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5巻
5-1
第一章 辺境伯領での五歳の祝い、新たな命の誕生
バイト帰りに電車に轢かれて命を落とした僕が、異世界の赤ちゃん・アレクサンダーに転生してから五年以上が経った。
母親に捨てられて一人ぼっちだった前世と違い、今生の僕にはいとこであり妹分のエリザベス――リズや、従魔であるハイスライムのスラちゃんやプリンといった心強くて賑やかな家族がいる。
赤ちゃんの頃から一緒だったリズはこの数年で大きく成長し、いっそう明るくなった。が、ちょっとお転婆なところが玉に瑕なんだよね。
特にスラちゃんと一緒になると、もう止められない。二人して何をするのかと僕も目が離せなくなる。
さまざまな経緯を経て、実家のバイザー伯爵家を乗っ取った叔父夫妻を倒したのが一年ほど前のこと。
現在の僕たちはブンデスランド王国のホーエンハイム辺境伯領領主、ヘンリー様の庇護を受けており、用意してもらった新しい屋敷でみんなと暮らしている。
これにはリズの実の祖母であり、前国王の妹であるティナおばあ様の力添えもある。彼女は僕たちのことを穏やかに見守り、何かあれば一緒に行動してくれるんだ。ヘンリー様に続く、第二の保護者とも言えた。
まだ幼い僕たちにとって、ティナおばあ様はなくてはならない存在だ。
僕の屋敷には、叔父夫妻に育児放棄されていたところを保護したいとこ――ミカエルもいる。
それに侍女のチセさんや、フェンリルの子どもであるオルト……彼らもまた、僕の家族と呼べる人たちだ。日々著しい成長を見せる元気なミカエルを中心に、屋敷はどんどん賑やかになっている。
今年の春、僕は大きな戦いを終えた。
僕を敵視していたブッフォンがお隣のガイアード共和国で起こしたクーデターを、リズと阻止したのだ。
ただ……その際、闇ギルド有数の実力者――ナンバーズである、ピエロとドクターなる人物が暗躍している様子を目撃した。
彼らはティナおばあ様の旦那さんを殺した、因縁の相手。何やら怪しげな企みをしているようだったから、どうにも気が抜けない。
春から夏にかけては、お祝いごとも相次いだ。
いつもお世話になっている王妃様たち……ビクトリア様とアリア様の妊娠が判明したせいで、ドタバタだった国王陛下の誕生日パーティー。
隣国、アダント帝国のランベルト皇帝のところに双子が生まれた時は、みんなで赤ちゃんを見に行った。
さらに、冒険者として活動する僕とリズの師匠である、ジンさんとレイナさんの結婚式のお手伝いまでして……楽しかったなぁ。
王国の直轄領である港湾都市で大規模な不正が発覚し、それをきっかけにロンカーク伯爵家の乗っ取り事件が分かった時はヒヤヒヤしたけれども。当主だった両親を殺され、偽ロンカーク伯爵に従わされていた少女――サンディを保護し、事件は解決した。
偽ロンカーク伯爵を捕らえた今、こちらのサンディという子が伯爵家を継ぐことに。
しかし……彼女はまともな勉強をさせてもらえていなかったうえに、まだ幼い。
サンディ救出作戦に参加していた僕とプリンに心を開いてくれているので、当面は心のケアをしつつ、僕たちと共に勉強に励むことになった。
新しい人が増えて、ますます賑やかな僕の屋敷。
神聖なイベント――五歳の祝いも近づいてきたし、みんなが笑顔で過ごせるといいな。
◆ ◇ ◆
夏から秋への季節の移り変わりを告げるかのような、過ごしやすい気温のある朝。
「えっほ、えっほ」
「アンアン」
「おー!」
僕の屋敷の庭では今日も今日とて、ミカエルが仲良しのお友達――オルトと、元気よく腕を振りながらお散歩していた。
来年で二歳になるミカエルは動くのが大好きで、いつもオルトと屋敷の中や庭を歩いている。
さすがに幼児と子狼だけにはしておけないので、必ずミカエル付きの侍従がそばに控えているんだけどね。
今朝はミカエル付きの侍従に加えて、僕とスラちゃん、プリンがミカエルを見守っている。
僕の庭の、いつものにこやかな光景だ。
ミカエルが満足するまでお散歩したところで、玄関の扉が開く。
「ミカちゃん、そろそろお家の中に入ろうね」
リズがミカエルに声をかけた。
彼女の横には我が家に滞在中のお客さん――サンディもいて、一緒になってミカエルのことを手招きしている。
トトト、ポス。
「りじゅねーね!」
ミカエルは小走りでリズのほうに向かい、彼女の足にガシッと抱きついた。
そのまま、にへーっと笑ってリズのことを見上げている。
「ふふふ。ミカちゃんは、本当に甘えん坊だね」
リズが身を屈め、満面の笑みを浮かべてミカエルを抱きしめ返した。
ミカエルはどんどん言葉を覚えてきていて、最近では僕たちの名前を言えるようになった。
「アオン」
一方、オルトはサンディのもとへ。
「ミカエルのことをきちんと見守りました」と尻尾を振りながら彼女の足へスリスリしていて、サンディはにこやかにオルトの頭を撫でていた。
楽しそうなみんなのところに、僕、スラちゃん、プリンも近づく。
「じゃあ、そろそろ着替えて王城に行くよ」
「「はーい」」
「あい!」
「アオン」
僕のかけ声に、リズとサンディだけでなく、ミカエルやオルトも元気よく声を上げた。
スラちゃんとプリンも触手をフリフリして返事をしている。
実は今日、あるイベントが僕たちを待っているのだ。
僕やリズ、サンディ、この国の王女様であるエレノア……つまり、今年五歳を迎えた者たちが参加する最大の行事、五歳の祝い。
お祝いの日が近づいてくるにつれ、僕たちに「ぜひお茶会にいらしてください」というお招きがかかるようになってきた。
しかし、その中には「お茶会として屋敷に招待し、自分の子どもを僕やリズの婚約者候補として紹介してやろう」という下心がみえみえな貴族の誘いもあった。
そういった申し出はティナおばあ様がすべて確認し、却下してくれている。僕だって、そんなお茶会には参加したくない。
今日は、ティナおばあ様の厳しい審査をくぐりぬけた、数少ない貴族家のお茶会に参加することになったのだ。
せっかくのお招きなので事前に許可をもらい、サンディ、ミカエル、オルトといった屋敷の面々も一緒に行く。
残念ながら、エレノアは王城で王妃様と共に来賓対応をしないといけないらしい。
「アレクお兄ちゃんと一緒がよかったの……」
遠距離を繋ぐ扉を作る空間魔法――【ゲート】で王城の正門前に転移してきた僕たちを見て、出迎えてくれたエレノアがどんよりとした表情で呟く。
「じゃあ、みんな準備はいいかしら?」
「「「はい!」」」
「あい!」
保護者役であるティナおばあ様の合図で、僕たちは元気よく返事をして馬車に乗り込んだ。
本日お招きされた貴族家は、王都の貴族街に屋敷を構えているという。
最初に向かうのは、僕の母方のおじい様とおばあ様のお家――グロスター侯爵家。王城からはさほど遠くない。
僕たちみんなは馬車の窓にかじりつくようにして町並みを眺め、短い馬車旅を楽しんだ。
グロスター侯爵家の屋敷は、庭がとても綺麗だった。
無事に到着した僕たちは馬車を降り、玄関へ向かう。
「ようこそ、グロスター侯爵家へ」
「皆様、お待ちしていました」
屋敷の玄関では、おじい様とおばあ様がニコニコしながら僕たちを待っていた。
次期侯爵と思しき男性と、ミカエルよりも小さな赤ちゃんを抱えた女性が一緒に出迎えてくれる。
「皆様、初めまして。嫡男のグレックスと申します」
「グレックスの妻のナオミです。この子は、息子のアーノルドですわ」
グレーの短髪で長身の男性が、嫡男のグレックスさん。栗毛のロングヘアで、とても優しそうな面立ちをした女性が、嫡男夫人のナオミさんだ。
僕はリズと共に自己紹介をし、そんな二人と順に握手する。
「たっちー」
「あー」
侍従に抱えられたミカエルはアーノルドとハイタッチを交わしており、なんとも微笑ましい。
早速、僕たちはお茶会が開かれる中庭に移動する。
グレックスさん夫妻はお仕事と子守があるようで、屋敷の中へ戻っていった。
「甘いお菓子も用意しているわ。いっぱい食べてね」
「「わあ、ありがとう!」」
用意された席に座ると、おばあ様がニコリとしてお茶とお菓子をすすめてくれた。
リズとサンディはお礼を言い、すぐにクッキーに手に伸ばす。
スラちゃんとプリンも、触手を器用に使いながらクッキーを食べていた。僕も紅茶をいただく。
「くきー、おいちー!」
ミカエルは口の周りをべたべたにしつつも、おいしそうにクッキーを頬張っている。
僕たちのことを大人がにこやかに見つめていた。
「しかし、アレク君とリズちゃんはもう五歳か。出会ってからわずか一年のうちに、本当に大きくなったのう」
「リズ、大きくなった?」
「そうだ。最初にティナ様から紹介された時よりも、ずっと大きくなっているぞ」
「そうなんだ!」
クッキーのカスを口の周りにつけたリズは、おじい様に頭を撫でられている。成長って、自分じゃなかなか実感できないもんね。
僕も実感はあまりない。でも、だんだんと成長していくミカエルを見ていると、おじい様の気持ちが分かる気がする。
「それにしても……アレク君は相変わらずの活躍だ。国内外で大活躍しているのに、おごることがまったくないそうじゃないか。とはいえ、まだ五歳なのだから無理は禁物だぞ」
「アレク君は人を惹きつける魅力に溢れているのでしょうね。これからも友人を大切にするのよ」
おじい様とおばあ様は僕の活躍を喜びつつ、そうアドバイスしてくれた。
きっと身内だからこそ心配なのだろう。これが他の貴族だったら、僕のことをとにかくおだてて気を引こうとするはずだ。
なかなか会いに来られないグロスター侯爵家の二人だけれど、きちんと孫として接してくれる彼らの存在はとても大きいものだった。
一時間ほどお茶を飲みながらいろいろと話をして、僕たちはグロスター侯爵家を後にした。
「「「ばいばーい」」」
「またお茶会をしましょうね」
馬車から身を乗り出して、おばあ様に手を振る。
今度は、僕とリズの共通の親戚――ブリックス子爵家に向かうのだ。
馬車が下級貴族家の屋敷が立ち並ぶエリアに入った。ほどなくしてブリックス子爵家の屋敷に到着する。
先ぶれの使者を出していたので、屋敷の玄関ではブリックス子爵家のおじ様とおば様が僕たちを待ち構えていた。
「皆様、ブリックス子爵家へようこそ」
「さあ、みんなで中庭に移動しましょうね」
「「はーい」」
「あい!」
おじ様とおば様がニコリとして、僕たちを中庭へ案内する。
ミカエルは新しい人と知り合いになれて楽しいみたいだ。僕と手を繋ぎながらご機嫌で返事をし、とても嬉しそうにてくてくと歩き出した。
中庭では、やはり嫡男夫婦と思しき男女が僕たちを待っていた。
「ようこそ我が家へ。跡取りのジャクソンと申します」
「妻のマリアーナですわ。皆様、どうぞよろしくお願いしますね」
ジャクソンさんは緑色のショートヘアで筋肉質のガッチリとした男性で、マリアーナさんは青いセミロングがよく似合った美人さんだった。
僕たちも順番に挨拶をして、早速用意された席に座る。
「まりちゃ!」
「あら。私の名前を言えるのね、ミカエルちゃん。とても偉いわ」
ミカエルはマリアーナさんに抱っこしてもらって、あれこれお喋りしていた。
彼女はまだ赤ちゃんを授かっていないそうで、ミカエルが可愛いくて仕方ないらしい。
リズ、サンディもジャクソンさんと楽しくお話し中だ。
僕はティナおばあ様と共に、おじ様とおば様に向き直った。
「アレク君はブンデスランド王国でもっとも注目されているが……注目を浴びるほど、逆に狙われる危険性も高まる。その可能性は、常に頭に入れておかねばならない」
おじ様が僕に念押し、顎に手をあてた。
「ベストール侯爵の力が落ちたことで、貴族主義勢力の権力争いが激しくなっております。当分はティナ様たち王家の方々も、事件が起きることを警戒しないとなりませんでしょう」
確かに。僕がこれまで関わってきた各地の貴族領で起こった事件は、貴族主義勢力の争いも絡んでいたもんね。
そういった人たちって、自分たちが一番偉いと思って平民への被害をまったく気にしない。本当に迷惑な存在だ。
おじ様の発言に呼応するように、ティナおばあ様が口を開く。
「王都での五歳の祝いには、アレク君やリズちゃんだけでなく、エレノアも参加するわ。今年は貴族主義勢力の家の子どもも多いから、王家も悩みどころなのよ」
ティナおばあ様曰く、王家と関係を持ちたい貴族家がエレノアの誕生にあわせて子を為したため、祝いに参加する五歳児が多いのだという。
ところが、肝心のエレノアは僕と仲がいい。貴族の中には、そんな僕を快く思っていない人も多いそうだ。
子どもの成長を祝うイベントなのに……大人の思惑が絡んでトラブルに発展しないことを祈るばかりだ。
今年の王都での五歳の祝いは、例年以上に厳重な警備が敷かれる予定だという。貴族であっても、すべての参加者に手荷物検査が義務づけられるみたいだ。
どうやら貴族主義勢力内での力関係が変わり、新たな台頭を狙っている貴族が出てきたようだ。
不測の事態が起こらないでほしいけど、なんだか望みは薄い気がする。
ともあれ、ブリックス子爵家とのお茶会は無事に終了。
昼食の時間になる前に王城へ戻ったのだけれど……
「みんなと一緒に行きたかったの……」
エレノアがしょぼーんとしながら僕たちを出迎える。
どうやら、来賓対応はかなり大変だったようだ。
こればっかりは僕にも助けてあげられない。肩を落とすエレノアに、思わず苦笑した。
◆ ◇ ◆
五歳の祝いの日が近づきつつあっても、やるべきことは変わらない。
冒険者活動がない時は、王城にやってきていつも通り勉強しなくちゃいけないのだ。
「「「ふしゅー……」」」
「ふしゅー……ですわ……」
今日も王城に来て、みんなと一緒に勉強部屋で勉強をしているのだが……机に突っ伏しているリズとエレノア、そしてエレノアの腹違いの姉――ルーシーお姉様と、ルーカスお兄様の婚約者であるアイビー様の頭から、煙が見えるようだ。
本日の家庭教師、レイナさんと魔法使いのカミラさんお手製の問題集を解き終えた直後から、四人はこんな調子である。
「うにゅ?」
ヘロヘロなリズたちのことを、侍従に絵本を読んでもらっていたミカエルが不思議そうに見つめていた。
「ほらほら、みんな。まだまだ問題はあるわよ。サンディはまだ平気って顔をしているじゃない」
レイナさんが苦笑しながら発破をかける。
確かに、ヘロヘロなリズたちに対して、サンディは苦笑いをしつつも普通に席に座っていた。多少は疲れているみたいだが……
「疲れていたらそう言っていいんだよ?」
「ありがとうございます、アレク様。でも、平気です。その……皆様とのお勉強、楽しいです」
サンディは偽ロンカーク伯爵のせいでろくに勉強できずにいた。だからか、こうして大勢と学ぶこと自体が楽しく、苦にならないらしい。
「「「私たちは、とっても大変なの!」」」
リズたちの反論に、アイビー様も続く。
「大変なのですよ、サンディ!」
ルーシーお姉様は七歳、アイビー様は九歳だから、リズとエレノアが解く問題集よりレベルが高いものを学んでいる。
特にアイビー様は、そこからさらに一段階上の難易度をこなしているはずだから、不満を述べるのも頷ける。
リズやエレノア、ルーシーお姉様だって、年齢のわりにはとても頭がいい。が、今日みたいにたくさんの問題を解くのは嫌いとのこと。
でも、反復練習はとても大切だと思う。これからも問題集を解く運命からは逃れられないだろう。
ちなみに、僕とエレノアの腹違いの兄、ルーカスお兄様はすでに勉強が終わっている。
今日は「会議の冒頭だけ出てくれないか?」と陛下から話があったので、このあと二人で会議室へ移動する予定だ。
カミラさんがニヤリとして言う。
「勉強を終えたアレク君たちは会議に参加するそうだけど……みんなも一緒に出る?」
「「「勉強頑張ります!」」」
一致団結したリズとエレノア、ルーシーお姉様の返事に、僕もルーカスお兄様も苦笑してしまった。
と言いつつ、僕だってできれば難しい会議には参加したくないのだけど。
そんなことを考えながら、僕とルーカスお兄様は会議室に移動した。
「二人とも、勉強中に悪いな。手短に済ませるから、席に座ってくれ」
「「はい」」
会議室に入ると、陛下が僕とルーカスお兄様を席に誘導した。
すでに閣僚に加えてビクトリア様、アリア様、ティナおばあ様が席についている。そろい踏みしている王族の面々を見て、重要な会議が行われることはすぐに分かった。
僕とルーカスお兄様も、姿勢を正して席に座る。
「ルーカス、勉強の調子はどうだ?」
僕とルーカスお兄様の緊張を解すためか、陛下がさっきまでの勉強の様子を聞いてきた。
「僕もアレクもきちんと終わりました。みんな頑張っていますが、サンディは特に努力家で――」
ルーカスお兄様の言う通り、サンディは本当に一生懸命勉強に取り組んでいたもんね。
「そうか、サンディはそんなに勉強ができるのか。本人も頑張り屋のようだし、偽ロンカーク伯爵の乗っ取り事件さえなければ、実の両親の推薦でルーカスの婚約者候補に名前が挙がっていたかもしれんな」
「僕も、父上の意見に同意します。彼女はとても真面目な性格ですから。ただ、本人は婚約者の座に興味がないようですし、これでよかったかなと。アイビーともとても仲良しですよ」
サンディは、偽ロンカーク伯爵が自分を利用してルーカスお兄様とアイビーお兄様の仲を引き裂こうとしていることを当時から察しており、それについてとても申し訳なさそうにしていた。
今はわだかまりなく接することができているようで、何よりだ。
「ふむ。偽ロンカーク伯爵の悪事を暴き、サンディを救ったのはアレクだからな。今は彼に夢中だろう……何にせよ、優秀な人材を救えてよかったと前向きに考えよう」
現在のサンディはリズたち女の子組とも仲が良く、ミカエルもサンディのことを新たな姉として認識しているようだ。
彼女はとても大人しい性格だけど、コミュニケーションが苦手というわけではない。これからどんどん交友関係を広げていってくれたら嬉しい。
そんなことを考えながら、僕は目の前に置かれた紅茶に手を伸ばす。
それに口をつけたタイミングで、陛下がニヤリと笑った。
「実は、アレクがサンディを救った件を絵本にする計画が上がっていてな。先ほど満場一致で承認された」
「ぶっ……!」
あ、危なかった。
陛下がとんでもないことを言うから、危うく紅茶を噴き出すところだった。
え、絵本? 僕がサンディを助けた時のことを絵本にするの? すでに国王陛下の承認済み?
僕は会議室にいる面々を見回した。
目を丸くしているルーカスお兄様以外、全員ニコリとしながら頷いてくる。
「どういうストーリーにするかについては、王家の監修を入れる。過剰な贅を欲することがどんなに恐ろしいかを伝えるには、いい教材だ。それに『めでたしめでたし』で終わるのもいいところだ」
至極当然だと言わんばかりに陛下が宣い、またもやルーカスお兄様以外全員がうんうんと頷いた。
僕は助けを求めてティナおばあ様を見た。
ところが、ティナおばあ様はさらにニコリとしながら、もっとビックリすることを言ってきたのだ。
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