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2巻
2-1
第一章 エレノアに危険が迫っている⁉
僕の名前はアレクサンダー、みんなからはアレクって呼ばれている。バイト帰りに電車に轢かれ、なぜか赤ちゃんとして異世界に転生した元日本人だ。
僕が生まれたのは、ブンデスランド王国にあるバイザー伯爵家のお屋敷。
前世では実の母に家を追い出されて苦労した分、今度こそ自由に生きたい。そう思っていたのに……意地悪な叔父夫婦によって、僕は四歳にしてまた捨てられてしまった。
転生前は一人ぼっちだった僕だけど、今世は違う。同じお屋敷を追い出された妹分のエリザベス――リズが一緒なんだ。お兄ちゃんとして、僕が頑張らないと。
森に置き去りにされた僕とリズは、そこでハイスライムのスラちゃんと出会う。僕たちは屋敷にいる間にこっそり鍛えた魔法を使ってなんとか森を抜け、スラちゃんと一緒に町……ホーエンハイム辺境伯領に辿り着いたんだ。
僕はリズと一緒に暮らしていくため、スラちゃんを含む三人で冒険者になった。冒険者ギルドに登録すれば、依頼を受けてお金を稼ぐことができるから。凄腕の剣士であるジンさんをはじめ、魔法に長けたカミラさんといったいろんな冒険者とも知り合ったんだ。
領主のヘンリー様が保護者になってくれるって言うし、これで一安心。そう思っていた時、突如として町にとても大きなゴブリンキング率いるゴブリンの大群が現れたんだ。
僕はリズと力を合わせて【合体魔法】を使い、ゴブリンキングを倒した。おかげで町は守られたんだけど……急に町中に魔物が現れるなんて、絶対におかしい。
ゴブリン襲撃事件を報告するために、ヘンリー様と一緒に王都に行くと、ここでも衝撃的な出来事が相次ぐ。
暗殺されかけていたお姫様のエレノアを助けたり、僕とリズが実はいとこで、王族の血を引いていることが判明したり……おまけに、僕とリズの両親の死に、僕とリズを捨てて実家を牛耳る叔父夫婦――バイザー伯爵夫妻が関わっていることまで明らかになった。
この二人ときたら、ブンデスランド王家を乗っ取ろうと企んでいたんだ。ゴブリンキングの一件も、彼らの仕業なんだって。
国王陛下をはじめとするみんなの助けを借りて、僕はバイザー伯爵夫妻を捕まえた。過去と決着を付けたんだ。
……捕まえた二人が、追い出した僕たちのことをすっかり忘れてしまっていたのはとても悔しいけどね。
僕とリズの両親を殺し、王家を乗っ取ろうとしたバイザー伯爵夫妻には生まれたばかりのミカエルという名の赤ちゃんがいた。罪がないその子はヘンリー様が保護することになったので、今は僕とリズと一緒に暮らしている。
ミカエルだって被害者で、僕たちのいとこ。一生懸命面倒を見ようと思う。
平穏な日々を送るためにも、力を合わせて頑張るぞ!
◆ ◇ ◆
僕はフカフカのベッドの上で目を覚ました……ええっと、なんでここにいるんだっけ。
起きたばかりのぼんやりとした頭で、周囲を見回しながら考える。
ここはブンデスランド王国の王城にある、ティナおばあ様の私室だ。
バイザー伯爵夫妻の一件がある程度片付いたから、今日はリズの実の祖母、そして僕の保護者代わりでもあるティナおばあ様に挨拶に来たんだった。
僕はお昼ご飯を食べながら、国王陛下からこれからのことについて話を聞いたんだけど……その話が難しくて、ティナおばあ様のところに戻った時にはすっかり眠くなっちゃってたんだよね。だからリズとスラちゃん、そして遊びに来てたエレノアと一緒にお昼寝をしていたんだ。
どうもガッツリ眠ってしまったらしい。窓の外は夕焼け色に染まっていて、僕もリズもスラちゃんも、もう辺境伯領へ帰る時間だ。
「ごめんなさい、せっかくティナおばあ様の部屋に来たのに、お昼寝してばかりで……」
少ししょんぼりした気持ちでベッドを下り、枕元の椅子に座っていたティナおばあ様に謝った。
すると彼女は、僕をギュッと優しく抱きしめる。
「いいのよ、アレク君。ほんの何日か前に、ミカエル君を助けるために気絶するくらい魔力を使ったばかりなんだから。きっとまだ体が疲れていたのね。こんなにぐっすり眠ってくれたなんて、私の部屋があなたにとって安心できる場所の証だわ」
ティナおばあ様の優しい言葉にホッとした。僕もギュッと抱きしめ返して、彼女から離れる。
僕たちの話し声が聞こえたのか、ベッドで寝ていたリズとエレノアも起き出してきた。
まだ寝起きなのに、リズが待ち切れない様子で僕に聞いてくる。
「お兄ちゃん、新しいお家ってどんなの? リズのお部屋、あるかな?」
そういえば……お昼寝前に僕とリズとスラちゃん、そしてミカエル専用のお屋敷に引っ越すって話を聞いてたんだよね。
「うーん、僕もよく知らないんだ。帰ったらヘンリー様に聞いてみよう」
リズはスラちゃんと一緒になって、新しい家に思いを巡らせているみたいだ。
そろそろヘンリー様のところに帰らないと。僕とリズは荷物を纏める。
「ティナおばあ様、また来週の第三の日に遊びに来ます」
第三の日とは、前世で言うところの水曜日。普段は辺境伯領で暮らしている僕とリズだけど、こうして週に一度、王城に顔を見せる約束をしていた。
「ええ、気をつけて帰ってね」
「アレクお兄ちゃん、リズ、またね!」
僕は行ったことがある場所に転移する扉を作る魔法……【ゲート】を発動した。この魔法で王城とヘンリー様のお屋敷を繋げば、あっという間に移動できる。
ティナおばあ様とエレノアに手を振り返しながら、僕たちは【ゲート】をくぐった。
お屋敷の玄関ホールに着くと、タイミングよくヘンリー様が帰ってきたところだった。
「ただいま戻りました」
「ただいま!」
僕とリズの挨拶を聞いて、ヘンリー様が微笑む。
「おかえり、二人とも。リズちゃんのワクワクした顔を見るに……新しい屋敷の件を聞いたようだな。応接室でゆっくりと話そうか」
「わーい、どんなお家かとっても楽しみ!」
ヘンリー様ははしゃぐリズとスラちゃんを宥めながら、僕たちの手を引いて応接室に向かった。
応接室には辺境伯一家……ヘンリー様の奥さんであるイザベラ様と、娘のエマさんとオリビアさんも待っていた。
僕とリズがただいまの挨拶をしてソファに座ると、すぐにヘンリー様が口を開いた。
「では、早速話をしようか。実は、今回のバイザー伯爵――ゲインによる幾度かの襲撃に加担した家臣がいたんだよ。散財の末に生活が困窮して、バイザー伯爵家から賄賂をもらって情報を流していたんだ」
「それは大変ですね。まさか、そんな人がいたなんて……」
ヘンリー様にはそう返したけれど、とても納得できる話だ。
やっぱり、内部協力者が町の中に潜んでいたんだ。
こちらの警備状況なんかを知らないと、ゴブリン襲撃があんなにうまくいくはずがない。
「重臣だったから、なお頭が痛い。その者は取り調べ中だが……財産を没収し、禁固刑といった処分になるだろう。他にも数名が取り調べを受けている」
額に手を当て、ヘンリー様はさらに続ける。
「ここからが本題だ。もともと、その家臣は使っていない別宅を持っていたんだ。うちの屋敷の近所で立地がいいし、買い上げることになっていたんだがなぁ」
なんでも、僕たちが引っ越すお屋敷こそ、その別宅らしい。当初は年内にでも……という計画だったみたいだけど、売買契約が結ばれる直前で所有者が捕まり、計画が狂ったそうだ。
「別宅とはいえ、家宅捜索が入るんだ。侍従の選定も行う必要があるから、引っ越しはまだ先の話になる。アレク君たちはもう少し我が家にいてもらうことになるが、それでもいいかな?」
「僕たちは平気です。まだ事件が終わったばかりですもんね」
当分はそのお屋敷も捜索でごたごたしそうだし、下手に焦っても仕方がない。ここはゆっくりと待とう。
「せっかくだから、内装も一新しましょう。私たちが引っ越しの費用を出すわ。なんといっても、アレク君たちはこの町の救世主だもの」
イザベラ様の言葉に、エマさんとオリビアさんが目を輝かせた。
「お母様の言う通りだよ! アレク君とリズちゃんらしい、可愛い家具を用意しないと」
「お客様がたくさん来るかもしれないから、食器とか……追加で備品も揃えましょう!」
女性陣は新しい屋敷に必要なものを考えてくれている。だんだんと具体的な買い物の話になってきた。
「おお! リズ、たくさんお金稼いで、いっぱい買うよ!」
リズは元気よく手を上げたけど……何をするのかよく分かっていないっぽい。スラちゃんがリズの真似をして触手を振る。
僕とヘンリー様は苦笑しつつ、盛り上がるみんなを見守るのだった。
◆ ◇ ◆
今日は特に予定がない。だから、武器の手入れをしようと思う。
実はこの間のゲインとの戦闘で、リズが愛用するファルシオンが曲がってしまったのだ。僕たちでは直しようがないので、修理をお願いしなくちゃいけない。
僕はリズとスラちゃんと一緒に、冒険者ギルドにやってきた。ここの売店には、武器の手入れをお願いできる武器屋さんが常駐しているのだ。
早速事情を話すと……武器屋のおじさんの表情が曇った。
「うーん……これは派手に刃を曲げたな。ここまでやると、うちでは修復できないぞ」
「えー、そんなー!」
おじさんはリズから受け取った剣をしげしげと眺め、難しい顔をしながら答えた。
リズはファルシオンが修理不能と聞いてがっかりしている。抱えられているスラちゃんも悲しげだ。
でもおじさんの言う通り、刃がぐにゃっと曲がっているし……素人の僕から見ても、修復は難しい気がする。
こうなると、買い替えかな。
しかし、おじさんは意外なことを言い出した。
「これ、本当にギルドで買ったもんか? この剣……嬢ちゃんの魔力で材質が変化している。なんでも、ミスリル鋼の剣を折ったそうじゃないか。ただの鉄製のファルシオンじゃ、そんなことできるはずがないのに」
そういえば……ゲインの剣を折る直前、リズのファルシオンが魔力を纏って光り輝いていた。
もしかしたら、その時に何か変化が起きたのかも。
「ははは、そうがっかりするな。この町で一番の武器屋を紹介してやるよ。ギルドの設備と違って、きちんとした鍛冶場があるところならどうにかなるかもしれん。気難しい親方だが、お前たちなら大丈夫だろう」
おじさんは落ち込むリズとスラちゃんの頭を撫で、武器屋さんの場所を教えてくれた。
早速、行ってみよう。
「お、ここかな?」
ギルドから歩くこと五分。目的地に到着した。
「看板に『武器屋』って書いてあるよ、お兄ちゃん!」
僕たちはお店に入る。今の時間帯はお客さんが少ないようで、店内は静かだ。
「「こんにちは!」」
「おや、可愛らしいお客さんだね。どうしたの?」
僕とリズが挨拶をすると、カウンターにいたふくよかなおばさんが返事をした。
僕はおじさんから受け取った紹介状を渡す。
「冒険者ギルドの武器屋さんが、このお店を紹介してくれたんです」
「リズのファルシオンが、ぐにゃーってなっちゃったの」
「えーっと……確かにうちの旦那宛だね。ちょっと待っていてね」
おばさんが店の奥に消えた。多分、親方を呼びに行ったんだろう。
僕たちはその間に店内を見て回ることにした。
剣に弓、杖……いろいろな武器が置かれている。一口に武器と言ってもその形状は様々で、種類も豊富だ。
「かっこいい武器が置いてある!」
「そうだね。ギルドで売ってるものとは、作りも素材も違う気がするなあ」
やはり専門店だけあって物がいい。勘が鋭いリズも、なんとなく分かっているみたいだ。
ふと、店内の片隅に置かれている樽が目に入った。「ジャンク品」と書かれた札が貼られていて、剣の柄が覗いている。
リズとスラちゃんも気がついたようだ。僕たちは樽に向かう。
踏み台を使って中身を覗き込むと、気になるものを見つけた。
パッと見はただのダガーなんだけど……同じ樽に入っている武器とは、雰囲気が違うのだ。
「このダガー、安いのになんだか手に馴染む……」
「本当だ。とってもいい感じがするよ!」
リズは頭の上に乗せたスラちゃんと一緒になって、僕が手に取ったダガーを見ている。
どう見てもジャンク品じゃないと思うんだけど……
「ほお、そいつを見抜くとは。確かにただのちびっ子ではないらしい」
その時、後ろから声がかかった。慌てて振り向くと、髭をぼうぼうに生やしたおじさんが立っている。
「こんにちは! おじさん、だあれ?」
「おう、元気な嬢ちゃんだな。俺はこの武器屋の主だ」
熊みたいに大きいから、ビックリしちゃった……この人が親方さんか。
僕とリズに向かって、親方さんがニカッと歯を見せて笑う。
「坊主が持つダガーは、わざとジャンク品の樽に入れてあるんだ。武器の良し悪しは値段で決まらないってのを伝える仕掛けなんだが……目がいいやつは一目で分かるもんだ。二人はともかく、スライムまで分かるとは。なかなかのものだな」
なるほど、親方さんはこうして武器を買いに来る人を試しているんだな。
気難しいって聞いていたけど……どうやら僕たちは、親方さんから合格をもらえたみたいだ。
「紹介状は読んだぞ。ファルシオンを見てやる。ついてきな」
「「はーい」」
親方さんに連れられて、僕たちは店の奥に進んだ。
店の奥は、様々な武器を作る鍛冶場に繋がっていた。
弟子と思しき鍛冶職人さんたちが、忙しそうに作業をしている。彼らは突然現れたちびっ子とスライムを見て、目を丸くした。
みんなの視線を受けながら、僕とリズは大きなテーブルの前までやってきた。
リズがいろいろなものを収納できるアイテム……魔法袋からファルシオンを取り出す。親方さんはそれを手に取ると、確かめるように眺めた。
「ほほう、これは派手に曲げたな。こうも曲がった剣は久々に見る」
親方さんが近くで作業していたお弟子さんを呼び、何やら小声で話し始める。
一体、なんの話をしているんだろう? 聞き耳を立てたけど、身長差があるからうまく聞こえない。
お弟子さんが去っていくと、親方さんは僕たちに向き直った。
「ちびっ子たち、名前は?」
「アレクサンダーです」
「エリザベスだよ。このスライムはスラちゃんです!」
「ふむ……幼いのにしっかりしている。アレクにリズでいいか? 大活躍していると噂に聞く、小さな冒険者兄妹だな。それなら難しい話でもついてこられるか」
親方さんが呟いた時、いなくなったお弟子さんが二つのインゴットを持って戻ってきた。
一見すると同じものだけど……片方は魔力を帯びている。
親方さんはテーブルの上に置かれたそれと、僕たちとを交互に見るだけだ。何も言わないってことは……もしかして、試されてる?
【鑑定】で調べることもできるけど、求められているのはそういうことじゃなさそうだ。
「左は鉄のインゴットだと思います。ただ、魔力を帯びたもう片方は……知らない素材で、よくわかりません」
「右のほうがとーってもパワーがあるよ」
僕とリズが答えると、スラちゃんも触手で丸を作った。親方さんが頷く。
「……嬢ちゃんは面白いたとえだな。そっくりな二つを見分けられるだけで十分だ。アレクの言う通り、左はただの鉄。しかし、右は魔鉄でできたインゴットだ。魔鉄は、見た目こそ鉄にそっくりだが、魔力を帯びている。普通の鉄よりもずっと希少なんだ」
へえ、見た目は同じなのに……
親方さんによれば、魔力によって材質が変化する素材は他にもあるのだという。
「たとえば、ミスリル鋼。これは銀が魔力を帯びて、より頑丈に変質したものだ。魔鉄はミスリル鋼の採れる場所でよく見つかるな」
そうしたレアな金属は、含有する魔力量が多い土地――魔脈で発見されるのだとか。
「たくさんの魔力を浴びると、金属の性質が変わるんですね」
「ははは、アレクは理解が早いな。さて、リズのファルシオンだが……刀身が魔鉄でできている。ギルドで魔鉄製の武器を扱っているなんて聞いたことがないから、おそらく後天的に材質が変わったんだ」
「確かに……リズがファルシオンを振るった時、剣が聖属性の魔力でコーティングされて光ったんです。何かあったならその時かも。ちょっと試してみます」
僕もリズも魔力量にはかなり自信がある。あの時リズは、どれだけの魔力をファルシオンに込めたんだろう。
物は試しということで、実験してみよう。
リズは店内に飾られていたショートソードを買った。僕とスラちゃんは自前のダガー二振りとロングソードを手に持つ。これで、武器に魔力を込められるか試すのだ。
自分の体の一部だとイメージして、ダガーに魔力を流していく。
すると、次第に刀身がキラキラし始めた。剣先に集まった魔力が、ダガー全体をコーティングしていく感じがある。
ちらっと横を見ると、リズが光るショートソードを掲げていた。ファルシオンの時にやったからか、あっさり成功したみたいだ。
やがて、剣を覆っていた魔力の光は収まった……あれ?
親方さんとお弟子さんたちが、ビックリした顔でこちらを見ている。
頬を掻きながら、親方さんが言う。
「いや何、まさか本当に魔鉄にしちまうなんて思ってなくてな。お前たちは簡単に『試す』と言っていたが……実際にできる者は、ほとんどいない。こいつはたまげた」
親方さんの言葉を受けて、僕たちはそれぞれの得物を観察した。僕のもリズのもスラちゃんのも、刀身がただの鉄から魔鉄に変わっている。
「すげー! 鉄が魔鉄に変わる瞬間なんて、本当に見られるもんなんだな」
「というか、魔鉄って人為的に作れるんだなあ。偉い学者の机上の空論だと思っていたぞ」
えーっと……お弟子さんたちの話を聞くに、どうも僕たちがやったことはとんでもないことっぽい。魔鉄に変わった武器を見て、みんな目の色を変えている。
リズとスラちゃんは「うまくできた!」って喜んでいるけど……僕の背中を冷や汗が伝う。
「どうもお前らの魔力は、物質に干渉しやすいみたいだな。とある研究施設でも、鉄を魔鉄に変えたやつがいたって話だが……そいつも、普通のやつとは魔力の通りやすさが違ったそうだ」
親方さんは僕が魔鉄に変えたダガーを手にしながら、興味深そうに教えてくれた。
僕たちはよく一緒に【魔力循環】をしている。もしかしたらお互いの魔力を巡らせているうちに、似たような性質になったのかもしれない。
「そもそも魔鉄は希少な素材だ。量が採れないから、取引だって制限されている。この件は領主様にご報告しないとな」
「うう……すみません。僕からもヘンリー様に説明します」
「ああ。確か、領主様の屋敷で暮らしているんだろう? 事の経緯を手紙に書いてやるから、渡してくれるか?」
「はい、分かりました」
このことはヘンリー様にきちんと説明しないと駄目だ。
苦笑した親方さんが、ポンポンと僕の頭を撫でる。
「お前らの武器はまとめて預かる。当然だが、くれぐれも冒険者活動はするなよ。魔法が得意だからって、使い慣れた武器を持たずに依頼を受けるのは危険だ。先にアレクのダガーを打ち直してやるから……来週の第一の日に取りに来い」
「ありがとうございます。お代はいくらですか?」
「おお、カウンターにいる母ちゃんに聞いてくれ」
ゴブリンキングを倒した報奨金をもらったので、僕とリズはなかなかのお金持ちだ。打ち直しにかかる代金だって、自分たちで支払える。
親方さんがシャツの袖をまくった。
「久々にやり甲斐のある仕事だ。なかなか魔鉄を鍛える機会なんざないからな。作業はきっちりこなすから、任せておけ!」
親方さんもお弟子さんたちも、目を輝かせている。
僕とリズ、そしてスラちゃんはみんなに頭を下げ、鍛冶場を後にした。
お店に戻ると、最初に対応してくれたおばさんが、書き物をして待っていた。
「はい、じゃあ預かった武器が五つでこの金額ね。こっちは事情を書いた手紙だよ」
「ありがとうございます」
お代を渡し、おばさんから手紙を受け取る。
今回は僕のダガー二振りとリズのファルシオンとショートソード、スラちゃんのロングソードを打ち直してもらう。
「多分、全部の武器を渡せるまで、一か月はかかるわ。気長に待ってちょうだいね」
手続きはこれで完了だけど、ヘンリー様に事情を説明するとなると気が重い……
憂鬱な僕の隣で、リズとスラちゃんはとてもウキウキしていた。剣の完成が、楽しみで仕方ないみたいだ。
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