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37話:服の修復
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捕らえた三人は転移魔法を展開し、エリンギの街へと転送した。しっかり縄で縛りつけ、密猟者だという事を張り紙つけて城の前に放りだしたので、ちゃんと捕まってくれるだろう。
「さて服は取り戻したんだけどな……」
軽く脅して取り返したが、無理やり取っただけあってところどころ裂けている。これでは着る事は出来ないしどうしたものか……
とりあえず持っていくとするか……
四人のいる場所へと戻る事にした。
◇
「あっ、ジンさん!」
「戻ったよ~」
「どうだった?」
「しっかり犯人捕まえてエリンギに送り返して、物も取返しはしたんだけどさ……」
服をみんなの前に出すと、四人とも複雑な表情を見せる。
「罠に嵌めて無理やり剥ぎ取ったらしくてさ……」
「なるほどね……でもこれだと流石に着れないわよね……」
「そうなんだよね……」
時間を操る魔法ってのもあるにはあるので、使えば服を破損する前の状態に戻すことは可能だが、時間系統の魔法の使用は二十柱の王より制限が課されているので安易には使えない。これを時間を戻して治すとなると、この服に対して三十分以上の時間を戻す事になり、すると向こうから警告が来るかもしれないからな。
「ミーナ出来るかい?」
この中だと一番できそうな感じがするのはミーナだ。
「多少は出来ますけど、そこまでの破損となると私じゃ難しいですね……」
弱ったな……いっそ俺が治すか……でもそんなにうまく治せる自信はないな。
「裁縫なら私やろうかしら?」
「えっ……」
それを言い出したのはセーブルだ。
「出来るのかい?」
「ええ、火傷で部屋に籠ってた頃暇つぶしにやってたから、これぐらいの破損ならたぶんなんとかなるわ」
「セーブルにそんな才能が……」
シーラは出来なさそうなイメージだな。流石に本人には言わないけど……
「それじゃあ、早速やって貰えるかい?」
「でも糸や針がないと流石にきついわ……」
「それならすぐ準備するよ」
収納空間から糸と布と針を用意する。勇者だった頃、とある街で裁縫をやらされる事があったのでその時の物が収納しっぱなしで残っていた。
「これで大丈夫かい?」
「問題ないわ。少し時間頂戴ね」
やる事三十分、少し違和感はあるものの、裂けた部分を修正したのだ。糸は丈夫な魔物の素材から取った奴を使ったから、前より強度という面では上がっただろう。しかし思ってた以上に上手く修正されており、セーブルの腕にはびっくりだ。
「凄い……」
「セーブルにこんな才能が……」
「へへん~私にかかればこんなものよ~」
ドヤ顔を見せながら自信満々に言う。戦闘だけでなくこういう面にも優れているとはな。
「それじゃあ早速これを返しましょう」
リオが蜜熊に服を返すと、それを受け取る服を着る。
「ハチミツ~」
大きな声で叫び、その場で動き回る。
目の前でそんな大きな声を出されると耳に響くからやめてくれって感じだが、念話じゃないといくら言っても伝わらなんな。
「(耳に響くから少し静かに頼む)」
「(ごめんごめん~つい嬉しくて)」
「(それで大丈夫かい?)」
「(ありがとう~これで森の中を堂々と移動できるよ)」
念話からも嬉しそうな感じなのがわかる。俺からすればそんなあってもなくても変わらないと思うがそれは敢えて言わないでおくとしよう。本家はとは似ても似つかん。
「(あいつらは捕らえて追い出したからもう大丈夫だが、今後もこういう事あるかもしれないから気を付けてな)」
「(オーケー、こんな事全然なかったから油断しちゃったけど、仲間にも伝えて、今後は気をつけるよ。)」
「(ああ)」
少し道草をくってしまったがこれでナットウの街に移動できるな。だがこうやって密猟者が出た以上今後も出て来るかもしれないし、何かしらの対策を立てないといけないかもしれないな。
◇
「陛下、本当に大丈夫なのでしょうか?」
その頃勇者を召喚したリレイル王国の王都ナハトでは国王とその手下達が話しをしていた。
「問題なかろう、五人もいるのだぞ」
国王のハイドンは部下たちの不安に対し、自信を持って返す。
「確かにジン殿は我々の目から見てとても優秀でしたが、他の四人は送り出すのが早かったのではと、騎士団のメンバーも口をそろえて言っておりました」
ジン以外の四人は勇者としての能力はあるものの、戦い方に関してはまだまだだというのが訓練をした者の総意だった。
「それは聞いておる。だがわしもジン殿が四人を支えて導いてくれるのを見越して出すことを認めたのだ。あれから半年……定期的に連絡は来ているし順調じゃないか。こないだはラシットの街での魔族撃退の話をみなも聞いただろう」
この段階では王都にはジンが抜けたという報告は入っていない。ラシットの街での防衛戦での活躍が一番最新の情報なのだ。
「そうですが……もし勇者達の遠征が魔大陸行く前にコケでもしたら……」
リレイル王国は魔王を倒し、アテノア大陸を領土として増やす事が目的だった。その為に勇者を召喚しており、勇者がアテノアに入ったら後から大遠征を計画していた。
「それは問題ないさ。ジン殿がいればそこまでコケるような事はなかろう」
国王も召喚された勇者の中で、ジンは特に非凡である事を感じ取っていたし、実際の会話でもそれを垣間見ている。遠征前も四人のサポートしつつ行くというのを本人から聞いていた。
「確かにジン殿は優秀な方でしたな~我々相手でも全く動じていませんでしたし、是非うちの孫と婚約させてもなんて思いましたよ~」
ジンは遠征の直前、勇者に隠れて一般の兵士の指導をこっそりやったりなど指導能力を発揮していた。もしその光景を四人が見ていれば、あのまま五人で遠征を続けていたかもしれない。
「あなたもですか?いや私も娘をジン殿に嫁がせて是非騎士団長になんて思ってますがね~」
「ハハッ、これこれ。ジン殿は魔王を倒したら元の世界に帰るはずだ。無駄な期待はするでないぞ~」
国王はこういいながらも内心ジンの才能を恐れていた。勇者として召喚された身であり、魔王討伐後に元の世界への帰還の意志を示しているので、特に何かするような気はないが、自分の息子よりも遥かに王の資質がある事に気付いていた。
「そうでしたな……残念だ」
「ですな~」
この一週間後、ジンがパーティから抜けた事を知り、あたふたすることになるがそれはまた後の話だ。
「さて服は取り戻したんだけどな……」
軽く脅して取り返したが、無理やり取っただけあってところどころ裂けている。これでは着る事は出来ないしどうしたものか……
とりあえず持っていくとするか……
四人のいる場所へと戻る事にした。
◇
「あっ、ジンさん!」
「戻ったよ~」
「どうだった?」
「しっかり犯人捕まえてエリンギに送り返して、物も取返しはしたんだけどさ……」
服をみんなの前に出すと、四人とも複雑な表情を見せる。
「罠に嵌めて無理やり剥ぎ取ったらしくてさ……」
「なるほどね……でもこれだと流石に着れないわよね……」
「そうなんだよね……」
時間を操る魔法ってのもあるにはあるので、使えば服を破損する前の状態に戻すことは可能だが、時間系統の魔法の使用は二十柱の王より制限が課されているので安易には使えない。これを時間を戻して治すとなると、この服に対して三十分以上の時間を戻す事になり、すると向こうから警告が来るかもしれないからな。
「ミーナ出来るかい?」
この中だと一番できそうな感じがするのはミーナだ。
「多少は出来ますけど、そこまでの破損となると私じゃ難しいですね……」
弱ったな……いっそ俺が治すか……でもそんなにうまく治せる自信はないな。
「裁縫なら私やろうかしら?」
「えっ……」
それを言い出したのはセーブルだ。
「出来るのかい?」
「ええ、火傷で部屋に籠ってた頃暇つぶしにやってたから、これぐらいの破損ならたぶんなんとかなるわ」
「セーブルにそんな才能が……」
シーラは出来なさそうなイメージだな。流石に本人には言わないけど……
「それじゃあ、早速やって貰えるかい?」
「でも糸や針がないと流石にきついわ……」
「それならすぐ準備するよ」
収納空間から糸と布と針を用意する。勇者だった頃、とある街で裁縫をやらされる事があったのでその時の物が収納しっぱなしで残っていた。
「これで大丈夫かい?」
「問題ないわ。少し時間頂戴ね」
やる事三十分、少し違和感はあるものの、裂けた部分を修正したのだ。糸は丈夫な魔物の素材から取った奴を使ったから、前より強度という面では上がっただろう。しかし思ってた以上に上手く修正されており、セーブルの腕にはびっくりだ。
「凄い……」
「セーブルにこんな才能が……」
「へへん~私にかかればこんなものよ~」
ドヤ顔を見せながら自信満々に言う。戦闘だけでなくこういう面にも優れているとはな。
「それじゃあ早速これを返しましょう」
リオが蜜熊に服を返すと、それを受け取る服を着る。
「ハチミツ~」
大きな声で叫び、その場で動き回る。
目の前でそんな大きな声を出されると耳に響くからやめてくれって感じだが、念話じゃないといくら言っても伝わらなんな。
「(耳に響くから少し静かに頼む)」
「(ごめんごめん~つい嬉しくて)」
「(それで大丈夫かい?)」
「(ありがとう~これで森の中を堂々と移動できるよ)」
念話からも嬉しそうな感じなのがわかる。俺からすればそんなあってもなくても変わらないと思うがそれは敢えて言わないでおくとしよう。本家はとは似ても似つかん。
「(あいつらは捕らえて追い出したからもう大丈夫だが、今後もこういう事あるかもしれないから気を付けてな)」
「(オーケー、こんな事全然なかったから油断しちゃったけど、仲間にも伝えて、今後は気をつけるよ。)」
「(ああ)」
少し道草をくってしまったがこれでナットウの街に移動できるな。だがこうやって密猟者が出た以上今後も出て来るかもしれないし、何かしらの対策を立てないといけないかもしれないな。
◇
「陛下、本当に大丈夫なのでしょうか?」
その頃勇者を召喚したリレイル王国の王都ナハトでは国王とその手下達が話しをしていた。
「問題なかろう、五人もいるのだぞ」
国王のハイドンは部下たちの不安に対し、自信を持って返す。
「確かにジン殿は我々の目から見てとても優秀でしたが、他の四人は送り出すのが早かったのではと、騎士団のメンバーも口をそろえて言っておりました」
ジン以外の四人は勇者としての能力はあるものの、戦い方に関してはまだまだだというのが訓練をした者の総意だった。
「それは聞いておる。だがわしもジン殿が四人を支えて導いてくれるのを見越して出すことを認めたのだ。あれから半年……定期的に連絡は来ているし順調じゃないか。こないだはラシットの街での魔族撃退の話をみなも聞いただろう」
この段階では王都にはジンが抜けたという報告は入っていない。ラシットの街での防衛戦での活躍が一番最新の情報なのだ。
「そうですが……もし勇者達の遠征が魔大陸行く前にコケでもしたら……」
リレイル王国は魔王を倒し、アテノア大陸を領土として増やす事が目的だった。その為に勇者を召喚しており、勇者がアテノアに入ったら後から大遠征を計画していた。
「それは問題ないさ。ジン殿がいればそこまでコケるような事はなかろう」
国王も召喚された勇者の中で、ジンは特に非凡である事を感じ取っていたし、実際の会話でもそれを垣間見ている。遠征前も四人のサポートしつつ行くというのを本人から聞いていた。
「確かにジン殿は優秀な方でしたな~我々相手でも全く動じていませんでしたし、是非うちの孫と婚約させてもなんて思いましたよ~」
ジンは遠征の直前、勇者に隠れて一般の兵士の指導をこっそりやったりなど指導能力を発揮していた。もしその光景を四人が見ていれば、あのまま五人で遠征を続けていたかもしれない。
「あなたもですか?いや私も娘をジン殿に嫁がせて是非騎士団長になんて思ってますがね~」
「ハハッ、これこれ。ジン殿は魔王を倒したら元の世界に帰るはずだ。無駄な期待はするでないぞ~」
国王はこういいながらも内心ジンの才能を恐れていた。勇者として召喚された身であり、魔王討伐後に元の世界への帰還の意志を示しているので、特に何かするような気はないが、自分の息子よりも遥かに王の資質がある事に気付いていた。
「そうでしたな……残念だ」
「ですな~」
この一週間後、ジンがパーティから抜けた事を知り、あたふたすることになるがそれはまた後の話だ。
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