聖女は断罪する

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121. クロエの事

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 ロランはレイラたちのおしゃべりから、レイラは別にクロエの事が嫌いじゃない事。ルシアはもう少し幼いころはクロエも王子のお茶会に来ていて、虐められたことを覚えていて嫌だと思ってるが本人に言う気はない事などを知っていた。

「クロエかぁ」

エミールが目の前にいた。が、何も言わない。

「……エミール先生にはクロエはどう見えてます?」

「バルビエ侯爵令嬢」

「それ以上は?」

「ない。……有体に言えば仕事の依頼主の妹。今はバルビエ家の次男と仕事している。ああ、そうだ。次男からは王家に『クロエを嫁か側妃にやるから借金を棒引きにしてくれ』って要求が来てるようだな。ヴィヴィアンヌはそれに関わる気はないからクロエが自分を認識しないようにしてるようだよ。クロエはクリストフ殿下の嫁を目指してるらしいが……、正確に言うと『王太子妃』を目指してて王宮にも王太子妃教育をしてくれって言いに行ったとか」

ロランは溜息をついた。

「それは情報はある、感想はない。ですね?」

エミールは頷く。

「レイラも変に心配してるからそう言う意味では目は離してない」

エミールはうっすらとクロエは好きじゃなさそうだな、とロランは思った。

「ルシアやレイラと違いすぎるんだよ。そこそこ野心のある令嬢で。あの子は見ていたらルシアを目に入れないようにしてるし、ルシアの前で妙にレイラになれなれしい。そういうことを女性は普通にするけどな。ルシアやレイラはまだ感覚が幼い。バルビエ家令嬢のような裏は持ってないから……気を付けてやってくれ。そんなことでルシアやレイラの心にヒビを入れたくない」

ロランもエミールの心配はなんとなく分かった。良くも悪くも普通の令嬢なのだ、クロエは。

「穿ってみるならレイラに近づいたのも夜会や茶会を介さず王族、ジュリオとエドワードと近づける、王族を外してもロランやペールと近づける、誰か捕まえたらそれで結婚相手として安泰、って所だろ」

ロランが感心する。

「エミール先生はもっと人に関して疎いと思ってました」

「ロランも言うねぇ」

エミールは笑う。

「一応人として長く生きてるからな。俺よりも引っ込んでるはずのウィルとか俺よりも人に詳しいぞ」

「あの人、王宮詰めだから人と接触するじゃないですか」

「まーな。加えてエルフのあの容姿だ。男女問わず言い寄られるしな」

エミールは心底気の毒そうな顔になる。

「ウィルはジークと仲良しだから俺を通さなくてアルフォンス通しても連絡できるぞ」

「アルフォンス先生は……その、吸精鬼討伐から暫く虚脱してたとか……」

エミールはふーと溜息をついた。

「そこそこ元気にはなってる。記憶が無くなった根源だったから、吸精鬼退治」

ロランはやはりエミール先生と話すのは好きだなと思った。他の教師のような『導いてあげてるんですよ』という匂いがないのだ。本人は自分は先生なんて柄じゃない、が『先に生まれた」って意味で『先生』と呼ばれるのは受け入れるという。だからこそ、自分の『師』としてエミールを選んだ。レイラが曾祖母、ヴィヴィアンヌに着いているように。

「エミール先生、父を説得出来たら部屋一つもらえますか?」

「藪から棒になんだよ。ま、ライン公爵が良いっつったらな。それとヴィヴィアンヌな。……男4人暮らしかぁ、むさくるしさもきわまれるな」

エミールはぶつぶつ言っている。ロランはくくくと笑っていた。


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