった。
「幸村は食べないのですか?」
「私も自室で食します」
「なら、よければここで一緒に食べませんか?」
「っ、美弥と一緒に……」
何だか幸村は突然悩み出してしまったけど、一緒に食事をするなんて嫌だったのだろうか……。
「嫌なら無理しなくても大丈夫ですからね」
「嫌なんて!是非一緒に!」
「よかった!」
幸村は一度膳を取りに厨へと向かったのだけど、何故か戻ってきたときには兼続さんの姿もあった。
「俺も美弥さんと夕餉を食べたくて来てしまいました!」
「図々しいやつだ。誘っていただいたのは私だと言うのに」
「美弥さんの独り占めはよくないぞ?」
何だかんだ言い合いながらも3人で夕餉を食べることになったのだけど、何故か私を挟む形での位置となり、何だか食べにくさを感じてしまう。
「このお吸い物とても美味しいですね!」
「お口に合ってよかった。甲斐でとれた山菜等を入れた物になります」
甲斐や尾張、国によってこれほどまでに味が変わるものなんだと驚いてしまう。
尾張の料理は安土の厨で働く女中さん達に教えてもらったりしていたけど、尾張とはまた別の旨味が感じられる。
どの料理も美味しくて、あっという間に完食してしまった。
「私も甲斐の料理の作り方を知りたいのですが、厨へ行くことはできますか?」
「では明日、私が厨へ案内致しましょう」
幸村と明日の約束もし、二人も夕餉を食べ終わると自室へて戻ってしまった。
甲斐に来て初めての夜、窓を開けると空にはお月様が光輝いている。
私のいた世界だと夜でも明かりがついてるから、こんなに綺麗な星や月の輝きは見たことがなかった。
体が冷えるといけないため、窓を閉めると布団を敷横になる。
明日から、また新しい甲斐での一日が始まる。
安土城の皆となれたように、甲斐の人達とも少しずつでも距離を縮めたい。
皆が仲良くなれて、戦が少なくなるような日々が訪れることを夢見ながら、甲斐での初めての一日が終わりを迎える。
「はい。俺は愛を間近で見ておりましたから」
期待を込めて聞いてみると、やっぱり兼続さんは愛を知っていた。
でも、間近で見ていたっていったい……?
兼続さんの表情はとても辛そうで、何故そんな辛そうな顔をするのか今の私にはわからなかった。
その時、幸村が口を開いた。
「私は愛がわからない。だから御館様のお気持ちもわかってあげられない……」
幸村は先程兼続さんがしたように私の手を両手で包み込むと、愛を教えてほしいと私に頼んだ。
そして今度は私と幸村の間に兼続さんが入り、幸村へと視線を向けた。
「幸村に愛など教えてもわからんだろう」
「なんだと!私にもそれくらい……!」
「無理だな、少なくとも女の手を握ったくらいで顔を赤くするやつなどな」
「っ……!」
兼続さんの言葉で幸村へと視線を向けると、顔が赤くなっているのがわかる。
もしかして幸村も秀吉さんと同じで女性とあまり話したことがないのかもしれない。
安土城にいる皆で、兼続さんのように愛を知っている人や、幸村のように愛を知りたいと言ってくれる人はいなかったから、何だか新鮮に感じる。
「大丈夫ですよ!幸村にも愛を知ってもらいますから!」
「美弥……」
「幸村、そろそろ行かねば」
「そうだったな」
そう言い二人は私に一礼すると行ってしまった。
今から何かあるのだろうか?
それにしても、兼続さんの愛を間近で見ていたってという言葉と、幸村の、愛がわからないから信玄さんの気持ちがわかってあげられないって言う言葉の意味がまだわからない。
今日甲斐に来たばかりなのだから、一日で全部をわかろうとするのは無理なことなのだろうけど、安土城の皆の時とはやっぱり何かが違う気がする。
それが何なのかハッキリさせるためにも、今日から私は甲斐で頑張らなきゃいけない。
「甲斐に無事到着だね!」
「刻!」
「やぁ!今回愛を教える相手は難しいよ」
「どういうこと?」
「それは言えないよ。これは君が自分で知らなきゃいけないことだから」
私が自分で知らなければいけないことっていったい……。
4人の武将が言っていた言葉と何か関係があるのかもしれない。
「今武将達が軍義をしている、勿論信長を討つためのね」
幸村と兼続が慌てて部屋を出ていった理由はわかったけど、すでに軍義が進んでいるなら時間がない。
「そんなに心配しなくても大丈夫そうだよ。君がここにいる間は手を出さないさ、命を救った礼とやらをしっかりしてからだとおもうからね」
刻の言葉でほっと胸を撫で下ろすが、まず皆のことを知るにはどうすればいいのかわからずにいた。
愛を知ってもらうと話したとき、信玄さんと謙信さんは愛なんて下らなそうに笑っていた。
まずは幸村のことを知ってみよう。
幸村は愛を知りたいと言ってくれたから、でも、女性とあまり話すことがない幸村はすぐに顔を赤く染めてしまうみたいだし、まずは私に慣れてもらうところから頑張らないといけない。
「そんな難しい顔をすることはないよ!君ならきって大丈夫だから」
何でだろう、刻に大丈夫って言われると、本当にそんな気持ちになる。
人を知るのに時間なんて関係ない、今私にできることは、焦らずにみんなのことをしることなんだよね。
「ありがとう、刻」
刻は微笑むと再び姿を消してしまった。
「美弥、食事をお持ちしました」
襖越しに幸村の声が聞こえ返事をすると、膳を手にした幸村が中へと入ってきた。
「美弥のために、今日は甲斐の料理を作らせました」
「ありがとうございます。とても美味しそうですね!」
私の前に置かれた膳は、安土城での料理と違っていて、これが甲斐の料理なのだと食べるのが楽しみになった。
「幸村は食べないのですか?」
「私も自室で食します」
「なら、よければここで一緒に食べませんか?」
「っ、美弥と一緒に……」
何だか幸村は突然悩み出してしまったけど、一緒に食事をするなんて嫌だったのだろうか……。
「嫌なら無理しなくても大丈夫ですからね」
「嫌なんて!是非一緒に!」
「よかった!」
幸村は一度膳を取りに厨へと向かったのだけど、何故か戻ってきたときには兼続さんの姿もあった。
「俺も美弥さんと夕餉を食べたくて来てしまいました!」
「図々しいやつだ。誘っていただいたのは私だと言うのに」
「美弥さんの独り占めはよくないぞ?」
何だかんだ言い合いながらも3人で夕餉を食べることになったのだけど、何故か私を挟む形での位置となり、何だか食べにくさを感じてしまう。
「このお吸い物とても美味しいですね!」
「お口に合ってよかった。甲斐でとれた山菜等を入れた物になります」
甲斐や尾張、国によってこれほどまでに味が変わるものなんだと驚いてしまう。
尾張の料理は安土の厨で働く女中さん達に教えてもらったりしていたけど、尾張とはまた別の旨味が感じられる。
どの料理も美味しくて、あっという間に完食してしまった。
「私も甲斐の料理の作り方を知りたいのですが、厨へ行くことはできますか?」
「では明日、私が厨へ案内致しましょう」
幸村と明日の約束もし、二人も夕餉を食べ終わると自室へて戻ってしまった。
甲斐に来て初めての夜、窓を開けると空にはお月様が光輝いている。
私のいた世界だと夜でも明かりがついてるから、こんなに綺麗な星や月の輝きは見たことがなかった。
体が冷えるといけないため、窓を閉めると布団を敷横になる。
明日から、また新しい甲斐での一日が始まる。
安土城の皆となれたように、甲斐の人達とも少しずつでも距離を縮めたい。
皆が仲良くなれて、戦が少なくなるような日々が訪れることを夢見ながら、甲斐での初めての一日が終わりを迎える。
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