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一歩前進、そして暗雲
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「わああぁぁぁーー!!」
望は飛び起きた。
「望様!目覚められたのですね!!」
アウロンが望の体を抱きしめてくる。暖かい腕で
「え…………」
「中々目覚められなくて…どうしようかと……良かった…良かったです」
「アウロン……さん……え……夢……?」
望はベッドの上で呆然と呟いた。今目の前で生々しく現実に見えていたはずの映像が急に画面越しに見ていた映像だったように切り替わった感じがした。
「あれ……なんで、俺……」
「望様は使い様とお話の途中で気を失ってしまったのです…覚えていますか?」
「気を失った?俺が?……確かに…話してた…本の事…そんで……そんで……の、前に…兄ちゃんに急にムカついて」
「……その事も…覚えていますか?」
「そうだ、とにかく無茶苦茶腹立ったんだ。使い様に、だって兄ちゃんが使い様だから…だから触って欲しくなくって…あれは、俺なのか?」
(なんでムカついてんだろうって、冷静に考えながらもう1人の俺がムカついてた。許せないくらい、憎々しかったんだよ…変な感じだな…)
「望様…今回も例の悪夢を見たのでしょうか…随分うなされていたようなので…」
「今回の夢……夢?夢じゃないよ…夢なんかじゃないっ!だってあれは目の前で、俺の目の前で!俺なんにも出来なくて……アイツら、アイツらが俺をっ…………じゃなくて……違くて……うぅ……何だこれ……すげぇグチャグチャで……俺、変だ……」
「望様っ!!」
「ヤバい、これヤバくない??俺ヤバいよね?」
望がパニックになりかけそうなその時、部屋のドアが開いた。アウロンと2人きりの部屋に樹が入って来た。
「望、お前は黒い靄の影響を受けている」
「黒い靄……黒い靄?だってそれって……あの人から出て……そんで、そんで……あの人が……」
望はポロポロ泣き出した。涙が止まらない
「あの人が黒い靄になっちゃったんだよ。だって消えちゃったもん…うっ……ひっく……あんな、あんな全てを憎みながら……うっ」
「望様…望様…………望……もういいよ。もういい」
ぎゅうっと力いっぱい抱きしめるアウロン。痛ましくて仕方がない。望に泣いてなんて欲しくない、腕の中の彼がこんなに悲しんでいるというのに自分は何も出来ないなんて、己の無力さに腹が立って来る。
「…………望は、その人になりかけている…違うか?今まで、夢に見ていたのではないか?何があった…黒い靄、濁った魔の力は…人、だったのか?」
「嫌だ嫌だ!そんなっ!!酷い!あんな憎しみ自体になりたい人なんているわけないじゃん!酷いっ!!使い様……使い……使いの奴が居るから、追い出されたっ!!コイツは俺のだ!同じ邪魔者だ!!」
「望…………」
「お前には絶対やらねぇからな。使い野郎、コイツは俺のもんだ。待ってたんだよ、ずっと、ずっとな」
弾かれたように両手で望の腕を掴み体を離すアウロン。望をまじまじ見て口を開く。
「貴様……誰だ……」
「ははっ……俺だよ。望?だっけ?お前の大事な人なんだろぅ?邪魔者同士仲良くすんだよ。俺はコイツでコイツは俺だよ。だから俺のもんだよ」
「何だと?貴様のものだぁ?」
殺気を漂わせながら睨み付けるアウロン。
「望は俺のものだ。貴様のものでは無い」
「はっ?」
緊張した面持ちだった樹が凄い勢いでアウロンを見る。
「な、お前ら…私の弟を……」
アウロンが望を掴んでいる両手から魔力を流しだした。
「あってめぇ…クソっ」
「望、戻っておいで。俺の魔力だ、分かるだろ?魔力を流すとどうなるんだっけ?教えたよな?」
「う……魔力……流す………正座します……」
「そう。覚えてるね。魔力を流すと繋がるんだよ…俺と望が繋がったな」
「はぁ…アウロンさん……頭の中が黒く塗り潰されたみたいだった」
「望っ私とも繋がろう!もう一度浄化を」
望に触ろうとした樹から庇うように、またしても望を抱き込むアウロン。
「ちょっと君!何してんの」
「失礼ですが…使い様と望は…接触するのを慎重になさった方がよろしいかと…前も望が使い様に触れた途端に黒い靄が発生しております。少し冷静になってお考え下さい」
「き、君に言われたくないなぁ…騎士だとしても、ちょっと望にベタベタし過ぎじゃないのかな?兄である私を差し置いて」
「…望と私の距離はいつも通りですが?見て頂ければお分かりになるかと…私たちの関係性を」
「え、俺が…言うのも…何なんだけど……こんな時にする話?」
望は聞くに耐えず、アウロンの腕の中でモゾモゾしだす。
「望、お兄ちゃんに言ってごらん。本当はどうなんだ?その、つまり…お前たちは、付き合ってるのか」
「時間の問題かと……」
「そ、そん、そんな風に思ってたの!?」
驚き目を開き、頬が赤くなる。
「望は生涯の伴侶だ」
「え、えぇ~……」
「しょ、生涯……はん…りょ…わ、私は認めてないけどなぁ。うちの子は嫁に出す予定なんて無いが?望、その男は危険だから、きっと危険だよ。こんな言い争いしてる場合ではないから、だからこっちにおいで…」
そこに部屋の外から第三者の声がかかった。
「あなた方は……何をやっているんですか?」
望は飛び起きた。
「望様!目覚められたのですね!!」
アウロンが望の体を抱きしめてくる。暖かい腕で
「え…………」
「中々目覚められなくて…どうしようかと……良かった…良かったです」
「アウロン……さん……え……夢……?」
望はベッドの上で呆然と呟いた。今目の前で生々しく現実に見えていたはずの映像が急に画面越しに見ていた映像だったように切り替わった感じがした。
「あれ……なんで、俺……」
「望様は使い様とお話の途中で気を失ってしまったのです…覚えていますか?」
「気を失った?俺が?……確かに…話してた…本の事…そんで……そんで……の、前に…兄ちゃんに急にムカついて」
「……その事も…覚えていますか?」
「そうだ、とにかく無茶苦茶腹立ったんだ。使い様に、だって兄ちゃんが使い様だから…だから触って欲しくなくって…あれは、俺なのか?」
(なんでムカついてんだろうって、冷静に考えながらもう1人の俺がムカついてた。許せないくらい、憎々しかったんだよ…変な感じだな…)
「望様…今回も例の悪夢を見たのでしょうか…随分うなされていたようなので…」
「今回の夢……夢?夢じゃないよ…夢なんかじゃないっ!だってあれは目の前で、俺の目の前で!俺なんにも出来なくて……アイツら、アイツらが俺をっ…………じゃなくて……違くて……うぅ……何だこれ……すげぇグチャグチャで……俺、変だ……」
「望様っ!!」
「ヤバい、これヤバくない??俺ヤバいよね?」
望がパニックになりかけそうなその時、部屋のドアが開いた。アウロンと2人きりの部屋に樹が入って来た。
「望、お前は黒い靄の影響を受けている」
「黒い靄……黒い靄?だってそれって……あの人から出て……そんで、そんで……あの人が……」
望はポロポロ泣き出した。涙が止まらない
「あの人が黒い靄になっちゃったんだよ。だって消えちゃったもん…うっ……ひっく……あんな、あんな全てを憎みながら……うっ」
「望様…望様…………望……もういいよ。もういい」
ぎゅうっと力いっぱい抱きしめるアウロン。痛ましくて仕方がない。望に泣いてなんて欲しくない、腕の中の彼がこんなに悲しんでいるというのに自分は何も出来ないなんて、己の無力さに腹が立って来る。
「…………望は、その人になりかけている…違うか?今まで、夢に見ていたのではないか?何があった…黒い靄、濁った魔の力は…人、だったのか?」
「嫌だ嫌だ!そんなっ!!酷い!あんな憎しみ自体になりたい人なんているわけないじゃん!酷いっ!!使い様……使い……使いの奴が居るから、追い出されたっ!!コイツは俺のだ!同じ邪魔者だ!!」
「望…………」
「お前には絶対やらねぇからな。使い野郎、コイツは俺のもんだ。待ってたんだよ、ずっと、ずっとな」
弾かれたように両手で望の腕を掴み体を離すアウロン。望をまじまじ見て口を開く。
「貴様……誰だ……」
「ははっ……俺だよ。望?だっけ?お前の大事な人なんだろぅ?邪魔者同士仲良くすんだよ。俺はコイツでコイツは俺だよ。だから俺のもんだよ」
「何だと?貴様のものだぁ?」
殺気を漂わせながら睨み付けるアウロン。
「望は俺のものだ。貴様のものでは無い」
「はっ?」
緊張した面持ちだった樹が凄い勢いでアウロンを見る。
「な、お前ら…私の弟を……」
アウロンが望を掴んでいる両手から魔力を流しだした。
「あってめぇ…クソっ」
「望、戻っておいで。俺の魔力だ、分かるだろ?魔力を流すとどうなるんだっけ?教えたよな?」
「う……魔力……流す………正座します……」
「そう。覚えてるね。魔力を流すと繋がるんだよ…俺と望が繋がったな」
「はぁ…アウロンさん……頭の中が黒く塗り潰されたみたいだった」
「望っ私とも繋がろう!もう一度浄化を」
望に触ろうとした樹から庇うように、またしても望を抱き込むアウロン。
「ちょっと君!何してんの」
「失礼ですが…使い様と望は…接触するのを慎重になさった方がよろしいかと…前も望が使い様に触れた途端に黒い靄が発生しております。少し冷静になってお考え下さい」
「き、君に言われたくないなぁ…騎士だとしても、ちょっと望にベタベタし過ぎじゃないのかな?兄である私を差し置いて」
「…望と私の距離はいつも通りですが?見て頂ければお分かりになるかと…私たちの関係性を」
「え、俺が…言うのも…何なんだけど……こんな時にする話?」
望は聞くに耐えず、アウロンの腕の中でモゾモゾしだす。
「望、お兄ちゃんに言ってごらん。本当はどうなんだ?その、つまり…お前たちは、付き合ってるのか」
「時間の問題かと……」
「そ、そん、そんな風に思ってたの!?」
驚き目を開き、頬が赤くなる。
「望は生涯の伴侶だ」
「え、えぇ~……」
「しょ、生涯……はん…りょ…わ、私は認めてないけどなぁ。うちの子は嫁に出す予定なんて無いが?望、その男は危険だから、きっと危険だよ。こんな言い争いしてる場合ではないから、だからこっちにおいで…」
そこに部屋の外から第三者の声がかかった。
「あなた方は……何をやっているんですか?」
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