成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世

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「ーーでは、この辺りで」

 パトリックがビアンカをエスコートしながらリアーヌたちに会釈する。
 それに二人も軽く頭を下げながら、だいぶカジュアルな別れの挨拶を返した。

「ごゆっくり」
「また明日ねー」

 ビアンカも軽く「またね」と返し、二人は仲睦まじそうに寄り添いながら店の奥まで歩いて行った。


「ーーじゃあ……俺たちはドコ行こっか?」

 店の外に出たゼクスは大通りを見回しながらたずねる。

「ええと……」

(大通りにあるお店で、どこか行きたいトコあったかなぁ……? ーー美味しくってもマナーとかに気を使わなきゃいけない高級店はパスかなぁ……)

「そういえば学院近くにある店が、新商品でスフレを出したんだって。 出てくるまでに時間はかかるらしいけど出来たてのスフレが食べられるって評判らしいよ?」
「ーー出来立てのスフレ……!」

(なにその美味しそうな響き! もう絶対そこ! あ、もうすでに私の口はスフレの口です!)

「行ってみる?」
「ぜひ!」

 普段ならば馬車で移動する二人だったが、この日はせっかくだから……と大通りを二人並んでのんびり歩いていく。
 その周囲を騎士たちが五人も六人も取り囲んでの散策だったので、周りから見れば“のんびり”とは遠くかけ離れていたが、本人たちはそこまで気にすることなく興味深そうに辺りをキョロキョロと見回している。

「ーーそういえば、大通りはよく通りますけど、お店はあんまり来たことありませんね?」
「大通りは観光客向けの店か、王族が来ても対応できるような店が多いからねぇ? 前者はともかく後者は、リアーヌ好きじゃないだろ?」
「……客に過剰なマナーを強要する店は好きではありません」
「ーー客が客に求めてるトコもある気がするけどね……?」
「……他の人ジソジロ見るのはマナー違反なのに……」
「そりゃそうなんだけどねー?」

 ブッスリと顔をしかめるリアーヌにゼクスはクスクスと笑いながら、大通りを歩き続ける。

 途中、いくつかリアーヌの興味を引く店を冷やかしたり、ゼクスがよく来るという店で買い物を楽しんだりしながら目的の店を目指す。

「ーーこのままだと、スフレのお店に着く前に日が暮れるかもしれません……」

 少し興味を惹かれた店に「入ろうか?」とたずねられ、リアーヌは不安そうに答える。
 そんなリアーヌに、ぷふっと吹き出したゼクスはケラケラと笑いながら答えた。

「そしたらまた次来ればいいよ。 婚約の凍結も解除になったんだし、なんの問題もないーーだろ?」
「……また、散策してもいい……?」
「もちろん。 ーーこんな豪華な護衛は付かないけどね?」

 声をひそめ、冗談めかして答えるゼクスに、リアーヌはクスリと笑顔を浮かべながら、芝居がかった様子で答えた。
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