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事例3 正面突破の解放軍【解決篇】

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「自分、あんまり知らないっすけど、カカシやら何やらが出てきて――みたいな話だったはずっす」

 ざっくりとした尾崎の説明であったが、話を進めるには充分だった。注目すべきは物語そのものではなく、オズの魔法使いに出てくる登場人物にあるのだから。

「そうですね。オズの魔法使いには、様々な個性的な登場人物が出てきます。知恵が欲しいというカカシ、心が欲しいというブリキの人形――そして、勇気が欲しいライオンなどです。ここで考えてみて下さい。どうして中嶋さんは解放軍のことをオズの魔法使い軍団と例えたのでしょう?」

 まだ一気には攻めない。言ってしまえば、これだって状況的な証拠でしかなく、証拠が物理的に残っているわけではないのだ。楠木という証人はいるが、ここは慎重に事を運びたいところだ。中嶋のほうに視線は向けつつも、縁はその場全体に向かって問いを投げかける。しばらくすると、楠木がぽつりと漏らした。

「ライオン――か。中嶋と合流した際に、俺達は解放軍のライオンを拘束したからな。あいつのせいで、オズの魔法使いを連想したのかもしれないな」

 確かに楠木の言う通り、中嶋と合流した際に解放軍のライオンを拘束している。だからこそ、オズの魔法使いを連想したという推測も分からなくないが、しかしライオンだけでオズの魔法使いを連想したとするのは、どうにもお粗末なように思えたのだ。

「ですが、ライオンが出てくる童話なんて山ほどあるし、ミュージカルや舞台などでも有名なタイトルがありますよね? ですから、きっとライオンの存在だけでオズの魔法使いを連想したわけではないのだと思うんです」

 あえて中嶋からは視線を外さない。反論したければ、いつでも反論してこい――。そのようなニュアンスも含めているつもりだった。もっとも、その挑発に乗るつもりはないようだが。

「では、他にオズの魔法使いを連想できるような姿格好をした解放軍がいたでしょうか? 知恵が欲しいカカシ? それとも心が欲しいブリキの人形? 残念ながら、それを連想させるようなラバーマスクを被った解放軍はいませんでした」

 縁がそこで言葉を区切ると、尾崎がここぞとばかりに手を挙げて、縁の言葉に被せるようにカットインする。その表情は実に自慢げにさえ見えた。

「はいっ! 縁、いるじゃねぇっすか――。オズの魔法使いは女の子が主人公だったはずっす。つまり、女の子のラバーマクスを被っていたレジスタンスリーダーそのものが、オズの魔法使いを連想させるっす!」
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