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30,ライバル

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カイルは夏休みになると必ず屋敷に訪れてくれる。
といっても、カイルと遊ぶ時はクリスお兄様も一緒のことが多い。剣の打ち合いをしているところを眺めていたり、筋トレするのを見ているのが楽しい。
なんといっても来るたびに成長している筋肉を見るのが密かな楽しみだった。私は筋肉フェチなのだ。

ある時、カイルの二の腕の筋肉を触ってみたことがある。カイルは嫌がったが私が触り続けるので途中から諦め出して、今では自分から筋肉を見せつけてくる。

カイルに限らず家族の筋肉も私はよく触っているから、親しみを込めているのだが、クリスお兄様も最近はあんまり人に触らないように、と言ってくる。

「腕だからセーフよ」

「アウトだよ。だーめ」

とクリスお兄様が珍しく私を甘やかしてくれない。


そんなある日、ヴィークとカイルの訪問が重なった。
ヴィークとお茶をしていた時にカイルがやってきたのだ。

「え?で…「カイル!ちょっと話がある!!」

とカイルが何かを言いかけると、ヴィークがカイルとどこかへ行ってしまった。
あれ?2人は知り合いだったのかな?


「カイルとヴィークは友達なの?」

戻ってきた二人に聞いてみるが、なんだか歯切れが悪い。

「えっと友達というか…、」

「まぁ友達みたいなものだな。」

「えっ?」

二人の会話は微妙に噛み合っていなかったが、これを機に仲良くなってもらえれば私も嬉しい。

そう思っていたが、それから二人の来訪が重なることはなかった。

そんな平和な日々とハンドクリームや化粧水の販売や新しい香りの研究などを続けていると、あっという間に3年が過ぎた。





ハンドクリームや化粧水の販売は順調そのものだった。飽きのこないように半年に一度新しい香りの商品を限定で販売したりもしている。

また、今後自分のお店を持った時のために香りのストックもいくつかあるし、他の商品も作ろうと考えている。
目的は自分のお店を持つことなのだ。
早くお店を持てるようになりたい。そのための学園なのだ。
まぁ別に学園に行かなくてもお店を持つだけならできるのだが、せっかくなら『薬学博士の称号を得たお店』がいい。


そしていよいよ学園に入学する時がきた。

入学式当日、アンナが念入りに身支度を整えてくれる。

「緊張するわね、同じ年の知り合いはカイルしかいないわ。しかも絶対クラス違うわよね。」

「カイル様は騎士団に所属されていますからね。」

「友達できるかしら?」

「お嬢様なら大丈夫ですよ。」

「…不安の方が大きいのだけどね……」

「今日もとても美しいですよ、お嬢様。」

「ふぅ…、じゃあ行って来るわ。」

「行ってらっしゃいませ。」

と笑顔で見送られ、クリスお兄様と一緒に馬車に乗りこんだ。
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