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第一章 迷子と子猫とアガサ村

仕入れも楽々

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「昨日は二人でずっと薬を作ってたの。おばあちゃんなんか、家にあるビンを全部使っちゃって……ビンを買って帰らないと次の魔法薬が作れないんです」
「ははは。すぐに用意するよ。でも無理しない様にと伝えてくれ」

 持ち込んだ薬を数えて記録していた店員が、代金と新しいビンを取りに行った。

「ところで…また作ったね?」

 一本の薬ビンを持ち上げる。
 ビンの首には「ミーナ」のタグ札。私の作った魔法薬だ。

「一本だけ…」

 おばあちゃんの大量の高性能魔法薬の前でほめられるのは恥ずかしい。

「次からは魔法薬作りを本格的に習うことになりました。溶剤の作り方から教わるの。それと魔力操作の訓練も」
「頼むよ。体力回復薬だけでも増産できたら本当に助かるんだ」

 さらに品薄が進んだようだ。

「ご注文のガラスビンと薬草をお持ちしました。結構な量になりますが、持てますか?」

 台車を押しながら帰って来た店員が心配そうに聞く。

「ミーナちゃんの無限袋は、型は古いがイングラ製の一流品だ。魔法の品と言えばイングラさ。丈夫だし、このくらいの量なら軽く入る。な? ミーナちゃん」
「そうなんです。初めて使ったけどスゴイですよね!」

 目の前の台車に山と積まれたビンや素材を入れても魔法のカバンは余裕余裕。本当に便利だね、このカバン。日本にいる時にも使いたかったなぁ。
 お母さんは忙しいから、買い物は私の担当だった。特売のお醤油と油と牛乳とジュースと、それにキャベツと玉ねぎと…なんて買ってると、あっという間に持てない重さになったっけ。
 仕切りのついた木製収容箱に新しいビンを24本づつ並べ、元通りカバンの中で積み重ねようとして、手が止まる。

「ん…ちょっと……入れづらい…かな?」

 何箱も入れていると、時々、カバンの口に引っかかる。無理に入れようとして落として割ってしまったら元も子もない。

「古い無限袋だからなぁ。質が良いから今でも使えるが、色々と使い勝手が悪いな」
「新しいのは使いやすいの?」
「まず、入口が広く開くな」

 ホーマーさんは、手をガバッと広げて見せた。

「それにサポート機能が付いていて、魔力で印をつければ大きさにかかわらず物の出し入れが楽なんだそうだ。容量が大きいのはもちろん、入れる場所も区分けされてて分類がしやすいと聞く」
「へー、いいなあ」
「婆さんに、おねだりしてみちゃどうだ?」
「ううん。これ以上、迷惑かけられない。自分で稼いだお金で買うよ」
「お、その意気、その意気。期待してるよ」



 その後は、水銀堂のみんなと一緒にお昼ご飯。店舗裏の従業員用食堂でご馳走になる。
 水銀堂のまかない飯ってとっても美味しいの!
 今日は鶏の炊き込みご飯のおにぎりに大根の味噌汁。薄甘いだし巻き卵と白菜の漬物付き。炊き込みご飯には、ささがきゴボウや人参や油揚げも入ってて絶品!
 ああ、アキツってやっぱり和食系なんだーと思ってたら、昨日はホットドッグとコールスローサラダと紅茶だったらしい。外国の食文化を取り入れるのが早いのは日本と一緒だね。

「ラル君には、コレね」

 料理上手の奥さんは、ラルにもお昼を用意してくれていた。ゆでてほぐした鶏肉が小皿に山盛り。

『やった!』

 喜んでかぶりつく姿は、う~ん、とても危険な魔獣には見えないなぁ。
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