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第二章 シヴァール国の黄金の実

家族の食卓

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「これ何? お茶?」

「違うよお姉ちゃん。飲んじゃダメ! 魔法薬の溶剤!」

 熱を加えて作るタイプの溶剤を冷ましてたら、危うく飲まれそうになった。
 飲んでも毒じゃないけど明日から使うのだ。
 食卓に鍋ごと置いておいたのが悪かった。今度からはちゃんと作業場の方で作ろう。
 
「ゴッツさんのパーティ、どうだった?」

「それが……あはは。うん、いい人だったよ。ただ見た目が……うぷぷ」

 もう一人のパーティメンバーはちょっと変わった人らしい。

「でも、うまくやっていけると思う。一緒にアガサに潜ることになった」

「そっか。良かったね!」

山の上こっちにはあまり来られなくなると思うけど」

「大丈夫。ラルが居るし!」

「ウナ~」

「よしよし。ミーナを頼むぜ、ラル」

 ラルはエレナが持って帰ってきた焼き鳥に陥落かんらくして首筋くびすじをなでさせている。
 ゴッツさんが見たらうらやましがるだろうな。

 もっと遅くなるのかと思ってたら今日は顔合わせだけだったらしく、エレナはまだ明るいうちに帰ってきた。
 ゴッツさんに送られて。

「大丈夫だからいいって言ったんだけど」

「ああ見えてゴッツさんて紳士だよね」

「そうなんだ? そんな気はちょっとした」

「おばあちゃんなんか、『気は優しいのに顔が怖い』って本人に言っちゃうんだよ?!」

「あははははは…」

 しゃべりながら、買ってきた物や作った物を食卓に次々と並べる。
 コロッケパン、焼き鳥、キュウリの酢の物、ワカメと麩のお味噌汁。
 取り合わせが変だけど気にしな~い。

「「 いただきます! 」」

 いつもはおばあちゃんと二人の夕飯。
 今日はお姉ちゃんと二人。+ラル。



「じゃあ、明日から村の方で泊まって準備するのね?」

「攻略パーティ程じゃないけど探査パーティも場所の取り合いとかあってさ」

 食後の薬草茶を飲みながら今後の予定を話し合う。
 エレナは新しい仲間との打ち合わせや準備があると言う。

「何を優先するか、パーティ内でしっかり打ち合わせしとかないと現場で出遅れるんだ。それに戦闘時の連携訓練もしておきたいから」

「へえー。何事も準備が大切だね」

「悪いね、ひとりで留守番させて」

「大丈夫。留守番して待ってるの、慣れてるから」

「子供がそんなモン、慣れるんじゃない」

 エレナは手を伸ばして私の頭をワシワシとなでる。

「でもお姉ちゃんだって子供の頃は留守番だったんでしょ?」

「あたしは……」

 エレナはちょっと顔を歪めたが、すぐに笑顔になり、肩をすくめて言った。

「慣れないから冒険者になったんだ。じっと待ってるより動く方が好き」

 なるほど。

「アガサのダンジョン開きは13日の午前十時。でも危ないから現地には来ない方がいいよ」

「危ないの?」

「封印を解くと同時に魔獣や魔物が飛び出してくることが時々ある」

「封印、してるんだ?」

「新しいダンジョンを発見したら、念のために封印してから周辺の施設を整える。救護施設や簡易宿泊所、発掘品や戦利品の鑑定場所、万が一魑魅魍魎ちみもうりょうがあふれてきた時のための防魔堤なんかをね。準備ができたら、いや充分な準備ができなくてもダンジョン内の魔素が高まったら、封印を解いて攻略を開始する。たぶんアガサは次の夏至を越えられないと判断されたんだろう」

 夏至や冬至には封印を破ってダンジョンから魔物があふれてくる事があるらしい。そうなる前に攻略を始めるのだそうだ。
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