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エドナ診療所
エナ1
しおりを挟むあんな事があったけど、不思議と僕は嫌ではなかった。恋愛経験はないけど、もし結婚するなら女性とって、漠然と思ってたのにもかかわらず。
けど、今考えてみると、あの状況で最後までされなかったのは普通じゃあり得ないんじゃないかな?
ティムは僕が本当に嫌がる事は絶対にしなかった。キスだって、その先だって、わけが分からなかったけど、本気で嫌だったわけじゃない。けど「最後までは無理」と言うと、ティムは無理強いしなかった。
何か信用出来るなって思ったんだ。
洗浄魔法をかけられ服を着せられ、「もうしばらくいてもいいか?」って聞かれたけど、いっぱいいっぱいだった僕は拒否してしまった。
若干さみしそうな顔をしたティムが、ノンを連れて帰った後、僕は診療所でドナと二人でしばらく放心状態だった。
とても父さんに顔を合わせられなかったから、ドナに父さんの契約精霊のフィーへ「今日は疲れたのでこのまま診療所に泊まる」って連絡してもらう。
精霊は、性的な繋がりだけでなく、一度精神を繋げた相手とは、意識の共有が出来る。今自分が見ている出来事を、相手の精霊も見れるように意識を繋いだり出来るんだ。
そしてもっと簡単に、念話のように連絡を取り合ったりも出来る。今、ドナがフィーに送ったのはこの念話バージョン。
「ねぇ、ドナ?」
「にゃに・・?」
「まだふにゃふにゃだけど大丈夫?噛んでるし。」
「・・正直に言うと、まだノンと繋がってる・・・」
「へっ?!それって・・・」
「精神的に愛撫されてる状態にゃにょっ!!」
うわぁ、噛み噛みじゃん。うん、分かった。そっとしておこう。今日は帰らなくて良かった。こんな状態のドナを父さんやフィーに見せるのは無理だよね。僕もドナの事言えないし。
僕はもういっぱいいっぱいだったので、考える事を放棄し、買い置きしてあるお菓子を少しだけ食べて、口の中にも洗浄魔法をかけ・・寝た。
次の日の朝、僕はノックの音とともに目覚めた。んっ?こんな早くに誰?急患?じゃないよね。いつもならまだ出勤してない時間だし。
そっとカーテンの隙間から外を覗いてみると、ティムとノン??!
何でっ?!
慌てて軽く身支度をし、ドアを開ける。
「おはようエナ。ドナ。」
爽やかな笑顔の美丈夫がそこにいた。
「な、何で?こんな朝早くにどうしたの?!」
「昨日はろくに飯も食わずに寝たんだろ?ほら、朝飯持って来たから食おうぜ。」
「ど、どうしてそれを・・?」
「ノンがドナとずっと繋がりっぱなしだからな。まったく羨ましい。」
あっ、そうか。そりゃ分かるよね。けどドナもそんな事言わなくてもいいのに。
ちょっとドナをにらんでみたけど、全く気にせず、またフラフラと飛んで行きノンの手の中におさまった。あっ、そ!
正直お腹は空いていたので、ありがたくいただく事にする。
「いただきま~す。」
美味しそうなサンドイッチがいっぱいだ。スープもデザートもある。
僕はエビとブロッコリーのサラダが挟まれたサンドイッチを頬張る。
「美味しい!これ、魔王城のシェフが作ったの?」
「あぁ、そうだ。朝飯を詰めてもらって来た。」
「ふふっ、すごい贅沢だね。普通の魔族は魔王城のシェフの料理なんて食べられないよ?」
ローストビーフサンドを食べながら、僕を見るティムの目が何だか嬉しそうだ。
「??どうしたの?」
「いや、エナがオレに打ち解けてくれたようで嬉しい。」
「へっ?!あっ、僕、普通に喋って・・・」
「そのままで頼む。お願いだ。」
「えっ、あっ、うん。」
何だか恥ずかしくなって、僕は食事に集中した。
うん。タマゴサンドもスープも美味しい!
「今日も仕事を手伝っていいか?」
「・・ヒマなの?」
「オレにはエナに会う以上に重要な用事はないからな。」
ア、ソウデスカ・・・
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