【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

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第2章事前対策

ライザは再び悪役令息に出会う

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 爺やがアドバイスを求めてきてから、数日が経った。現在の私は悪役令嬢回避の為に、まずこの世界のルールを学ぼうと考えていた。

 なので最近王立図書館に入り浸り、この国の歴史や成り立ち、どういう人間の性質に基づいて文化が展開され常識が根付いているのか。国政状況や国際状況。
 通貨の価値と物流の流れ。司法・立法・行政に代わる公的機関の存在。その立ち位置を読み漁る事にした。

 後は、今の流行りのものの恋愛小説←自分の趣味。


 要するに断罪されるとしたら、この世界の決まりに反する行為を行った時だろうと思うので、その地雷を踏まない為に調べている。

 やはりと言うか、当然全てが前世の常識とは違う。前世と比べると世代前だったり。たまに発展していたり。チグハグだ。 王族である皇太子の権限が強いので、ちょっとおかしな断罪されても通りそうなところに、絶望しかけている。

(皇太子が変な奴だったらどうしたら良いんだろう。取り敢えず皇太子の婚約者になるのは何とか回避しよう。)

 前世の常識とかなり外れていると思ったもう一つは神殿と言う宗教に基づいた組織も公的権力があるところだ。

 
 学園の入学時期が15歳からなので、残された時間を考えると後3年…いや。2年弱で対策を経てなければならない。

 どうもゲーム舞台のこの学園に行くのは、この国の貴族社会で一人前になるのに必須ステータスの1つのようで、避けられないから。


 正直に言おう。私は貴族の生活を手放すつもりはない。
 命があるなら貧乏でも慎ましく生活していくなんて発想は全くない。そんな不安定な将来を目指すなんてやる気無くすばかりだ。

 生涯安定した衣食住の生活、好きな物を買って好きな事が出来、なるべく理不尽な目に合わない環境が望ましいと思っている。そしてこの世界において、生涯それが保証されるには全てお金と身分が必要である。
  
 追放された後のお金がないままの生活での生き方など、この世界の貴族で生まれた凡人の私には明るい想像が出来ない。
 前世の知恵で良い商品開発、実力により快適生活ゲットを目指すとか出来たら良いけどヒットさせる自信も無ければ、私に個人経営などは不安でしかない。

 自分に物を生み出す商才があると思えないからだ。
 物を生み出せる才能ある者のところになら、自然と人が集まり、お金が流れるから人生楽しいだろうに。

 けれど何の才能もない私にそんな力はない。それで人並みでいる為にはお金の流れを知り、使い方を学ばなければならない。

 加えて、この世界において理不尽な扱いを受けず、安定した稼ぎを得やすくする為には、地位や肩書や権力も必要だと思う。

 こう言う思考回路だからヒロインではなく悪役令嬢に転生してしまったんだと思うので、そこを前面に押し出すのは気を付けたいところではある。

(案外、適材適所に生まれてしまったのね。このままではやはり悪役令嬢は回避出来なさそう。
これはしっかり対策しなければならないわ。万が一失敗して追放になった時のためにお金も今のうちに蓄えておかなければ。)

(そうだわ。万一追放確定。そして、実家が没落して、資産差し押さえになった時に備えて、他国に口座開設しておこう。何処の国が良いかも調べましょう。この世界の発展状況的に、犯罪者になっても口座の強制解約しない国がありそうよね。)

 そんな決意を新たに、王立図書館で本を読み漁っていた。

 初日は軽く調べようとしていた程度だった。

 しかし、机に置きっぱなしにされている新聞がチラリと目に入って、隣国の話が載っていた事で、先日爺やが話していた悪役令息ルイスの後見人の話を思い出し、気になって内容に目を通してしまった。

(これは…隣国の。)

 しばらく記事を読み進めてみた後、気になる事が出てきたので隣国の事について載っている文献を読み漁る事にした。

 多分自分の国を調べるよりも時間をかけて、ルイスの後見人になる叔母がいると言う隣国の事を調べていた。



「……。」

「ねぇ、」

「はい。」



 本を読んでいた手を止めて、顔を上げると、其処には透き通る陶器のような白い肌をした少年の、形の良い青々としたカイヤナイトの瞳と目が会った。


「もう閉館の時間だって。アナウンスされていたよ。」
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