成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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 そう思いながら大きく背を伸ばしたリアーヌの目にこの村ののどかな風景と、そしてその向こうに、雪化粧された大きな山がそびえ立っていたーー

(ーーケーキ……山……そしてこの村には栗がある……これはモンブラン一択なのでは……⁉︎ あの形状のクリームって専用器具がないと無理だったりするのかな……? ーーまぁ、どの道作るのは私じゃなくラッフィナート家の料理人で、私が出すのは口だけだからな……)



「おおー! 意外になんとかなるもんですねぇ⁉︎」

 ラッフィナート家の料理人を主軸に、アンナやオリバーまでもが意見やアイデアを出し合い、完成させたモンブラン。
 それはリアーヌが想像していた以上に、モンブランの形や食感を再現していた。

(あの細くてシュルシュルっとした上のは無理かな? って思ってたけど……やろうとも思えば道具がなくたってできるもんなんだなぁー)

 リアーヌは邪魔にならないよう隅の方で紅茶を呑みつつ、片付けをしている料理人やアンナたちに尊敬を込めた眼差しを送りつつ、感嘆の吐息をもらす。

 リアーヌから口頭で作りたいケーキの説明をされた料理人は、頭を捻りつつもマロンペーストを作りあげると、パラフィン紙のようなものを用意し、クリームを絞る要領でモンブランを作り上げてしまった。
 しかしそれでも、手伝ってくれた村の子供たち全員に配るほどの量を作り上げるのは時間がかかり過ぎる……という話になったのだが、そこで手を挙げたのがアンナやカチヤ、コリアンナのリアーヌ付きの使用人たちだった。
 そして、なぜだが手を挙げていないオリバーまで巻き込んで、その場でその技術を習得してみせた。
 そしてあっという間に子供たちのケーキを作り上げ、ゼクスたちにまで差し入れる分と自分達で味わう分まで確保して見せたのだった。

(いやぁ……私が手なんか出さないほうが早く出来るとは思ってたけど、本当に口だけしか出して無いのにモンブランが出来上がってしまったんだぜ……ーーあ、モンブランじゃなくモンドゴラって名前にしたんだった。 当たり前だけどこの世界にはモンブラン山が無いもんでさぁ……アンナさんに『それでこのケーキはどのようなお名前なんですか?』って聞かれた時、まぁ焦ったよねぇー……ーー今考えれば、あの時モンブランだ! って言い張ればモンブランになった説もあるな……? ーーでもモンドゴラ山ってこの村があるこの山の名前で、ケーキの名前を教えた時子供たちもディーターさんやディルクさんたちも凄い喜んでくれたし! 語感もちょっとモンブランに似てるし! 私、わりといい仕事したと思ってるよ!)
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