【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

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第3章学園入学

ライザは人を愛せない 

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※閲覧注意

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 私の記憶力は幼い頃から良かった。
 まだ父が病院で植物状態のように寝たきりになった頃。私は3・4歳だったか。

 その頃、好奇心旺盛だった私は触ってはいけないと注意をされている引き出しを開けると5枚の紙きれが出て来た。
 

(なんだ、ただの紙かぁ。
ふふっ。これ隠しちゃおっ♪)


 悪戯心だったのか、何を思ったのかはそこは記憶が曖昧だった。

 後に聞いた話だと、その引き出しは、父が、自分が死んだら私達に残してくれる財産になる一式を揃えたもので、父も自分がまさか植物状態になるとは思っていなかった。

 母は、結婚時言われた父の「自分が万一君達を残して死んだら開けるように」との言葉を守っていたようだ。


 私の隠した紙切れは、父が母に内緒で作っていた莫大な死亡保険金の出る紙だった。だけど誰もその存在を知らない状態となってしまった。

 父は自分の親から受け継いだお金を全て保険にしていた。受取人は勿論母が指定されていた。

 それを母が亡くなってから遠縁の親戚が我が家を整理していて見つけた。
 

 皆がそれを見て私を引き取りたがる中私の意思を尊重しようとなり、

 私が選んだのはー…

 第1回目の親族会議で、皆が私を押し付け合う中、1人だけ。

 「私が引き取るよ。」

 そう名乗り出た

 母方の親戚としてその場に居た独身の伯母。
 
 借金に悩み働き過ぎて身体を今にも壊しそうな、苦労している母をたまに訪ねては励まして、その時は私の面倒を見てくれた唯一の親戚。

 だから、第2回目の親族会議で私が取り合いになった時、私は自分の親権者に伯母を選んだ。「他の人はいや。伯母にならついて行く」と得意げな顔をして。

(お母さんを馬鹿にするあんた達にお金は絶対あげないんだから。)

 そんな事を思いながら、がっくりしている親戚達を見てスッキリしていた。
  
 けれど

 その1年後




 伯母は放火殺人の罪で逮捕される事となる。

 母を亡くした火事は、伯母がおこしたものだった。
 母と私を殺す為に。

 動機が何か?伯母は保険金の存在を知っていた。生前父から「妻は忘れっぽいから万一の時は保険の存在を教えてやってください」と言われてたそうだ。

 

 私と母が死んでしまえば。


 遠縁ばかりの親戚の中で、お金を受け取る権利を有する法定相続人は伯母であった。

 つまり、保険金を狙ったことによる殺人だった。

 当時は何かの間違いだと思った。

 孤児院に入ってからもずっと、間違いだと信じて疑わなかった。
 
 そうしているうちに、私と特別養子縁組してくれると言うお爺ちゃんが来て、牧場の馬に乗ったり、自然に囲まれた大地で安らいだり、そうしているうちに

 月日はあっという間に過ぎてゆき

 伯母が逮捕されてから7年が経とうとした頃。

 中学生になった私は、何時迄も誤認逮捕の知らせがない伯母の様子が気になって、真実を叔母の口から聞くために

 刑務所へ1度だけ面会しに行った。

 そうしたら刑が確定していた伯母は1つも飾らずこう言った。


「子供1人殺し損ねてどんなに落胆したか。あの時の私の気持ち、わかる?
他の親戚に保険証券見つかっちゃうし、それであんたが他に引き取られたら…ねぇ?」

「……。」

「あんたが馬鹿で本当に助かったぁ~。と思ったわ。やっぱ馬鹿って遺伝するのね。」

「どう言う…」

「貴女のお母さんに色々と金融業者紹介したの、私なの。
儀弟はどうせ死ぬと思ってたし。あんなお金かけてまで生かしてた愛する人が死んだ後に、返しきれない借金残ってたら、子供諸共自殺してくれるかなーって。

だってあの女、自己破産とかって方法も知らなそうじゃん?ねぇ?」

「……。」

「せっせと働いてお金返そうとしてたみたいだけど。

いや、それじゃ返せねぇから!あの増え方!はははっ。爆笑したんだけど。コントみたい。ははっ。まじで愚か者過ぎて。」


「……貴女程ではないわ。」


「言うじゃない?
でも、1番馬鹿で、愚か者は誰か。

あんたわかる?」



    ええ、わかるわ。

 言われなくても。

 全てはあの紙を見つけた日

 母に渡していたら、保険の存在に気付いて保険を解約して借金もせず、父は早々に良い手術を受けて助かっていたかも知れない。

 せめて悪戯して隠さなければ、借金をする前に母が見つけていたかも知れない。

 そうしていたらきっと今でも父は生きて、私と母を守ってくれたかもしれない。



 そして 極め付けは



「あんただよ、1番馬鹿なのは。


わざわざ自分の親を殺した人間を選んで、お金を持って来てくれるなんてね。

ちょっと優しくしただけで、私に大金持って来て、懐いて、よく言うこと聞くお馬鹿ちゃんを見てたあの1年、笑いを堪えるのに必死だったのよ。私。」



〝勘違いしないでくれる?貴方のことなんかこれっぽっちも信用した事などないわ。利用して生きようとしただけよ。〟


 何時もの、今の私ならそう言い返した筈だけど、この時、私の頭の中には。

 両親の顔と、優しい笑みを浮かべて私を引き取った時の伯母の顔が浮かんで。

 口は、小さく動くだけで音は出なかった。

 ただ。瞳から溢れ出る水が抑えられない事が悔しくて。膝の上で拳を握った。

「何?泣いちゃってるの?ええーっ。泣きたいのはあんたの母親だよぉ?

自分を殺した人間に懐く子供。
よっぽど子供に嫌われてたのかなぁ?
可哀想~。

安心して?私もあの女嫌いだったよ?顔が良いだけの馬鹿なくせに、周りに可愛がられて、結婚して子供産んで、幸せそうにしてる顔が本当に嫌だった。

だから、本当にせいせいしたわ。」



 悔しくて、悔しくて、悔しいのに。

 涙はとまってはくれなかった。


「お…母…さん。お母さん、お母さん




お母さん。」



『可愛い可愛い、私の子。貴女を愛してるから頑張れるわ。
借金なんて、真面目に働いて返していけば良いのよ。』


   お母さん、私達は。
 
 何が悪かったんだろう。どうしてこんな目にあっているんだろう。何故お母さんがこんなに苦労して働き詰めにならなくちゃいけないんだろう。怖いおじさんに謝らなくちゃいけないんだろう。

 何故頑張ってるお母さんが死ななくてはいけないんだろう。



 ずっと思ってた。

 全ての原因は

 私が愚かであったからだった。

 私の様な愚か者が側にいたせいで。不幸にしてしまった。

 愛してくれた父を。

 そして

 愛していた母を。

 

 
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※この話の投入早いかなとも思ったんですが、ライザの前世何があったか気になる方も居ると思うので。此処に入れました。

暗い話続いてすみません。次回馬鹿馬鹿しい話に戻ります。
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