転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

第三十二章 新入生

千百九十九話 座学開始です

「では、さっそく座学を始めます。と言っても、冒険者も他の職業と何ら変わりはありません。依頼を受けて仕事をしますが、信頼がないといけません。信頼を得てこそ、新しい依頼を受けることができます。ルールを守る、依頼人や周囲の人に迷惑をかけないことは基本中の基本です。問題行動を起こすと、ペナルティが科せられるので注意しましょう」

　僕が話し始めると、例の三人組も含めて真剣に話を聞き始めました。
　さっきまでの横柄な態度はどうしたのかなと思うくらい、三人組は真面目ですね。
　今のうちに、必要なことを話しましょう。

「冒険者になったら一攫千金を狙っている人もいるかと思いますが、それはそれで良いことです。何事にもやる気があることはとても大切です。しかし、残念ながら新人冒険者にいきなり大きな依頼が舞い込んでくる事はありません。それは、冒険者ギルドもその冒険者に依頼を任せていいのか、本当に実力があるのかと判断できないからです。信用と信頼がないと、大きな依頼を任してくれません。僕もリズも、最初はコツコツと薬草採取から始めました」

　この辺りの話になると、へーって思う人も増えてきます。
　そもそも冒険者はランク制なので、指名依頼などでない限り大きな依頼を任される事はありません。
　そして、僕とリズが薬草採取をしていたと言うと、結構大きな衝撃が広がりました。
　「双翼の天使様」も、最初はそんな簡単な依頼からなんだと理解してもらいました。

「冒険者活動には危険がつきものです。例えば、薬草採取も動物や魔物に襲われる可能性があります。最低でも、自分の身を守るだけの力をつけましょう。もし難しい場合は、パーティを組んで交代で護衛を立てるようにします。また、依頼を受ける際は必ずどんな依頼なのか良く調べましょう。受付のお姉さんも色々と教えてくれますし、事前準備もとても大切です」

　事前準備の大切さは、ジンさんたちが教えてくれたよね。
　薬草採取とかも、採取場所が変わればどんな薬草が採れてどんな危険があるか確認しています。
　新人冒険者は、メモを取って真剣に聞いています。

「残念ながら、新人冒険者でこういうケースがありました。その冒険者は一攫千金を目指して冒険者登録をしたのですが、いきなり大金を得ようと無理な依頼を受けたのです。経験もなく、依頼は失敗ばかりで遂に手持ちのお金も尽きてしまいました。すると、その新人冒険者は依頼先の物を盗んで売ってしまい、捕まってしまいました。お金の魔力に取り付かれるのは、とても危険なことです。十分に気をつけましょう」

　冒険者の失敗例を話すと、特に例の三人組の表情が曇りました。
　もしかしたら、無理な依頼を受けようと思っていたのかもしれません。
　でも、一攫千金を狙って大金を得る新人冒険者って、殆どいないもんね。

「意外と気をつけないといけないのが、先輩冒険者からの誘いです。勉強名目で新人冒険者に荷物持ちや無理な依頼をさせ、報酬も正しく分配しないことがあります。何かおかしいことがあったら、直ぐに受付のお姉さんに相談しましょう」

　この話をすると、新人冒険者は「えっ？」って表情になりました。
　先輩冒険者には、新人冒険者を食い物扱いする人がいるんだよね。
　意外と先輩冒険者も気をつけないといけません。
　その後も、実体験を交えて冒険者の心得などを説明しました。
　どの新人冒険者も真剣に話を聞いていて、例の三人も真剣な表情に変わっていました。