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2章 いよいよ本編開始??
出逢いは予定通りにやってくる
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◇
あっという間に桜舞う季節がやってきて、あたしもついにこの学園に通うときがやってきた。
ガルドニア王国の王立魔術学園
16歳になると、平民から貴族、王族まで様々な魔術を学ぶために3年制で全寮制のこの学園に通うこととなる。
入学してからさまざまな出逢い、そしてイベントを重ねヒロインは攻略対象のいずれかと恋に落ちていく……
それがあたしが転生した“蒼い月の下で貴方と~淡恋~”という乙女ゲームだ。
ゲームイベント上の出逢い方ではなく、予定外にすでに出会ってしまった攻略対象はメリーの兄であるネージュ、そして隠しキャラであるセイ。
本来の出逢いやその後のイベントが予定通りあるのかは、正直試してみないとわからない。
もちろん他のキャラだって、出逢いイベントからその後のイベントまで予定通りあるかなんてわからない。
そもそもゲームは16歳でスタートするんだから、それまでヒロインがどんな生活してたかなんて描かれていないのだ。
今のあたしみたいに、鬼畜な鬼師匠による魔法の特訓や処遇のせいで、お城で“怪力姫”とか“不幸な少女A”とか、完全にヒロインあるまじき噂が立ってるこの状態では、ゲームの強制力でもない限り普通の恋愛ができるとは到底思えない。
そもそも“怪力姫”ってなんだっ!
あれは身体強化の魔法であって、あたしが怪力なわけじゃないっ!!訂正してくださいっ!!!!
とりあえず、ゲーム通り進むのか少し確かめる必要はありそうだ。
もし強制力というものがあって、ゲーム通りに進んでしまうなら、あたしは覚悟を決めないといけないから……
周りが“これから頑張っていろいろ学ぶぞ”と気合を入れている中、あたしは別の意味で決意を固めた。
◇
入学式が終わり、あたしは学園の裏庭に行く。
裏庭にはたくさんの桜の木がランダムに植えられていて、正門の桜並木とは違った圧巻の風景がそこにあった。
その中で、一番大きな桜の木の前で足を止めて上を見上げる。
……やっぱり、いた。
木の上にいた彼と目があった瞬間、風がブワっと強く吹き、桜の花吹雪が宙を舞う。
「……キミは……?」
金糸のような金髪に碧眼の美形。典型的な王子様という外見の彼……―――
木の上にいた先客はこの国の第一王子で王太子、イグナート=ルド=ガルドニア。
これが、ヒロイン、リナリアと王太子の出逢い……王太子ルート開始の合図だ……―――
◇
「じゃあリナリア嬢も今年入学したんだね」
「はい、王太子殿下」
「キミも、オレのことを“王太子”として見るんだね」
「……」
ここはゲームで言うと選択肢があらわれ、好感度が変化するシーンだ。
① あたりまえじゃないですか
② あなたはあなたではありませんか。
③ どのように見られたいのですか?
ちなみに、好感度が上がる選択肢は②。
この人は生まれながらに王太子として育っており、“イグナート”個人として見てくれる人がほとんどいない。
第一王子という肩書がなければ自分は必要ないのではないかと自信を持てないでいる人なのだ。
もちろんあたしの選択は……
「あなたは、あなたではありませんか。だって、殿下のお名前は“イグナート様”ですよね?立場的に名前を呼ぶのは不敬に当たると思いましたのに……」
「あっ、いや……そういう意味ではなくて!……でも、ありがとう」
「何がでしょう?」
「ふふ……いや、良いんだ、気にしないでくれ。……良ければ、名前で呼んでもらえないだろうか?
また二人で逢えたときだけで良いから……」
「でも……」
「不敬などではない。私がそうして欲しいんだ」
「……わかりました。イグナート様」
「ありがとう、リナリア嬢。私はたまにここで息抜きをしている。……キミも気が向いたら来ると良い」
「ええ……そうですね……」
「では、私はそろそろ戻るよ。側近が探しているだろうからね」
そう言って、イグナートは走り去っていった。
……ここまでのセリフ。あえてゲーム通りにしようと意識してみたら本当にその通りになってしまった。
「やっぱり、ストーリー通りになっちゃうのかな……。でも、まだ他のキャラはわからないし……」
予定通りに起こってしまった王太子との出逢いイベント。
そして、入学前に内定してほとんと決まったとされている王太子とメリーの婚約。
あの後王太子と何度か逢瀬を重ねたメリーは、王太子の人柄に惹かれ始めており、すでに婚約を受け入れつつあった。
あたしがセイのルートに進むためには、王太子ルートをある程度進めて、とある政策に関わる必要がある。
そうなると、あたしはまずメリーから婚約者を奪わなければいけない……
「しかも、婚約者奪った後に別の人の所に行くって……現実だったらホントにありえない……最低だ」
まだだ。まだそうと決まったわけじゃない。
予定外の出逢いだってあったんだから、この出逢いも偶然という可能性だってある。
攻略対象だって、いくらヒロインと出逢ったからってすでに婚約者がいる状態でコロッと傾くわけないよね?そうだよね??
わずかな希望を抱きながら、あたしは次の出逢いイベントに向けての復習と心の準備をする事にした。
あっという間に桜舞う季節がやってきて、あたしもついにこの学園に通うときがやってきた。
ガルドニア王国の王立魔術学園
16歳になると、平民から貴族、王族まで様々な魔術を学ぶために3年制で全寮制のこの学園に通うこととなる。
入学してからさまざまな出逢い、そしてイベントを重ねヒロインは攻略対象のいずれかと恋に落ちていく……
それがあたしが転生した“蒼い月の下で貴方と~淡恋~”という乙女ゲームだ。
ゲームイベント上の出逢い方ではなく、予定外にすでに出会ってしまった攻略対象はメリーの兄であるネージュ、そして隠しキャラであるセイ。
本来の出逢いやその後のイベントが予定通りあるのかは、正直試してみないとわからない。
もちろん他のキャラだって、出逢いイベントからその後のイベントまで予定通りあるかなんてわからない。
そもそもゲームは16歳でスタートするんだから、それまでヒロインがどんな生活してたかなんて描かれていないのだ。
今のあたしみたいに、鬼畜な鬼師匠による魔法の特訓や処遇のせいで、お城で“怪力姫”とか“不幸な少女A”とか、完全にヒロインあるまじき噂が立ってるこの状態では、ゲームの強制力でもない限り普通の恋愛ができるとは到底思えない。
そもそも“怪力姫”ってなんだっ!
あれは身体強化の魔法であって、あたしが怪力なわけじゃないっ!!訂正してくださいっ!!!!
とりあえず、ゲーム通り進むのか少し確かめる必要はありそうだ。
もし強制力というものがあって、ゲーム通りに進んでしまうなら、あたしは覚悟を決めないといけないから……
周りが“これから頑張っていろいろ学ぶぞ”と気合を入れている中、あたしは別の意味で決意を固めた。
◇
入学式が終わり、あたしは学園の裏庭に行く。
裏庭にはたくさんの桜の木がランダムに植えられていて、正門の桜並木とは違った圧巻の風景がそこにあった。
その中で、一番大きな桜の木の前で足を止めて上を見上げる。
……やっぱり、いた。
木の上にいた彼と目があった瞬間、風がブワっと強く吹き、桜の花吹雪が宙を舞う。
「……キミは……?」
金糸のような金髪に碧眼の美形。典型的な王子様という外見の彼……―――
木の上にいた先客はこの国の第一王子で王太子、イグナート=ルド=ガルドニア。
これが、ヒロイン、リナリアと王太子の出逢い……王太子ルート開始の合図だ……―――
◇
「じゃあリナリア嬢も今年入学したんだね」
「はい、王太子殿下」
「キミも、オレのことを“王太子”として見るんだね」
「……」
ここはゲームで言うと選択肢があらわれ、好感度が変化するシーンだ。
① あたりまえじゃないですか
② あなたはあなたではありませんか。
③ どのように見られたいのですか?
ちなみに、好感度が上がる選択肢は②。
この人は生まれながらに王太子として育っており、“イグナート”個人として見てくれる人がほとんどいない。
第一王子という肩書がなければ自分は必要ないのではないかと自信を持てないでいる人なのだ。
もちろんあたしの選択は……
「あなたは、あなたではありませんか。だって、殿下のお名前は“イグナート様”ですよね?立場的に名前を呼ぶのは不敬に当たると思いましたのに……」
「あっ、いや……そういう意味ではなくて!……でも、ありがとう」
「何がでしょう?」
「ふふ……いや、良いんだ、気にしないでくれ。……良ければ、名前で呼んでもらえないだろうか?
また二人で逢えたときだけで良いから……」
「でも……」
「不敬などではない。私がそうして欲しいんだ」
「……わかりました。イグナート様」
「ありがとう、リナリア嬢。私はたまにここで息抜きをしている。……キミも気が向いたら来ると良い」
「ええ……そうですね……」
「では、私はそろそろ戻るよ。側近が探しているだろうからね」
そう言って、イグナートは走り去っていった。
……ここまでのセリフ。あえてゲーム通りにしようと意識してみたら本当にその通りになってしまった。
「やっぱり、ストーリー通りになっちゃうのかな……。でも、まだ他のキャラはわからないし……」
予定通りに起こってしまった王太子との出逢いイベント。
そして、入学前に内定してほとんと決まったとされている王太子とメリーの婚約。
あの後王太子と何度か逢瀬を重ねたメリーは、王太子の人柄に惹かれ始めており、すでに婚約を受け入れつつあった。
あたしがセイのルートに進むためには、王太子ルートをある程度進めて、とある政策に関わる必要がある。
そうなると、あたしはまずメリーから婚約者を奪わなければいけない……
「しかも、婚約者奪った後に別の人の所に行くって……現実だったらホントにありえない……最低だ」
まだだ。まだそうと決まったわけじゃない。
予定外の出逢いだってあったんだから、この出逢いも偶然という可能性だってある。
攻略対象だって、いくらヒロインと出逢ったからってすでに婚約者がいる状態でコロッと傾くわけないよね?そうだよね??
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