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事例3 正面突破の解放軍【事件篇】

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 無為むいな時間が続くということは、思ったよりも精神的に厳しいものがある。ずっと銃口を向けられているというストレスもあるのだろうが、これからも延々と同じ状況が続くと思うと嫌になってくる。しかしながら、何もできないというのが現状だった。

 縁達が食堂を後にしてから、どれくらいの時間が経過しただろうか。途中でいなくなったレジスタンスリーダーは戻ってきていないし、縁達に同行したライオンも戻っていない。ずらりと一列に並んだ動物達は、ただこちらに銃口を向けているだけ。言葉を発することもなければ、微動だにすることもない。なんというか、完全なる指示待ち状態といったところだ。とりあえず、次の指示があるまで、尾崎達のことを見張っているといった具合だ。

「チョンマゲさん――。チョンマゲさん」

 ふと、流羽が口が開いた。それこそ、解放軍の動きを見ながら、ごくごく小さな声で――。返事をしてやりたいところだが、自分では音量を落としているつもりであっても、周囲からすれば充分にボリュームがあったりするものだから、下手に返事もしてやれない。アイコンタクトをして、小さく頷くに留めておいた。

「善財さん、新田さんも聞いておいて下さい。あくまでも視線は前で、わたくしの声に耳を傾けていることが悟られないように」

 流羽は続いて善財と桜にも呼びかける。彼らも大きな反応は見せないが、もちろん流羽の声は聞こえているらしく、その耳だけは流羽のほうへと向けられていた。

「先ほどから、解放軍の方々を見ていて思ったのですが――もしかして、すでにライフルの残弾がない方々が大半なのではないでしょうか? ここに来た時に盛大に発砲して、それ以降は弾を充填している様子もありません。アサルトライフルはカートリッジを交換することにより弾の充填を行いますが、それらしき動作をした人間は確認できていない。確か89式のカートリッジは20発のものと30発のものがあったはずですが、ここを占拠する際に、あれだけ乱射したのであれば、かなり残弾も厳しいものになっていることは、間違いありません」

 言われてみれば、解放軍がアサルトライフルのカートリッジを交換している姿を一度も見ていない。となると、全てが全てというわけではないが、すでに飾りと化しているアサルトライフルも中にはあるという可能性はあるだろう。命を最優先させるのであれば、このまま解放軍に従うべきであろうが、しかしこのまま従い続けたところで命が保証されているわけではない。ゆえに、流羽は冷静に状況を見つめ、突破口を探していたのであろう。
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