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こちらの噂もリクが原因

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「でも、アメリさん……というのは私は会った事がないけど、どうして空から助けがなんて話になったのかしら? って……もしかして?」
「何となく話を聞くくらいはしていたが、まぁ、リクだからな」
「エルサ様がいらっしゃるので、リク様なら可能ですね……」
「あー、まぁ……あはははは……」
「私から飛び降りて、アメリとかいう人間が逃げている場所に降りたのだわー」

 魔物に襲われているところを助けられた、というだけなら空からという話にはならないだろうと、首を傾げるモニカさんは、途中で気付いた様子。
 ソフィーやフィネさんも同様に気付いて、皆の視線が俺に集まる……ヒルダさんは……あ、そちらはアメリさんからその時の状況を詳しく聞いてそうだね。
 王城に連れて来た時、その場にヒルダさんもいたんだから、知っていて当然でもある。
 あの時の事は……ちょっと格好つけて空から飛び降り、アメリさんの前に降り立ったのはいいけど、反応とか色々微妙だったからもうやらないと決めているけど、どう誤魔化したら……なんて考えているとエルサにチクられた。

「やっぱり……」
「まぁ、リクが原因なのだから、噂が妙な話になるのも当然か。むしろ、そこからリクに繋げられていないだけ、良かったというべきだな」
「話を聞いた人は、皆リク様とは考えずに、空から騎士様がって言っていましたね。中には、冒険者という人もいましたけど……リク様が、という人はいませんでした」
「さすがに、リクさんが空から助けにというのには、繋げて考えられないんでしょうね。まぁ、エルサちゃんの事も含めて考えると、繋がってもおかしくないけど……王都の人達の多くは、エルサちゃんが大きくなった姿とか、乗っている場面を間近で見ていないからね」
「とりあえず、俺の噂からは皆の関心が移り替わって行っている、と思う事にするよ……」

 エルサによって、俺の所業が知れ渡ってモニカさん達が溜め息を吐く。
 とはいえ、幸か不幸か俺に繋がる噂にはなっていないようなので、俺の話から感心が逸れる一因になってくれているみたいだ。
 偶然だと思うけど、アメリさんには一応感謝、かな?
 ……もう、絶対空から降り立つヒーロー! みたいな助け方をしないように決意した。

「そういえば、一応王都の冒険者ギルドにも報告しておいた方がいいんじゃない? 一応、それぞれの場所では報告してあるけど、例の研究施設関係以外は、王都の冒険者ギルドから受けた依頼だから」
「まぁ、報告しなかったからといって、何か罰則があるわけじゃないがな。一応、統括ギルドマスター直々の依頼だしな」
「そうだね……まぁ、誤魔化してはいると言っても、マティルデさんがならある程度察していそうだし、何か文句は言われるかもしれないけど……だからって避けてちゃいけないか」

 噂に関する話が終わり、皆が買って来てくれたお菓子をつまみながら、ふとモニカさんが思い出したように王都の冒険者ギルドへ行く事を話す。
 当初の調査依頼より、色々と踏み込んだ事をしてしまった気がするけど、エクスブロジオンオーガには結界を使わないといけなかったし、ルジナウムは緊急事態だったから、仕方がない。
 そこはまぁ、何も言われそうにないけど……研究施設制圧に協力したのは、ヴェンツェルさんの護衛という隠れ蓑の依頼で誤魔化してはいるけど、マティルデさんなら何かあると気付いていてもおかしくないだろうからね。

 表向き、俺は護衛をするだけという事になっているし、疑われたり何かを言われても、押し通すしかないんだけど……だからといって冒険者ギルドを避ける事はできないし、一度顔を見せて話をしておかないといけないと思う。
 マティルデさんと会わないようにしたって、冒険者ギルドに行った時点で奥に案内されそうだしなぁ……。

「あと、報酬の方もギルドに預けてあるから、その確認もしなきゃね。まぁ、ノイッシュさん達がそこを誤魔化すとは思えないけど……」
「そうだな。ユノも頑張ったんだし、そちらにも分けておかないといけないからな」
「そういえば、ベルンタさんも同じようにするって話になってたっけな」

 今回の報酬は、それぞれの街にある冒険者ギルドから出ているうえ、魔物の討伐報酬とかも上乗せされているため、かなりの大金になってしまっている。
 さすがにその場で受け取って持ち運ぶのは、かさばってしまうし大金を持ち運んでいるというのは中々緊張してしまうから、冒険者ギルドの口座のようなものに入金という形にしてもらっていて、フランクさんからの報酬も入れてある。
 今回会った冒険者ギルドのギルドマスターさん達が、その辺りを誤魔化すとは思えないけど、確認はちゃんとしておかないといけない。
 あと、ユノも頑張ってもらっていたから、そちらにもちゃんと分けておかないと……エアラハールさんの監視役になっている事が多かったけど、魔物を倒したり、ルジナウム防衛ときは助けてもらったからね。

「お小遣いが増えるのー!」
「お小遣いって……まぁ、間違いじゃないのかな? 金額はお小遣いとはとても言えないけど……」
「もう、この中にあるお金も少なくなってたの……」
「お、本当だ。結構使っているんだな?」
「ユノちゃん、ルジナウムにいる時はよく食べ歩きをしていたから」
「そうなんだ。浪費癖があるといけないけど、それくらいなら問題なさそうだね」
「無駄遣いはしないの! 食べ物は無駄じゃないの!」
「ははは、そうだな……」

 お小遣いが増えると喜ぶユノが、首からぶら下げているがま口を開いて俺に見せてくれる。
 それなりにお金を渡して入れてあったはずの中身は、銅貨が数枚と銀貨が一枚入っているだけで、随分と寂しくなっていた。
 食べ歩きをしたり、エアラハールさんとルジナウムに残ったりもしたし、そこで使ってしまったんだろう……無駄遣いと言える程じゃないから、問題はない。
 それに、ユノは現状冒険者になれないので、俺が代わりに預かって一緒の口座に入れているだけで、貯金という意味ではまだまだあるからね。

 今回の報酬を確認したら、がま口のお金も補充しておこう。
 ちゃんと、ユノが持つべきお金と、俺が貯金しているお金は別で考えているし、ほぼ折半しているように考えているので、口座にあるお金の半分はユノの物だ。

「ユノばっかりズルいのだわ! 私も小遣いが欲しいのだわ!」
「……いや、エルサは買いたい物があれば、俺が一緒にいて買うからそれでいいだろ? というか、ドラゴンが小遣いを欲しがるって……」
「お金を持っているという事が大事なのだわ。安心感が違うのだわ!」
「そんな、貧乏していた人みたいな事を……大体、何に使うんだ?」
「使う予定はないのだわ。強いて言うならキューを買うくらいだわ」
「だったら、俺が買っているから別にいいんじゃ……まぁ、エルサには色々助けてもらっているから、別にいいけど」
「やったのだわ!」
「エルサも私と一緒でお小遣いー!」

 ユノにお小遣いを、という話をしていたら何を考えたのか、エルサも欲しいと主張を始める。
 ドラゴンが、人間達の使う通貨に興味を持つというのもどうかと思うけど……まぁ、欲しいならそれでいいか――。


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