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姫と夜叉
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朧月が儚げに浮かぶ夜空を、今宵も月見台に立って見上げる姿があった。郷の花たる姫君は、あまり外へ出ない。外界の穢れに触れてはならぬからだ。たとえ毎夜、その身を清めていたとしても。
ある日の朝、ユキは鍛錬場の隅で一人竹刀の素振りをしていた。周囲では、対になって剣を打ち合ったり、徒手で投げ合いをしたりと、郷守たちが稽古に励んでいる。
郷巡りの一件以来、ユキと行動を共にするものはいなくなった。姫御輿を襲った平七と一緒にいたユキも危険人物と見なされたようで、他の郷守たちに白い目で見られながら、その小さな体をさらに小さくするように過ごしていた。
よく一緒におしゃべりに花を咲かせていた伊助と弥助は、郷巡りのお役目に加わっていなかったことが幸いし、冷遇の憂き目にはあわずに済んでいる。そして両人は、自分たちに被害が及ばぬよう、ユキを避け続けていた。そのため、ユキは弁解する機会もなく孤独に過ごしていた。
あの騒動の詳細は伏せられたはずだったが、郷巡りに参加した男たちから少しずつ話が漏れ伝わっていた。姫御輿が襲われたこと、下手人が平七だということ、そしてユキが水車の刑に科せられたという話が、留守番組の男たちの耳に入っていた。一度罰せられた人間がお役目に復帰したということは、疑いが晴れたということを意味するのだが、事が事、郷の花の命にかかわる出来事なだけに、誰もユキと関わろうとしない。ただ一人を除いては。
「久しいな」
「由さん!」
声をかけてきたのは、真新しい装束に身を包んだ由ノ進だ。
「励んでいるな。どうだ、少し顔を貸さないか」
一人でできることに限界を感じていたユキは、喜んでその申し出を受けることにした。
二人は、人気のない屋敷の裏手の方までやってきた。鍛錬場の方から、男たちの掛け声がかすかに聞こえる。
「怪我の具合はもう大丈夫か」
「おう!ほれ、この通りさ!」
あの郷巡りの日、平七が仁親に斬られた後、ユキは姫御輿の右側に配置されていた刀守たちに取り囲まれた。姫御輿が死角になって、平七を止めようとするユキの姿が見えなかったばかりに、共謀者だと勘違いされたらしい。さらに不運なことに、姫御輿の正面にいた東吾が騒ぎに気付いて振り返った時、ユキが刀守に取り押さえられている様子を目にしてしまった。そのせいで水車の刑に科せられてしまったのだ。
努めて強がってみせるユキに、由ノ進は労わりの言葉をかける。
「とんだ災難だったな」
ユキと同じ側にも数人いたはずだが、彼らをはじめあの場にいたほぼ全ての郷守・刀守は、姫御輿から飛び出てきた姫装束に釘付けになっており、哀れな少年が捕まる姿など目に入っていなかった。
そんな中、由ノ進はただ一人冷静に事を見極め、伸びた平七を縛り上げていた。実際に手をかけたのは仁親だったが、由ノ進は下手人捕縛の功により、念願の刀守への昇格を果たしたのだ。
「すぐに助けてやれなくて済まなかった。気が付いた時には、お前が引っ立てられた後だったんだ」
「いいんだ。下手人を捕まえるほうが大事だ。由さんはお役目を全うしただけだろう」
平七を縛り上げて終わりかと思いきや、まさかユキまで捕まるとは思っていなかったと、由ノ進はすまなそうに言う。
「いや、謝らせてくれ。あの時、お前を疑う気持ちが全く無かったわけではないのだ。俺の位置からは凶行の瞬間は見えなかったんだ。……少しでもお前を疑ったこと、許してくれ」
言わなければわからなかったものを、由ノ進から律義に謝罪の言を述べられ、ユキは救われた気になった。鍛錬でも居場所がなく、見回りでも仲間たちに口をきいてもらえず、心細く過ごしていたユキには、自分を信じてくれる存在がいるだけで心強かった。
「ところで、新しいお役目にはもう慣れた?刀守ってどんなお役目なんだい?由さんの他にも双刀はいるのかい?」
刀守になったばかりで忙しいだろうに、居場所のない自分を案じて会いに来てくれたことが嬉しくて、ユキの声は自然と弾む。
「そういっぺんに聞くなよ」
由ノ進は今、郷の南西にある村々の管理を任されているらしい。各村の視察や郷守のとりまとめ、殿に納める作物の出来を確認したりと、なかなか忙しく過ごしているようだ。郷娘へのちょっかいは程々に抑え、至極真面目にお役目に励んでいるとは、本人の言だ。
「久方ぶりに郷屋敷へ参ったが、やはり落ち着くな」
今日は受け持ちの村々の状況報告をしに、顔を出したという。二人が顔を合わせるのは郷巡りの日以来だ。郷守時代は毎日のように一緒に過ごしていただけに、ユキも由ノ進も物足りない思いを抱えながら日々を過ごしていた。お互いあえてその名を口には出さないが、ある男の存在を意識せずにはいられないのだ。かつての仲間であり、あの騒動を起こした張本人の話題を避けるように、二人は思い出話に花を咲かせる。
「それにしても……ククッ……しかし」
新米の刀守は、思い出したように笑いを漏らす。
「『花の姫君』かと思いきや、お前が見惚れた相手が男だったとはな!」
「そっ、それは言うなよう!」
「本当に、見たこともないくらい美しい目をしていたんだ」
「ほう。さような眼の持ち主とやらに会ってみたいものだな」
赤面する少年は必死に言い訳するも、由ノ進のからかいは止みそうにない。薄笑いを浮かべる顔ですら女子がみたら卒倒するほどの男振りで、様になっているのがなんとも憎らしい。
「あの御方は、仁親殿というんだ」
ユキは、自分を助けてくれたのが仁親だったこと、仁親こそが剣役であることを打ち明けた。そしてあたかも剣役のように振舞っていた大男は風読みの東吾だと教えると、由ノ進は予想通りの反応を見せた。
「これはたまげた!当代の風読みは医術に秀でた博識な御仁と聞いていたから、あんな武人のような見た目とは思わなんだ」
風読みにしておくには勿体ない体格だと、由ノ進は残念そうに笑う。
「そういえば仁親殿も、東吾殿は万物に通じたお方だと言っていたな」
「お前、風仁と話をしたのか!」
お互いの生まれた村の話や、ユキの故郷で見える不思議な月の話をしたこと。剣役の愛馬に乗せてもらったこと。ユキはあの夕暮れの出来事を、それはそれは大事な宝物のように語った。
「剣役と親しくなるなんて、刀守の中にだってそんな奴はいないだろうよ。怪我の功名ってやつだな」
その怪我は、危うく命を落としなかねないものだった。有難いご縁ではあるのだが、水責めは二度と御免こうむりたい。
「是非一度手合わせ願いたいと、伝えてくれよ」
曖昧な笑みで応えるユキ。伝えてくれよ、と言われても、次にいつ会えるかわからない相手だ。もしかしたら、もう二度と会うことはないかもしれない。由ノ進の方も、それを承知で軽口を叩いたに過ぎない。
ユキの元気そうな様子を見て安心した由ノ進は、そろそろ残りの用向きを済ませねばと話を切り上げる。実はこの後、風読みに謁見するのだという。ユキの頭をポンと小突くと、その手を後ろ手に振って立ち去っていった。庭先で待機していた仲間の刀守たちに合流する姿を、ユキは少しの寂しさを抱えて建物の陰から見送った。
「さて、そろそろ昼飯だな」
その後には見回りも控えているぞ、独りごとを言ってみる。己を鼓舞するように、平手で両頬をバチンを叩く。しばらくぶりの談笑の余韻を残したまま、ユキは足取り軽く歩き出した。
昼飯をささっとかきこみ、昼一番の見回りに赴く。今日も今日とて、周りの郷守たちとは必要最低限のやりとりしかしていない。見回りを終えて鍛錬場に向かう道すがら、ユキは上役の刀守に呼び止められた。
「午後の鍛錬はよいから、ついて参れ」
またしてもあの騒動の聞き取りか、それともとうとうお役御免になったのか。いずれにしても良い用向きは期待できず、郷守たちと馴染めなくなったユキにはもうここに居場所はないのかもしれない。鬱々とした気持ちを抱えながら首を垂れていたために、ユキは自分がどこを歩いているのか認識していなかった。
「連れてまいりました」
上役の声にはっとして顔を上げる。気が付けば庭園の奥、足を踏み入れたことのない場所に来ていた。前に立つ上役の背中からそっと顔をのぞかせると、池のほとりに見覚えのある人物が立っていた。
「さがってよい」
「は。ユキ、失礼のないようにな」
去り際に小声で耳打ちすると、上役は心配そうに一度振り返り、そして一礼して立ち去った。
「急に呼び出して済まないな」
二度目は存外早くきた。詫びの台詞とは裏腹に、無表情でユキを迎えたのは仁親だ。剣役の御仁が、一介の郷守に何の用だろうか。
「お、お久しぶりにございます。仁親殿におかれましては……」
「平七が死んだ」
思いがけない一言に、ユキは全身が凍り付いた。兄貴分としての平七は頭から消し去り、反逆者として認識を改めたつもりだったが、動揺を隠せなかった。
仁親によると、今朝舌を噛んで死んでいるところを発見されたという。牢の前には刀守が見張りとして二人ついていたが、目を離した隙に命を絶ったようだ。
「尋問に応じず、毎日手を焼いていたらしいが……結局、奴らの手掛かりは未だつかめていない」
奴らというのは平七が組していた集団、もといユキの村を襲った賊のことだ。ユキは、自分が呼び出された理由が薄々わかってきた。賊を見たことがある身近な人間として、白羽の矢が立ったのだろう。この後の言葉は容易に想像がつく。賊は何人いたか、襲われた時の様子は、武器は何だったか……事細かく聞かれるのだろう。命令にしろ要請にしろ、ユキには逆らう術はない。まぶたをぎゅっと閉じて、覚悟を決める。
「姫様がお前に会いたがっている」
「へ?」
話の脈絡の無さに、ユキは拍子抜けする。物騒な賊の話と姫君が、どう繋がるのだろうか。相変わらず言いたいことだけを単発で、過程をすっ飛ばして話すものだから、理解が追いつかない。
「あまりこういう類の話はお耳に入れたくないのだが……困ったことに、当の本人が会わせろと言って聞かないんだ。いいか、あまり惨たらしい言い回しはするなよ。本来、姫君のもとに穢れを持ち込んではならぬのだから」
どうやら、賊の話を姫君の前でしろということらしい。それも、ユキが見聞きしたものを控えめにという注文つきで。
狂ったように雄たけびをあげて攻め入る賊や、首を刺されて血しぶきと共に倒れた隣家の姉さん、丸焦げになった友のことなどは……言わないほうが無難であろう。
「わかりました。おいらでお役に立てることがあるなら」
その言葉に頷くと、仁親はついて来いとユキを促し歩き出した。
庭を突っ切ると、屋敷の端にある廂の間に到着した。見覚えのある生け垣が、視界の端に映りこんだ。
「履物はここで脱げ。謁見の前に “邪払い” をする」
ユキの正面に立つと、仁親は目を閉じてボソボソと何か呪文のような言葉を口にしだした。そのまま片手を軽く握って額の前に持ってくると、一呼吸おいて目を開く。そして何事もなかったかのように、渡り廊下を歩き出した。ユキも何かしたほうが良いのか迷っていると、先を行く仁親が振り返った。
「どうした、ついて来い。もう“邪払い” は済んでいる」
「は、はい!」
未知の儀式に戸惑っているユキをよそに、ずんずん歩みを進めていく。
「知っていると思うが、この渡殿は奥屋敷へ通じている。まもなく姫と見える故、心せよ」
少年の顔が火照る。お互いの目が合ったあの時、女装した仁親が歩いていた場所を、その当人と共に歩くことになるなど、あの頃のユキは想像だにしていなかった。
ユキが通された奥の間は、その名の通り屋敷の奥にある部屋だ。ユキの正面は床が一段高くなっており、姫君が着座するであろう台座が設えてある。ユキから台座まで、その距離およそ十尺(三メートル)。外の音は一切聞こえず、平伏しているため視界は床板のみと、ユキは聴覚と視覚がふさがれたような格好で姫君の入室を待つ。平身低頭で緊張状態のユキに対し、隣の仁親は上体を軽く下げるのみで涼しい顔をしている。
やがて衣擦れの音と、鈴を転がすような声が前方から聞こえた。
「よく来てくれました。面を上げて頂戴」
郷の花は、愛らしい笑顔をたたえて台座に腰を下ろしていた。その縁は朱で描かれた花々で彩られており、長く艶やかな黒髪に映える姫君の美しさを一層引き立たせている。淡い桃色の着物に焚き染めた香が、少し離れたところに座っているユキの鼻をほのかにくすぐった。
年の頃はユキよりいくつか上の印象を受けた。少し垂れた目元と、紅のさす頬、緩やかに弧を描く薄紅色の唇。青みがかった大きな瞳が、優しくユキを見つめている。いつか想像した、月光に照らされた泉の女神が目の前にいるような気分だ。
「花里様、こちらが例の少年です」
「無理を言って御免なさいね、仁」
花里姫。それが郷の花の名だ。あまりにも畏れ多く、郷屋敷に仕える者たちは皆、直接御名を口にすることを避けていた。民に至っては、姫君の名を知る者はほとんどいない。それほどまでに、郷の花は遠く高貴な存在なのだ。
その雅やかな微笑みに目を離せずにいると、ユキから見て姫君の右隣にいる壮年の男が笑いながら話しかけてきた。
「姫様の御前だ、見惚れるのは構わんが、まずは名を申せ」
「もっ申し訳ございまして……ユ、ユキといいます。ささささ郷守としてお仕え申しており候、お初にお目にかかかりもうしあげたたたたてまつり……」
しどろもどろで答えるユキに代わり、仁親が後を引き継ぐ。大方の話は、予め伝えてあったのだろう。この年若い郷守は賊に襲われた山吹村の生き残りであり、先の郷巡りでは騒動の渦中にいたのだと、簡潔に話す。
「周りにいた刀守たちは、そなたを取り押さえたんでしょう。なんて間抜けなこと!」
「言葉が過ぎます、花里様」
「あら、本当のことじゃあないの」
苦言を呈する仁親に、すまし顔で応酬する姫君。二人を交互に見やる困り顔のユキ。見かねた側仕えの男が、またもや笑いながら口をはさむ。
「姫様、話が先に進んでおりませんぞ」
「あら高虎、仁がいけないのよ。……さて、ユキ」
名を呼ばれて飛び上がりそうになるユキ。先ほどまでの笑みが消えた真剣なまなざしの姫君に見つめられ、緊張は最高潮に達していた。
「そなたとって辛い記憶だとは承知しておるが、村が襲われた時のことを詳しく聞かせてほしいのです」
誰一人、声を発さぬ間ができた。天井から、きいん、という音がする。実際には何も鳴っていないのだが、空気を振るわせるその場の緊張が、音となってユキの耳に届いた。
花里姫は依然、ユキを見つめたままだ。蔀の開いた南側から差し込む陽光が、明障子を通して姫君に柔らかく降り注ぐ。光を纏うその神々しい姿を直視できないユキは、自分の膝の先にある床の木目に視線を移す。そのまま口を開こうとして、一瞬ためらった後に隣の仁親を見やる。あの夕暮れ時と同じように、自分の傍らには仁親がいる。それが心強かった。仁親が無言で頷いてみせると、ユキは決心がついたように居住まいを正す。
「その晩は新月で、早々に寝床に入ったんです。村のみんなが寝静まった頃、外が急に明るくなって……」
惨憺たる夜の出来事を、事前に仁親に言われた通り、言葉を選んで慎重に話す。誰かの叫び声に飛び起きると、日が昇る前だというのに障子戸が明々と照らされていた。方々から「賊だ」と叫ぶ声が聞こえ、赤い光は燃え盛る炎なのだと悟った。金属の打ち付ける音、戸を破壊する音が迫り、一瞬にして今生の別れを決めた親は、命に代えて子を匿った。
「おっか――かあさまが、おいらをこっそり逃がしてくれたんです。お前は足が速いから、郷屋敷に走って助けを求めるんだよって」
火の海にのまれた故郷を命からがら脱出し、闇の廃墟と化した森の中を、夕月郷の中央にある郷屋敷に向かって駆けた。新月は、歩きなれた森を魑魅の巣窟に変えた。足元も、行き先も、これから生きてゆく道も何も見えない真っ暗闇を、傷だらけになりながら走り抜けた。そして郷屋敷にたどり着く手前で行き倒れたところを平七に拾われ、郷守になった。その平七こそが、賊の一味だとも気付かずに。
「……平七は、どうしておいらを生かしておいたのでしょうか」
誰に対するでもない問いだった。隣に座する剣役が口を開く。
「郷屋敷の近くで騒ぎを起こすわけにはいかんだろう」
死体の処理に困るからな、とは流石に姫君の前では口にできなかった。
「あの時お前は、平七を見て賊とは考えなかったのであろう。それは何故だ」
「そ、それは……何でだったかな。……ああ、そうだ。月の紋様が見えたんです。よく村の見回りに来ていた郷守たちと、同じ装束を着ていたからです。賊たちは黒い衣に、頭には角を生やしたような恰好をしていたもんで、それでまさか賊の一味だとはこれっぽっちも」
己が情けなくなり、次第に声が小さくなる。視界の床板が微かに滲む。平七と出会った最初の晩の違和感にもっと早く気付いていれば、何かが変わっていたのかもしれない。
ユキは知る由もなかったが、あの晩村を襲った賊は、闇に紛れる黒い装束姿で不寝番の目を掻い潜ったのだ。賊の侵入に気が付いた時はもう手遅れだった。ユキが逃げおおせたのは奇跡といって良かった。近くの詰所から郷守たちがすぐさま駆けつけて賊に対抗したが、その安否は定かではない。
「して、どう考える高虎」
「十中八九、黒夜叉集団の仕業でしょうな」
姫君の下問に、高虎と呼ばれた側仕えが応じる。
「おそらく平七は、物見として控えていたのでしょう。郷屋敷まで逃れて来れる者の存在は想定外だったはず。郷守の姿で迂闊なことはできぬ故、ユキを助けた形をとったというのが妥当かと。以後、兄貴分を気取って手元に置くことで、監視していたのでしょうな」
耳の下から顎にかけてたくわえた、白と灰色が混ざるひげを右手で擦りながら尋思する。目を細めながら語る高虎が向ける、武人独特の射貫くような視線に、ユキは居心地の悪さを感じていた。
それを察してか、仁親が横から口をはさむ。
「黒い衣に頭に角を生やしたような恰好と申していたが、他に特徴は」
「ええと、そうだ。頭の片側に、鬼のようなお面をつけている男がいました」
「……夜叉面か」
応じた仁親と、正面の花里姫と、高虎が揃って渋い表情を作る。
「十二年前の悪霊が目を醒ましたか」
何か心当たりのある風な三人についていけないユキの様子を見て、姫君が問いかける。
「萌黄郷の創成期の話を聞いたことがありますか」
「はい、少しだけ。夕月郷を襲った悪者たちから、郷の花を守った刀守が始祖だと」
この先は私めが、と話を引き受けたのは高虎だ。
「その者どもは黒夜叉一族と呼ばれていた。萌黄郷を賜った冬守家初代当主によって、一族もろとも、とこしえの闇に葬られたのだ」
以来、郷に泰平がもたらされた。今日まで、郷の花を象徴とする常春の世が続いている。
ところが、近年になって看過できない事態が発生しているという。
「十二年前、黒夜叉を名乗る男が現れた。その男が引き連れる、自称一族の生き残りが結成した暗躍集団が、黒夜叉集団だ。黒い装束に、揃って身に着けるは二本の角。頭たる黒夜叉は、印として夜叉の面をつけている」
そして、と再び花里姫が言葉を継ぐ。
「その者は、わたくしの兄の仇なのです」
――正確には。
「兄上と、義姉様になるはずだった御方の」
絞り出すような、か細い声だった。ユキを見つめた強いまなざしは陰り、涙こそ流していないが、話を続けようと開かれた口元が小刻みに震えている。話を続けられない花里姫に代わり、仁親が先を続ける。
「花里様の兄君、通晴様は夕月郷の次期当主になるはずの御方だった。十二年前、萌黄の殿の妹君である桜姫様とのご婚礼の日に、黒夜叉集団に襲われた」
黒夜叉集団――萌黄郷の創世に登場する黒夜叉の名を拝借し、夕月郷を枯らすという残忍な野望を模倣する、謎多き集団。婚礼の儀を狙って来襲してきた賊を相手に、夕月の若君は自身の命を犠牲にして愛する花嫁を守ったのだった。
高虎が、悲痛な面持ちで口を開く。
「桜様は一命を取り留めたものの、通晴様のご逝去にたいそう気を落とされてしまい……心を病み、衰弱の果てに身罷られた」
以来、夕月・萌黄の二つの郷にとって、黒夜叉集団は共通の敵となった。婚礼の襲撃以降、月守一族を狙った動きは鳴りを潜めた。たまに夜暗に乗じて村々を襲っているようだが、どれも郷境にある小さな村ばかりで、騒ぎに気付いた時にはもう逃げた後といった有様だった。
仁親や高虎が最も警戒しているのは、花里姫の婚礼だ。男の後継ぎがいない夕月郷は、萌黄郷の当主の弟君を婿に迎えることになっている。夕月郷の存亡に関わるこの重大な婚礼を狙って、黒夜叉集団が再び襲い掛かってくるのではないかと危惧している。
「十二年前と同じことを繰り返してはならん。先の郷巡りは、婚礼の儀を前に黒夜叉の手掛かりを掴むための謀だった」
そんな一大事とは露知らず、ユキはお役目に浮かれていたのだった。その挙句に内通者と間違われ、捕らえられ、刑罰を受け……仁親に助けられた。ユキは、あの夕暮れ時の仁親とのやり取りを思い出す。
「仁親殿が替え玉をしている間、姫様はどうされていたのですか」
「わたくしは、ずっとこの奥屋敷におりました。剣役の代理は、この高虎が」
名を呼ばれた高虎は、少し表情を和らげてユキを見る。
「剣役が姫君のそばを離れるなど本来あってはならないことだが、仁親の他、女子に化けられる形をした者がおらんでな。それで儂が、仁親が姫役をやっている間だけ花里様の剣となっておった……いやあ、姫君の御側に侍るのは久しゅうて。懐かしさにこみ上げるものがござった」
すかさず仁親が頭を下げ、謝辞を述べる。
「流石は萌黄郷の “刀守一等”、花里様をお守りいただき有難うございます」
言葉少なだが、意を掴みかねるユキにもわかるような言い方を選ぶところに、仁親の気遣いが顕れている。初めて口をきいた時の物言いから、ぶっきらぼうな口下手とばかり思っていたが、そうでもないらしい。
萌黄郷には “剣役” がいない。これは正しいようで正しくない。姫君を守るお役目は存在しているが、祖が刀守のため、敬意をこめてその上位の役名を用いない。その代わり刀守に位があり、一等が剣役に値する。
「高虎は元々、桜様の随伴として輿入れと共に夕月郷に移る予定でしたの。それが、あんなことがあって……」
高虎は、桜姫の刀守一等を務めていた。敬愛する姫君と、その伴侶となるはずだった若君。二人の仇をとるまでは、萌黄郷に帰れないと言ってずっとここに留まっているのだ。
「黒夜叉集団について、高虎が主となって調べています。この件を知っているのは、夕月郷ではここにいる二人と、わたくしの父上と母上、そして風読みの東吾。黒夜叉の手掛かりが少ない以上、迂闊に味方を増やせない。しかしまだまだ必要なのです、信のおける者が」
どうして自分にそこまで話すのだろう。ユキは頭がぼうっとして、自分を見つめる姫君の青い瞳に吸い込まれそうになっていた。
一呼吸おいて、姫君はさらに言葉を紡ぐ。
「同じ痛みを経験したユキなら、力を貸してくれますね」
(へっ?)
予想もしていなかった展開に、喉の奥から変な声が出そうになり……なんとか堪えた。しばしの絶句の後、姫君の申し出に何も返事をしていないことに気付き、慌てて叩頭する。
「も、もちろんでございます!お役に立てることがあれば何でもやります!……でも、おいらじゃ力不足では……」
「心配には及ばん。俺が鍛えてやる」
「仁と共に、この奥屋敷に仕えるといいわ。そうすれば、護衛と修行ができて一石二鳥だもの」
ユキはそっと顔を上げ、上目づかいで正面の姫君と隣の仁親を交互に見やる。今、自分がとんでもなく間抜けな顔をしているに違いない。ああ、二人の瞳は似ているな、青く澄んで綺麗だな、などと現実逃避などもしてみた。思考が現実の成り行きに追いつかない。
「それはよい考えじゃ。それでは儂は束の間の剣役を終えて、元通り黒夜叉についての調べを進めるかの」
高虎までもが加わり、急な展開に一人ついていけずユキは混乱する。ついこの間まで一介の郷守に過ぎなかった自分が、濡れ衣で罰せられお役目返上になるかと思いきや、今度はまさか秘密の任務に加わることになったのだ。
「それでは仁、お願いね」
「御意」
この二人、主従の結びつきにしてはやけに親しげな雰囲気だ、とユキは思った。仁親の方は臣下として一線を引いているようだが。それでも、ユキに会いたいという姫君の我儘に気を揉んだり、郷巡りでの刀守の動きに対する辛辣な物言いを窘めたり、まるで家族や恋人を気にかけるような素振りも見せる。
対する花里姫の方は、剣役が辛うじて引いた線をお構いなしに越えており、常に姉弟のような気安さを含んだ口調で話しかけている。
人間は困惑すると、降りかかる問題から目を背けがちだ。まさに今のユキがそれだ。自身の運命の変転をすぐには飲み込めず、頭の中を占めるのは、目の前で繰り広げられる会話の内容よりも、当人たちの関係性についてだった。
「どうした、何か聞きたいことでもあるのか」
疑問符が頭上に浮かんでいる風な様子のユキに気付いた高虎が問いかける。
「お役目のことなら、追々指示を出す故、心配には及ばん。その間おおいに仁親に鍛えてもらうがよいぞ」
「はい、精進いたします。いや、それよりも……」
言いさしたユキを、「ん?」と肩眉を上げて高虎が促す。
「あの、先ほどから姫様は仁親殿を “仁” と呼ばれておられますが……その、お二人は、仲良しなのだなと」
寸の間、ユキ以外の三人が顔を見合わせ――高虎の高笑いが響き渡った。
「はっはっは!何を気にしているのかと思えば、そうか、そうか」
花里姫も、口元を袖で隠して笑いをこらえている。仁親は、相変わらずの無表情だが。
「わたくしと仁は、幼馴染の間柄なのです」
「ああ。花里様が私を仁と呼ぶのは、幼いころからそう呼んでいるから」
それだけだ、とぶっきらぼうに言葉を結ぶ仁親。それを聞いて、笑いながら高虎が説明を補足する。
「確か、仁親の“親”という字が書けなくて、不貞腐れてその字を無視したのが始まりだとか」
「高虎!それは秘密よ!」
「これは失敬!」
顔を真っ赤に染めて抗議する姫君を一瞥し、仁親が口を開く。
「花里様が仁と呼ぶから、周りは自然と“剣役=ジン”と覚えてしまったようだ。誰ともなく、風使いのジンと呼び始めた」
通り名の起源は、剣の主君だった。
意外な収穫、ことに二人の幼少の逸話を聞いて、ユキの顔にも笑みが灯った。それを見て、姫君も小言を収めて笑顔を向ける。郷の花は、どんな表情をしていても美しかった。にこやかな微笑みも、厳しく口を結んだ顔つきも、涙を堪える様子も、頬を染めて怒るところも。今まで遠い存在だった姫君だが、初めての謁見で色々な表情を見て、少し親近感がわいた。親近感というと不敬にあたるかもしれないが、郷の象徴としてではなく、一人の人間として接することができて良かったと思った。この御方を守りたい、守れるだけの力を得たいと固く心に誓った。
ある日の朝、ユキは鍛錬場の隅で一人竹刀の素振りをしていた。周囲では、対になって剣を打ち合ったり、徒手で投げ合いをしたりと、郷守たちが稽古に励んでいる。
郷巡りの一件以来、ユキと行動を共にするものはいなくなった。姫御輿を襲った平七と一緒にいたユキも危険人物と見なされたようで、他の郷守たちに白い目で見られながら、その小さな体をさらに小さくするように過ごしていた。
よく一緒におしゃべりに花を咲かせていた伊助と弥助は、郷巡りのお役目に加わっていなかったことが幸いし、冷遇の憂き目にはあわずに済んでいる。そして両人は、自分たちに被害が及ばぬよう、ユキを避け続けていた。そのため、ユキは弁解する機会もなく孤独に過ごしていた。
あの騒動の詳細は伏せられたはずだったが、郷巡りに参加した男たちから少しずつ話が漏れ伝わっていた。姫御輿が襲われたこと、下手人が平七だということ、そしてユキが水車の刑に科せられたという話が、留守番組の男たちの耳に入っていた。一度罰せられた人間がお役目に復帰したということは、疑いが晴れたということを意味するのだが、事が事、郷の花の命にかかわる出来事なだけに、誰もユキと関わろうとしない。ただ一人を除いては。
「久しいな」
「由さん!」
声をかけてきたのは、真新しい装束に身を包んだ由ノ進だ。
「励んでいるな。どうだ、少し顔を貸さないか」
一人でできることに限界を感じていたユキは、喜んでその申し出を受けることにした。
二人は、人気のない屋敷の裏手の方までやってきた。鍛錬場の方から、男たちの掛け声がかすかに聞こえる。
「怪我の具合はもう大丈夫か」
「おう!ほれ、この通りさ!」
あの郷巡りの日、平七が仁親に斬られた後、ユキは姫御輿の右側に配置されていた刀守たちに取り囲まれた。姫御輿が死角になって、平七を止めようとするユキの姿が見えなかったばかりに、共謀者だと勘違いされたらしい。さらに不運なことに、姫御輿の正面にいた東吾が騒ぎに気付いて振り返った時、ユキが刀守に取り押さえられている様子を目にしてしまった。そのせいで水車の刑に科せられてしまったのだ。
努めて強がってみせるユキに、由ノ進は労わりの言葉をかける。
「とんだ災難だったな」
ユキと同じ側にも数人いたはずだが、彼らをはじめあの場にいたほぼ全ての郷守・刀守は、姫御輿から飛び出てきた姫装束に釘付けになっており、哀れな少年が捕まる姿など目に入っていなかった。
そんな中、由ノ進はただ一人冷静に事を見極め、伸びた平七を縛り上げていた。実際に手をかけたのは仁親だったが、由ノ進は下手人捕縛の功により、念願の刀守への昇格を果たしたのだ。
「すぐに助けてやれなくて済まなかった。気が付いた時には、お前が引っ立てられた後だったんだ」
「いいんだ。下手人を捕まえるほうが大事だ。由さんはお役目を全うしただけだろう」
平七を縛り上げて終わりかと思いきや、まさかユキまで捕まるとは思っていなかったと、由ノ進はすまなそうに言う。
「いや、謝らせてくれ。あの時、お前を疑う気持ちが全く無かったわけではないのだ。俺の位置からは凶行の瞬間は見えなかったんだ。……少しでもお前を疑ったこと、許してくれ」
言わなければわからなかったものを、由ノ進から律義に謝罪の言を述べられ、ユキは救われた気になった。鍛錬でも居場所がなく、見回りでも仲間たちに口をきいてもらえず、心細く過ごしていたユキには、自分を信じてくれる存在がいるだけで心強かった。
「ところで、新しいお役目にはもう慣れた?刀守ってどんなお役目なんだい?由さんの他にも双刀はいるのかい?」
刀守になったばかりで忙しいだろうに、居場所のない自分を案じて会いに来てくれたことが嬉しくて、ユキの声は自然と弾む。
「そういっぺんに聞くなよ」
由ノ進は今、郷の南西にある村々の管理を任されているらしい。各村の視察や郷守のとりまとめ、殿に納める作物の出来を確認したりと、なかなか忙しく過ごしているようだ。郷娘へのちょっかいは程々に抑え、至極真面目にお役目に励んでいるとは、本人の言だ。
「久方ぶりに郷屋敷へ参ったが、やはり落ち着くな」
今日は受け持ちの村々の状況報告をしに、顔を出したという。二人が顔を合わせるのは郷巡りの日以来だ。郷守時代は毎日のように一緒に過ごしていただけに、ユキも由ノ進も物足りない思いを抱えながら日々を過ごしていた。お互いあえてその名を口には出さないが、ある男の存在を意識せずにはいられないのだ。かつての仲間であり、あの騒動を起こした張本人の話題を避けるように、二人は思い出話に花を咲かせる。
「それにしても……ククッ……しかし」
新米の刀守は、思い出したように笑いを漏らす。
「『花の姫君』かと思いきや、お前が見惚れた相手が男だったとはな!」
「そっ、それは言うなよう!」
「本当に、見たこともないくらい美しい目をしていたんだ」
「ほう。さような眼の持ち主とやらに会ってみたいものだな」
赤面する少年は必死に言い訳するも、由ノ進のからかいは止みそうにない。薄笑いを浮かべる顔ですら女子がみたら卒倒するほどの男振りで、様になっているのがなんとも憎らしい。
「あの御方は、仁親殿というんだ」
ユキは、自分を助けてくれたのが仁親だったこと、仁親こそが剣役であることを打ち明けた。そしてあたかも剣役のように振舞っていた大男は風読みの東吾だと教えると、由ノ進は予想通りの反応を見せた。
「これはたまげた!当代の風読みは医術に秀でた博識な御仁と聞いていたから、あんな武人のような見た目とは思わなんだ」
風読みにしておくには勿体ない体格だと、由ノ進は残念そうに笑う。
「そういえば仁親殿も、東吾殿は万物に通じたお方だと言っていたな」
「お前、風仁と話をしたのか!」
お互いの生まれた村の話や、ユキの故郷で見える不思議な月の話をしたこと。剣役の愛馬に乗せてもらったこと。ユキはあの夕暮れの出来事を、それはそれは大事な宝物のように語った。
「剣役と親しくなるなんて、刀守の中にだってそんな奴はいないだろうよ。怪我の功名ってやつだな」
その怪我は、危うく命を落としなかねないものだった。有難いご縁ではあるのだが、水責めは二度と御免こうむりたい。
「是非一度手合わせ願いたいと、伝えてくれよ」
曖昧な笑みで応えるユキ。伝えてくれよ、と言われても、次にいつ会えるかわからない相手だ。もしかしたら、もう二度と会うことはないかもしれない。由ノ進の方も、それを承知で軽口を叩いたに過ぎない。
ユキの元気そうな様子を見て安心した由ノ進は、そろそろ残りの用向きを済ませねばと話を切り上げる。実はこの後、風読みに謁見するのだという。ユキの頭をポンと小突くと、その手を後ろ手に振って立ち去っていった。庭先で待機していた仲間の刀守たちに合流する姿を、ユキは少しの寂しさを抱えて建物の陰から見送った。
「さて、そろそろ昼飯だな」
その後には見回りも控えているぞ、独りごとを言ってみる。己を鼓舞するように、平手で両頬をバチンを叩く。しばらくぶりの談笑の余韻を残したまま、ユキは足取り軽く歩き出した。
昼飯をささっとかきこみ、昼一番の見回りに赴く。今日も今日とて、周りの郷守たちとは必要最低限のやりとりしかしていない。見回りを終えて鍛錬場に向かう道すがら、ユキは上役の刀守に呼び止められた。
「午後の鍛錬はよいから、ついて参れ」
またしてもあの騒動の聞き取りか、それともとうとうお役御免になったのか。いずれにしても良い用向きは期待できず、郷守たちと馴染めなくなったユキにはもうここに居場所はないのかもしれない。鬱々とした気持ちを抱えながら首を垂れていたために、ユキは自分がどこを歩いているのか認識していなかった。
「連れてまいりました」
上役の声にはっとして顔を上げる。気が付けば庭園の奥、足を踏み入れたことのない場所に来ていた。前に立つ上役の背中からそっと顔をのぞかせると、池のほとりに見覚えのある人物が立っていた。
「さがってよい」
「は。ユキ、失礼のないようにな」
去り際に小声で耳打ちすると、上役は心配そうに一度振り返り、そして一礼して立ち去った。
「急に呼び出して済まないな」
二度目は存外早くきた。詫びの台詞とは裏腹に、無表情でユキを迎えたのは仁親だ。剣役の御仁が、一介の郷守に何の用だろうか。
「お、お久しぶりにございます。仁親殿におかれましては……」
「平七が死んだ」
思いがけない一言に、ユキは全身が凍り付いた。兄貴分としての平七は頭から消し去り、反逆者として認識を改めたつもりだったが、動揺を隠せなかった。
仁親によると、今朝舌を噛んで死んでいるところを発見されたという。牢の前には刀守が見張りとして二人ついていたが、目を離した隙に命を絶ったようだ。
「尋問に応じず、毎日手を焼いていたらしいが……結局、奴らの手掛かりは未だつかめていない」
奴らというのは平七が組していた集団、もといユキの村を襲った賊のことだ。ユキは、自分が呼び出された理由が薄々わかってきた。賊を見たことがある身近な人間として、白羽の矢が立ったのだろう。この後の言葉は容易に想像がつく。賊は何人いたか、襲われた時の様子は、武器は何だったか……事細かく聞かれるのだろう。命令にしろ要請にしろ、ユキには逆らう術はない。まぶたをぎゅっと閉じて、覚悟を決める。
「姫様がお前に会いたがっている」
「へ?」
話の脈絡の無さに、ユキは拍子抜けする。物騒な賊の話と姫君が、どう繋がるのだろうか。相変わらず言いたいことだけを単発で、過程をすっ飛ばして話すものだから、理解が追いつかない。
「あまりこういう類の話はお耳に入れたくないのだが……困ったことに、当の本人が会わせろと言って聞かないんだ。いいか、あまり惨たらしい言い回しはするなよ。本来、姫君のもとに穢れを持ち込んではならぬのだから」
どうやら、賊の話を姫君の前でしろということらしい。それも、ユキが見聞きしたものを控えめにという注文つきで。
狂ったように雄たけびをあげて攻め入る賊や、首を刺されて血しぶきと共に倒れた隣家の姉さん、丸焦げになった友のことなどは……言わないほうが無難であろう。
「わかりました。おいらでお役に立てることがあるなら」
その言葉に頷くと、仁親はついて来いとユキを促し歩き出した。
庭を突っ切ると、屋敷の端にある廂の間に到着した。見覚えのある生け垣が、視界の端に映りこんだ。
「履物はここで脱げ。謁見の前に “邪払い” をする」
ユキの正面に立つと、仁親は目を閉じてボソボソと何か呪文のような言葉を口にしだした。そのまま片手を軽く握って額の前に持ってくると、一呼吸おいて目を開く。そして何事もなかったかのように、渡り廊下を歩き出した。ユキも何かしたほうが良いのか迷っていると、先を行く仁親が振り返った。
「どうした、ついて来い。もう“邪払い” は済んでいる」
「は、はい!」
未知の儀式に戸惑っているユキをよそに、ずんずん歩みを進めていく。
「知っていると思うが、この渡殿は奥屋敷へ通じている。まもなく姫と見える故、心せよ」
少年の顔が火照る。お互いの目が合ったあの時、女装した仁親が歩いていた場所を、その当人と共に歩くことになるなど、あの頃のユキは想像だにしていなかった。
ユキが通された奥の間は、その名の通り屋敷の奥にある部屋だ。ユキの正面は床が一段高くなっており、姫君が着座するであろう台座が設えてある。ユキから台座まで、その距離およそ十尺(三メートル)。外の音は一切聞こえず、平伏しているため視界は床板のみと、ユキは聴覚と視覚がふさがれたような格好で姫君の入室を待つ。平身低頭で緊張状態のユキに対し、隣の仁親は上体を軽く下げるのみで涼しい顔をしている。
やがて衣擦れの音と、鈴を転がすような声が前方から聞こえた。
「よく来てくれました。面を上げて頂戴」
郷の花は、愛らしい笑顔をたたえて台座に腰を下ろしていた。その縁は朱で描かれた花々で彩られており、長く艶やかな黒髪に映える姫君の美しさを一層引き立たせている。淡い桃色の着物に焚き染めた香が、少し離れたところに座っているユキの鼻をほのかにくすぐった。
年の頃はユキよりいくつか上の印象を受けた。少し垂れた目元と、紅のさす頬、緩やかに弧を描く薄紅色の唇。青みがかった大きな瞳が、優しくユキを見つめている。いつか想像した、月光に照らされた泉の女神が目の前にいるような気分だ。
「花里様、こちらが例の少年です」
「無理を言って御免なさいね、仁」
花里姫。それが郷の花の名だ。あまりにも畏れ多く、郷屋敷に仕える者たちは皆、直接御名を口にすることを避けていた。民に至っては、姫君の名を知る者はほとんどいない。それほどまでに、郷の花は遠く高貴な存在なのだ。
その雅やかな微笑みに目を離せずにいると、ユキから見て姫君の右隣にいる壮年の男が笑いながら話しかけてきた。
「姫様の御前だ、見惚れるのは構わんが、まずは名を申せ」
「もっ申し訳ございまして……ユ、ユキといいます。ささささ郷守としてお仕え申しており候、お初にお目にかかかりもうしあげたたたたてまつり……」
しどろもどろで答えるユキに代わり、仁親が後を引き継ぐ。大方の話は、予め伝えてあったのだろう。この年若い郷守は賊に襲われた山吹村の生き残りであり、先の郷巡りでは騒動の渦中にいたのだと、簡潔に話す。
「周りにいた刀守たちは、そなたを取り押さえたんでしょう。なんて間抜けなこと!」
「言葉が過ぎます、花里様」
「あら、本当のことじゃあないの」
苦言を呈する仁親に、すまし顔で応酬する姫君。二人を交互に見やる困り顔のユキ。見かねた側仕えの男が、またもや笑いながら口をはさむ。
「姫様、話が先に進んでおりませんぞ」
「あら高虎、仁がいけないのよ。……さて、ユキ」
名を呼ばれて飛び上がりそうになるユキ。先ほどまでの笑みが消えた真剣なまなざしの姫君に見つめられ、緊張は最高潮に達していた。
「そなたとって辛い記憶だとは承知しておるが、村が襲われた時のことを詳しく聞かせてほしいのです」
誰一人、声を発さぬ間ができた。天井から、きいん、という音がする。実際には何も鳴っていないのだが、空気を振るわせるその場の緊張が、音となってユキの耳に届いた。
花里姫は依然、ユキを見つめたままだ。蔀の開いた南側から差し込む陽光が、明障子を通して姫君に柔らかく降り注ぐ。光を纏うその神々しい姿を直視できないユキは、自分の膝の先にある床の木目に視線を移す。そのまま口を開こうとして、一瞬ためらった後に隣の仁親を見やる。あの夕暮れ時と同じように、自分の傍らには仁親がいる。それが心強かった。仁親が無言で頷いてみせると、ユキは決心がついたように居住まいを正す。
「その晩は新月で、早々に寝床に入ったんです。村のみんなが寝静まった頃、外が急に明るくなって……」
惨憺たる夜の出来事を、事前に仁親に言われた通り、言葉を選んで慎重に話す。誰かの叫び声に飛び起きると、日が昇る前だというのに障子戸が明々と照らされていた。方々から「賊だ」と叫ぶ声が聞こえ、赤い光は燃え盛る炎なのだと悟った。金属の打ち付ける音、戸を破壊する音が迫り、一瞬にして今生の別れを決めた親は、命に代えて子を匿った。
「おっか――かあさまが、おいらをこっそり逃がしてくれたんです。お前は足が速いから、郷屋敷に走って助けを求めるんだよって」
火の海にのまれた故郷を命からがら脱出し、闇の廃墟と化した森の中を、夕月郷の中央にある郷屋敷に向かって駆けた。新月は、歩きなれた森を魑魅の巣窟に変えた。足元も、行き先も、これから生きてゆく道も何も見えない真っ暗闇を、傷だらけになりながら走り抜けた。そして郷屋敷にたどり着く手前で行き倒れたところを平七に拾われ、郷守になった。その平七こそが、賊の一味だとも気付かずに。
「……平七は、どうしておいらを生かしておいたのでしょうか」
誰に対するでもない問いだった。隣に座する剣役が口を開く。
「郷屋敷の近くで騒ぎを起こすわけにはいかんだろう」
死体の処理に困るからな、とは流石に姫君の前では口にできなかった。
「あの時お前は、平七を見て賊とは考えなかったのであろう。それは何故だ」
「そ、それは……何でだったかな。……ああ、そうだ。月の紋様が見えたんです。よく村の見回りに来ていた郷守たちと、同じ装束を着ていたからです。賊たちは黒い衣に、頭には角を生やしたような恰好をしていたもんで、それでまさか賊の一味だとはこれっぽっちも」
己が情けなくなり、次第に声が小さくなる。視界の床板が微かに滲む。平七と出会った最初の晩の違和感にもっと早く気付いていれば、何かが変わっていたのかもしれない。
ユキは知る由もなかったが、あの晩村を襲った賊は、闇に紛れる黒い装束姿で不寝番の目を掻い潜ったのだ。賊の侵入に気が付いた時はもう手遅れだった。ユキが逃げおおせたのは奇跡といって良かった。近くの詰所から郷守たちがすぐさま駆けつけて賊に対抗したが、その安否は定かではない。
「して、どう考える高虎」
「十中八九、黒夜叉集団の仕業でしょうな」
姫君の下問に、高虎と呼ばれた側仕えが応じる。
「おそらく平七は、物見として控えていたのでしょう。郷屋敷まで逃れて来れる者の存在は想定外だったはず。郷守の姿で迂闊なことはできぬ故、ユキを助けた形をとったというのが妥当かと。以後、兄貴分を気取って手元に置くことで、監視していたのでしょうな」
耳の下から顎にかけてたくわえた、白と灰色が混ざるひげを右手で擦りながら尋思する。目を細めながら語る高虎が向ける、武人独特の射貫くような視線に、ユキは居心地の悪さを感じていた。
それを察してか、仁親が横から口をはさむ。
「黒い衣に頭に角を生やしたような恰好と申していたが、他に特徴は」
「ええと、そうだ。頭の片側に、鬼のようなお面をつけている男がいました」
「……夜叉面か」
応じた仁親と、正面の花里姫と、高虎が揃って渋い表情を作る。
「十二年前の悪霊が目を醒ましたか」
何か心当たりのある風な三人についていけないユキの様子を見て、姫君が問いかける。
「萌黄郷の創成期の話を聞いたことがありますか」
「はい、少しだけ。夕月郷を襲った悪者たちから、郷の花を守った刀守が始祖だと」
この先は私めが、と話を引き受けたのは高虎だ。
「その者どもは黒夜叉一族と呼ばれていた。萌黄郷を賜った冬守家初代当主によって、一族もろとも、とこしえの闇に葬られたのだ」
以来、郷に泰平がもたらされた。今日まで、郷の花を象徴とする常春の世が続いている。
ところが、近年になって看過できない事態が発生しているという。
「十二年前、黒夜叉を名乗る男が現れた。その男が引き連れる、自称一族の生き残りが結成した暗躍集団が、黒夜叉集団だ。黒い装束に、揃って身に着けるは二本の角。頭たる黒夜叉は、印として夜叉の面をつけている」
そして、と再び花里姫が言葉を継ぐ。
「その者は、わたくしの兄の仇なのです」
――正確には。
「兄上と、義姉様になるはずだった御方の」
絞り出すような、か細い声だった。ユキを見つめた強いまなざしは陰り、涙こそ流していないが、話を続けようと開かれた口元が小刻みに震えている。話を続けられない花里姫に代わり、仁親が先を続ける。
「花里様の兄君、通晴様は夕月郷の次期当主になるはずの御方だった。十二年前、萌黄の殿の妹君である桜姫様とのご婚礼の日に、黒夜叉集団に襲われた」
黒夜叉集団――萌黄郷の創世に登場する黒夜叉の名を拝借し、夕月郷を枯らすという残忍な野望を模倣する、謎多き集団。婚礼の儀を狙って来襲してきた賊を相手に、夕月の若君は自身の命を犠牲にして愛する花嫁を守ったのだった。
高虎が、悲痛な面持ちで口を開く。
「桜様は一命を取り留めたものの、通晴様のご逝去にたいそう気を落とされてしまい……心を病み、衰弱の果てに身罷られた」
以来、夕月・萌黄の二つの郷にとって、黒夜叉集団は共通の敵となった。婚礼の襲撃以降、月守一族を狙った動きは鳴りを潜めた。たまに夜暗に乗じて村々を襲っているようだが、どれも郷境にある小さな村ばかりで、騒ぎに気付いた時にはもう逃げた後といった有様だった。
仁親や高虎が最も警戒しているのは、花里姫の婚礼だ。男の後継ぎがいない夕月郷は、萌黄郷の当主の弟君を婿に迎えることになっている。夕月郷の存亡に関わるこの重大な婚礼を狙って、黒夜叉集団が再び襲い掛かってくるのではないかと危惧している。
「十二年前と同じことを繰り返してはならん。先の郷巡りは、婚礼の儀を前に黒夜叉の手掛かりを掴むための謀だった」
そんな一大事とは露知らず、ユキはお役目に浮かれていたのだった。その挙句に内通者と間違われ、捕らえられ、刑罰を受け……仁親に助けられた。ユキは、あの夕暮れ時の仁親とのやり取りを思い出す。
「仁親殿が替え玉をしている間、姫様はどうされていたのですか」
「わたくしは、ずっとこの奥屋敷におりました。剣役の代理は、この高虎が」
名を呼ばれた高虎は、少し表情を和らげてユキを見る。
「剣役が姫君のそばを離れるなど本来あってはならないことだが、仁親の他、女子に化けられる形をした者がおらんでな。それで儂が、仁親が姫役をやっている間だけ花里様の剣となっておった……いやあ、姫君の御側に侍るのは久しゅうて。懐かしさにこみ上げるものがござった」
すかさず仁親が頭を下げ、謝辞を述べる。
「流石は萌黄郷の “刀守一等”、花里様をお守りいただき有難うございます」
言葉少なだが、意を掴みかねるユキにもわかるような言い方を選ぶところに、仁親の気遣いが顕れている。初めて口をきいた時の物言いから、ぶっきらぼうな口下手とばかり思っていたが、そうでもないらしい。
萌黄郷には “剣役” がいない。これは正しいようで正しくない。姫君を守るお役目は存在しているが、祖が刀守のため、敬意をこめてその上位の役名を用いない。その代わり刀守に位があり、一等が剣役に値する。
「高虎は元々、桜様の随伴として輿入れと共に夕月郷に移る予定でしたの。それが、あんなことがあって……」
高虎は、桜姫の刀守一等を務めていた。敬愛する姫君と、その伴侶となるはずだった若君。二人の仇をとるまでは、萌黄郷に帰れないと言ってずっとここに留まっているのだ。
「黒夜叉集団について、高虎が主となって調べています。この件を知っているのは、夕月郷ではここにいる二人と、わたくしの父上と母上、そして風読みの東吾。黒夜叉の手掛かりが少ない以上、迂闊に味方を増やせない。しかしまだまだ必要なのです、信のおける者が」
どうして自分にそこまで話すのだろう。ユキは頭がぼうっとして、自分を見つめる姫君の青い瞳に吸い込まれそうになっていた。
一呼吸おいて、姫君はさらに言葉を紡ぐ。
「同じ痛みを経験したユキなら、力を貸してくれますね」
(へっ?)
予想もしていなかった展開に、喉の奥から変な声が出そうになり……なんとか堪えた。しばしの絶句の後、姫君の申し出に何も返事をしていないことに気付き、慌てて叩頭する。
「も、もちろんでございます!お役に立てることがあれば何でもやります!……でも、おいらじゃ力不足では……」
「心配には及ばん。俺が鍛えてやる」
「仁と共に、この奥屋敷に仕えるといいわ。そうすれば、護衛と修行ができて一石二鳥だもの」
ユキはそっと顔を上げ、上目づかいで正面の姫君と隣の仁親を交互に見やる。今、自分がとんでもなく間抜けな顔をしているに違いない。ああ、二人の瞳は似ているな、青く澄んで綺麗だな、などと現実逃避などもしてみた。思考が現実の成り行きに追いつかない。
「それはよい考えじゃ。それでは儂は束の間の剣役を終えて、元通り黒夜叉についての調べを進めるかの」
高虎までもが加わり、急な展開に一人ついていけずユキは混乱する。ついこの間まで一介の郷守に過ぎなかった自分が、濡れ衣で罰せられお役目返上になるかと思いきや、今度はまさか秘密の任務に加わることになったのだ。
「それでは仁、お願いね」
「御意」
この二人、主従の結びつきにしてはやけに親しげな雰囲気だ、とユキは思った。仁親の方は臣下として一線を引いているようだが。それでも、ユキに会いたいという姫君の我儘に気を揉んだり、郷巡りでの刀守の動きに対する辛辣な物言いを窘めたり、まるで家族や恋人を気にかけるような素振りも見せる。
対する花里姫の方は、剣役が辛うじて引いた線をお構いなしに越えており、常に姉弟のような気安さを含んだ口調で話しかけている。
人間は困惑すると、降りかかる問題から目を背けがちだ。まさに今のユキがそれだ。自身の運命の変転をすぐには飲み込めず、頭の中を占めるのは、目の前で繰り広げられる会話の内容よりも、当人たちの関係性についてだった。
「どうした、何か聞きたいことでもあるのか」
疑問符が頭上に浮かんでいる風な様子のユキに気付いた高虎が問いかける。
「お役目のことなら、追々指示を出す故、心配には及ばん。その間おおいに仁親に鍛えてもらうがよいぞ」
「はい、精進いたします。いや、それよりも……」
言いさしたユキを、「ん?」と肩眉を上げて高虎が促す。
「あの、先ほどから姫様は仁親殿を “仁” と呼ばれておられますが……その、お二人は、仲良しなのだなと」
寸の間、ユキ以外の三人が顔を見合わせ――高虎の高笑いが響き渡った。
「はっはっは!何を気にしているのかと思えば、そうか、そうか」
花里姫も、口元を袖で隠して笑いをこらえている。仁親は、相変わらずの無表情だが。
「わたくしと仁は、幼馴染の間柄なのです」
「ああ。花里様が私を仁と呼ぶのは、幼いころからそう呼んでいるから」
それだけだ、とぶっきらぼうに言葉を結ぶ仁親。それを聞いて、笑いながら高虎が説明を補足する。
「確か、仁親の“親”という字が書けなくて、不貞腐れてその字を無視したのが始まりだとか」
「高虎!それは秘密よ!」
「これは失敬!」
顔を真っ赤に染めて抗議する姫君を一瞥し、仁親が口を開く。
「花里様が仁と呼ぶから、周りは自然と“剣役=ジン”と覚えてしまったようだ。誰ともなく、風使いのジンと呼び始めた」
通り名の起源は、剣の主君だった。
意外な収穫、ことに二人の幼少の逸話を聞いて、ユキの顔にも笑みが灯った。それを見て、姫君も小言を収めて笑顔を向ける。郷の花は、どんな表情をしていても美しかった。にこやかな微笑みも、厳しく口を結んだ顔つきも、涙を堪える様子も、頬を染めて怒るところも。今まで遠い存在だった姫君だが、初めての謁見で色々な表情を見て、少し親近感がわいた。親近感というと不敬にあたるかもしれないが、郷の象徴としてではなく、一人の人間として接することができて良かったと思った。この御方を守りたい、守れるだけの力を得たいと固く心に誓った。
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※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
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