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番外編(不定期短編)

魔獣とテイマー

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「あー、そういえば居たな。お前んの裏庭に。大きな鳥が」

 ゴッツは荷造りの手を動かしながら、ケイの質問に答える。
 ケイの実家はアガサ村から山ひとつ越えた隣町にある大きな寺だ。
 ケイ自身、慶空という名を持つ正式な僧侶でもある。

「アレがいい例さ。確か冠皇帝鷲カンムリコウテイワシとかいう種類の魔獣だ。あの大鷲は術式で服従させた下僕ゲボクではない。主人であるアティーシャ僧正に自らの意思で付き従っていた。僧正は祖国で何度か暴漢に襲われたらしいが、みなあの大鷲が退けたそうだ」

「はあ~。魔獣が、ねぇ…」

「その忠誠度は訓練された猟犬以上だった。知性もあったな。どう言い聞かせたのか、悪漢を倒す時も命までは取らない。無益な殺生はせぬのだ」

「ははは。俺は子供の頃、あのシヴァール人に説教された事がある。お前の勉強が終わるのを待つ間、寺の庭でセミやトンボをつぶして遊んでいたら、奥から出て来てな。小さな虫にも命があるのだと、悲しそうにさとされた」

「うむ。声を荒げて怒るのではないから、余計に心に響く」

「お前も怒られた事があるのか?」

「経を読むのをサボって遊んでた時とかな」

 子供の頃の思い出話に花を咲かせながらも、ゴッツとケイは荷造りを終える。
 新ダンジョンに挑戦する準備だ。
 一時はパーティーメンバーの引退で参加すら危ぶまれたが、エレナという新しいメンバーを迎え、無事冒険に出発できる見込みだ。

「ミーナちゃんとあの闇豹がどうやってキズナを結ぶに至ったのかは分からぬが、現状、上手くやっているのならそう心配することはあるまい。魔獣は人間よりも、ずっとずっと正直な生き物だよ。子供とは相性が良いのかも知れん」

「そうだな。魔物や魔人と違い、魔獣が人間をだますと言うのは聞いた事がない」

「まず、普通は会話ができぬからな」

「それもそうだ」

 はっはっは…と笑うゴッツは、安心すると同時にひそかに落胆らくたんした。
 確かに会話はできないが、ラルは人間の言葉を分かっているように思う。
 ゴッツが話しかける内容を理解してる風に見えるのだ。
 その上で、無視されている。嫌われてはないみたいだが、相手にされていない。

 どうやらラルと遊べる日はかなり遠そうだ。
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